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ムケチン作戦~大砲積み込み2


「他人がやってるのを見ると、やっぱり

 ブツブツ独り言を呟く人物は不気味だよね


 俺も時々、嫁さんに注意されるんだ」



ヨッシーは振り返った


白装束にヘルメットのちんかわむけぞうが、

こんもりと荷物を持って追ってきたのだ。


シャックル付きの短いワイヤー、

シャックル付きのジャラジャラとしたチェーン、

重たそうなスナッチ滑車、


さらに、サブマシンガンを背負っている



「あ、むけぞうさんは先に行ってて下さい。

 俺一人で、ワイヤーを引っ張りますから」



「了解、先に行って準備をしているから」



むけぞうは、ヨッシーを追い越した。


眼下の線路を見る


マッシュルーム眼鏡が、

線路のレールにスナッチ滑車を取り付けていた。

彼の側にはウメさんが立っている


2人とも、元々はツーリング仲間だけあって

気心が知れてる感じで、

ウメさんは相変わらず何やら語りかけていた


ヨッシーの中にふと、記憶が蘇った



・・・・・・・・


あれは小学生の頃.....


プリンスと3馬鹿少年と共に、

チャリで海岸沿いを走っていた時だ


『やけにゴツくてデカいバイクに乗った集団』


が後ろからやってきた


振り向くと、ライダー全員が

フルフェイスヘルメットだったので、

どういう人物なのかは分からなかった


そして、良いエンジン音と共に

すぐに横を通り過ぎて行った....


ひょっとしたら、あの大型バイク集団の中に

2人が混じっていたかもしれないのだ


・・・・・・・・・



「ウメさんが言ってた名前、

 確か『ドゥカティ』と『隼』だったか?


 あの二人が、ゴッツい大型バイクで

 レジャーを楽しんでる絵がよく分からん。

 見た目だけなら、ウメさんも技術者さんも、

 小柄で大人しい外見だし....」



先程、不気味だと言われたにも関わらず

独り言を呟くヨッシーだった


さて、ワイヤーを引っ張りながら

【二の鳥居】をくぐると、現実が出迎えた


風に乗って漂う強烈な腐敗臭、

設置されたLED照明に照らされて、

地面に転がる人型の残骸が見える


真正面には、真っすぐ伸びる参道


その横にポツンとある【灯篭】に、

目立つ白装束姿のちんかわむけぞうが居る


ヨッシーは、重くなってきたワイヤーを

背負うように引きずり、灯篭の近くまで来た


ちんかわむけぞうは、

屈みこんで灯篭に短いワイヤーを巻いていた。

そして、シャックルで短いワイヤーの両端と

スナッチ滑車を纏めた。


その作業をしながら、

ブツブツと”独り言”を呟いていたのだ



「かつて俺は、廃人ゲーマーで引き籠りだった


 しかし今は、生き残っている人間に

 沢山会いたくてたまらない。

 リバーサイド同盟以外でも、

 無時に過ごしている人々が居ることを

 この目で確認したいのだ


 ああ、彼等に会って笑顔を見てみたい


 ....もちろん、ヒャッハーやクズは御免だが


 とにかく、お互いに争うべきではないのだ!

 

 そう、平和を勝ち取り、

 いつか絶対、森〇製菓の工場に行って

 オモチャの缶詰を....


 はっ、ヨッシー君、居たのか?


 今、俺は独り言を呟いていたな、

 なんと恥ずかしい!!」



ヨッシーは、背負った50メートルワイヤーの

先端を地面に下ろした


その場で、ワイヤーの残りを両手で引っ張って

手繰り寄せながら、むけぞうに向けて微笑む



「むけぞうさん、あなたはとても

 戦闘に長けたお人のようですが、

 本心はとても優しいんですね!


 実は俺も、同じようなことを思ってます。

 世界中で生き残っている人々に

 会ってみたいってね.....


 もちろん、海賊のようなゴミどもは別ですが」



眉間に皺を寄せ、ハッと口を開き、

まるで自らを恥じる表情だったむけぞう


しかし、彼は微笑み返した


ヨッシーが手繰り寄せたワイヤーの先端を

取ると、

それを【大砲のお堂】まで引っ張りながら

言った


 

「ああ、君もそんな事を思っていたのか、

 嬉しいよ。


 こんな世界になってからね、

 生きている人間は自分たちだけじゃないか?

