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大反撃作戦~嵐の前

時刻は夜中の11時30分頃になった


ヨッシーは、つぎはぎ丸の操舵室に居た


カーゴパンツの膝ポケットから、

ずっと仕舞っていたリボルバーを取り出す。


隣では、ちんかわむけぞうが、無言のまま

武器の手入れをしている。


ヨッシーが取り出したリボルバーは、

スミス&ウェッソンの『M360J SAKURA』という、

警察用の短銃身タイプの物だ。

まあ、弾を装填してから発砲はしていないので

これはいいとして....

つか、素人が色々とイジると暴発させそうなので

ヨッシーは、それを床に置いた


次に、ベルトに取りつけてあるビニール製シース

から、黒刃の炭素鋼ナイフを取り出す。

刃渡り15センチくらいのサバイバルナイフだ



「まあ、こいつも特に使ってないからいいか...

 でも、レバーアクション銃は相当に

 ぶっ放しまくったからな。

 しっかりとクリーニングをしとかないと...」



ヨッシーの独り言をむけぞうは拾った



「ああ、それは俺がやっておくから、

 リボルバーとライフルはここに置いててくれ。

 メンテナンスとクリーニングをしておくから。


 君は、身体を休めるんだろ?

 作戦開始は明日の午前4時だから、

 それまで寝ておくんだ」



そう言いつつ、むけぞうは慣れた手つきで

ステンもどきのサブマシンガンを分解した。



「すいませんが、お願いします。

 こればっかりはどうしても素人なもんで....」

 


ヨッシーは、ナイフをシースに収めると、

しばらくむけぞうの作業を見つめていた


いつの間にか、ステンもどきは

銃身を取り外され、さらにレシーバーから

巨大なスプリングとボルトを引き抜かれていた。


それらを、

油を染み込ませた布で拭き続けるむけぞう


ヨッシーはむけぞうに語り掛けた



「ねえ、むけぞうさん.....

人型を倒したとき、スゲかったっすよ!


 本当、今まであんな動き、

 映画でしか見たこと無かったです。

 一体、どうして

 あんなことが出来るんですか?」



むけぞうは、銃のパーツを拭きながら

”謙遜”することなく答えた



「アレは俺の”才能”なんだよ.....


いつかウメさんに言われたことがあったな


 『時代が違えば、剣術の流派かもしくは、

  暗殺術か忍術の創始者になっていただろう』

  

 ってね。

 

 何十年も鍛錬を続けているウメさんよりも、

 俺は強いってことらしい」



そして、むけぞうは

ヨッシーのほうを見つめて続けた。

その顔は僅かに微笑んでいる



「でもね、俺は常々こう思っているんだ


 ”才能が目覚めない世界”


 のほうが、どれほど良かったかと.....


 そこでの俺は、うだつの上がらない

 引き籠りのままだったかもしれない。

 

 でも、両親も兄も生きているんだ....

 ......

いや、他にも大勢の人々が生きている世界だ」



むけぞうは、ややバツの悪そうな顔になった



「とまあ、そんな事言ったら、

 俺の嫁さんに怒られそうだけどね。

 ヨッシー君も含めて、

 今、俺の周りにいる大切な人々は

 やっぱり、”この世界”で出会ったんだから」



ヨッシーは、そっと、むけぞうの手を

自らの両手で包み込んだ。


動作が止まるむけぞう....


今はヘルメットを脱いでおり、

人の良さそうなお兄さんな風貌は

ヨッシーをじっと見つめている。


その眉間と目尻には、

苦難の日々を物語る皺が刻まれていた。


ヨッシーは思った



(ゾンビパンデミックで肉親を失い、

 絶望と苦悩のどん底の中、ついに

 自らの内に眠っていた才能を呼び覚ました男


 しかし、その能力を他人を救うために使う、

 まさに”リバーサイド同盟の英雄”だ)



そして言った



「ここでは、誰もが何かを失っています....

 それでも俺は、やっぱりこの世界が

 大好きなんです!


 俺も、むけぞうさんと同じく

 ”才能”が目覚めたらしいですけど。

 

 俺は、その能力を大好きな人たちの為に

 使って見せます!」



ヨッシーはスクッと立ち上がった。


急に、皆に会いたくなったのだ


操舵室のドアを開いて外に出る。

満点の星空の下では、

大勢が何らかの作業をしていた


船首のほうでは、ジジイと子供たちが

積み込んだ大砲をロープで固定している。


コンクリート土台には

2台の『火炎放射器』が置かれていて、

マッシュルーム眼鏡の技術者が

それを弄っている。


ヤングジジイは、道具類や材料を

船から土台に運んでいた。


さらにコンクリート土台の隅には、

数人の子供たちが集まっていた。


リナとリサとスミレ、そしてカズヤだ。

それと、犬太郎と犬次郎


カズヤは、スマホで

”ヤングジジイ・チャンネル”を注視していた。

....交代制の監視役をやっているのだ


ヨッシーは、『つぎはぎ丸』から

コンクリ―ト土台に飛び乗った。


少女たちと犬たちの元に向かう


リナが、ヨッシーの姿を認めて言った



「おうヨッシー、これから私たち、

 お休みを頂けるんだけど。


 ウメさんは、おとこ丸の仮眠室に居るから、

 私たちは、つぎはぎ丸の仮眠室を使うよ」



ヨッシーは頷くと、2匹の犬達の側に座った


胡麻毛の犬太郎と白毛の犬次郎は、

くっつき合っておねんねしている。

その側には、穴あきバケツの焚火が

置かれていた。


スミレとリサが、寝そべっている2匹を

なでなでしていた。

ヨッシーもそれに加わった



「俺は今まで犬嫌いだったからな~

 人生損していた気分だぜ」



2匹は、前脚をクイっと折り曲げて

腹を見せている。

モフモフの脇や腹を夢中になって撫でるヨッシー


どさくさに紛れて、犬太郎が

手をペロペロしてきたので、

ヨッシーは急いで手を引っ込めた


....と、いきなりカズヤが大声を出した



「皆ーー、ワクワクポートに動きがあるぞーー

 2階の窓から、銃を持った数人が

 身を乗り出している。


 多分、人型が襲来しているんだ!!」



ヨッシーと少女たちは、カズヤの持つスマホを

注視した。



///////////////////////////////////////////



漁港ビルの3階にセットされたスマホは、

ワクワクポートを斜め後ろから映していた。


建物の奥に浮桟橋に接岸された海賊船、

そして渡り廊下が見える。


建物の2階の陸側、つまり一番手前の窓から

数人が身を乗り出していた。



「俺が、2体の人型を倒した時と同じ場所だ。


 奥に明かりが灯っているし、

 やっぱりあそこの食堂エリアで、

 どんちゃん騒ぎをしているんだろうな。


 楽しみやがってクソったれめ!!」



ふいに、窓から身を乗り出した数人から、

激しいフラッシュが点滅した。


低画質モードでも、それが

軍用銃のマズルフラッシュだというのが分かる



ダダダダダッ!!

ズダダン、ズダダダンッ!!!



スマホは、けたたましい銃声も拾った。


姿は見えないが、

人型が襲来しているということで

間違いないであろう



いつの間にか居たマッシュルーム眼鏡の声が

言った



「弾薬も潤沢に持っているみたいだ...

 まるで楽しんでいるかのように

 ぶっ放しているね。


 ちなみに、我々の持つ銃では、

 連中の軍用銃には勝てない。


 まずは、使用する弾薬が全く違う


 こちらの主力は拳銃弾だが、

 連中のライフル弾はそれよりもはるかに

 強力で遠くまで飛ぶ。


 そして、『AK』に『FN-FAL』

  

 やや古い銃だが、

 当時の天才銃器設計者たちが作った、

 とても優れたライフルだ。

 

 正面からの撃ち合いになると、

 絶対に負ける」



ヨッシーは、立ち上がった



「そうですね、

 俺たちはベストコンディションで

 向かわないと....


興奮してて眠たくないですが、

 無理にでも身体を休めないといけませんね」



すると、リナとリサとスミレも立ち上がった


妹のスミレが言う



「にぃが言った通りだね。

 とりあえず、つぎはぎ丸の仮眠室に行って

 身体を休めておこう!」



ヨッシーは答えた



「うむ、俺は操舵室の隅っことかで寝るから、

 仮眠室は3人が使いたまえ」



すると、リナとリサがヨッシーを両側から

ガッシリとホールドした。


リナが言った



「ダーーメ、変な所で寝たら

 疲れが取れないでしょ!

 そしたら、皆が困るんだからね。


 ヨッシーも、私らと一緒に仮眠室で寝なさい」



リサも言った



「うんうん、興奮して眠れないんだったら、

 私たちが子守唄でも歌ってあげるからさ!


 今夜だけは特別に膝枕をしていいかもよ」



ヨッシーは抗議した



「ちょっと君達、困るよ!!

 冷静に考えてみたまえ、この年の少年少女が

 混寝するとか、

 道徳的に不健全だと思わないかね?」



なぜか、プリンスの怒声が響いた



「このチート野郎め!!!!」





 


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