 って思えて怖くなってくるんだ」



そして、むけぞうは【大砲のお堂】まで

ワイヤーの先端を引っ張り終えた。


ヨッシーは、

灯篭に取り付けたスナッチ滑車のフタを開けて、

ワイヤーを滑車にはめ込んだ


今、50メートルワイヤーが

線路から石段を通ってまっすぐに灯篭まで来て、

そこからクイッと曲がって

大砲まで伸びてる状態だ


そして、ウメさんとマッシュルーム眼鏡が

石段を上ってきたのだった


ウメさんが言った



「ほーっ、もうワイヤーの準備が終わったの?

 ちんかわ君もヨッシー君も、

 流石に手慣れたものね。

 

 さて、これからようやく私が仕掛けたC4を

 起爆させるのね」



大砲は、鉄製の台座に輪っかのような金具で

固定され、金具と台座は溶接されている。

その溶接面に、少量のプラスチック爆弾を

仕掛けてあるのだ


濃紺色の警察の出動服に、

腰に軍刀と拳銃を差したウメさん


彼女は、参道の奥にある本殿の方角を向いた



「2匹の犬達は、上段のほうに居るわね。

 私達が作業しているのが分かってて

 空気を読んでいるのか、

 それとも人型の匂いがキツイのかしら」



犬太郎と犬次郎は、

本殿への石段を上った場所でこちらを

伺っている。


次にウメさんは、

振り向いて【二の鳥居】のほうを見て言った



「まだ少しだけC4が残ってるけど....

あの鳥居を爆破しなくていいの?」



マッシュルーム眼鏡が、

その粗末な木製の鳥居を見て言った



「まあ、あのくらいなら

 列車の力で引き倒していくでしょう。

 罰当たりな事ですが、仕方ないっすね....


 さて、大砲にチェーンを付けてから、

 ついに爆破と行きましょうか!」



むけぞうが、持ってきた2本のチェーンを

大砲に巻き付ける。


マッシュルーム眼鏡によれば、

大砲を砲架に乗せるための”砲耳軸”


(砲身から左右に突き出している短い円柱)


が、ちょうど”重心位置”になるらしい


そこを中心にして、

反対方向に同じ距離だけ離れた場所に、

2本のチェーンを巻き付けた。


大砲を一周したチェーンの先端を、

小さなシャックルで途中の輪に止めて、残りを

まっすぐに伸ばす。

そして、50メートルワイヤーの先端に、

伸ばした2本のチェーンの先端を

シャックル止めした。


これで、大砲は常に

引っ張るワイヤーに対して直角になる


ウメさんは、ポケットからゴソゴソと

”起爆スイッチ”を取り出した



「さて、爆破する時は、あなたたちは

 遠く離れて物陰にでも隠れてね。

  

 2匹の犬たちも、

 不用意に近寄ってこないように、

 ここに呼んでおいたほうがいいかも」



そして、上段の犬たちに向けて

手を振って”コイコイ”した


胡麻毛の「犬太郎」と白毛の「犬次郎」は、

尻尾を振りながらウメさんのほうへ

駆け寄ってきた


ピンク色の舌を出してハアハアする2匹を

撫でながら、

ウメさんはヨッシーのほうを向いて言った



「ヨッシー君、

 この2匹とチームアルファの2匹を連れて、

 あの納札所の裏にでも隠れてね」



2匹の犬の首根っこを掴んだヨッシーは、

むけぞうとマッシュルーム眼鏡と共に

【納札所】のほうへ向かった


まるで大きなゴミ箱のような

ちゃちい納札所の近くには、

数体の人型の残骸が転がっている


.....腐敗臭が凄まじい


犬太郎と犬次郎の首根っこをムンズと掴み、

引っ張っていくヨッシー



「すまんな、俺は今まで犬嫌いだったから、

 犬の扱い方を知らぬのだ。

 悪臭も凄まじいが許してくれ」



「フンッ、フンッ」「ヒーン、ヒーン」



2匹は不服そうながらも、

大人しくヨッシーに引きずられていく。


こうして、納札所の裏に2匹と3人が隠れた


ウメさんは、

【大砲のお堂】近くのLED照明を少し移動させた。

そして、

設置されたC4爆薬から伸びた細い電線を、

【取水舎】まで引っ張っていく


石製の取水舎の裏に隠れたウメさんは、

細い電線を起爆スイッチに繋いだ



「それじゃあ、準備はいい?」



ヨッシーは、犬2匹を両脇にしっかりと抱いて

身を屈めていた。


後ろのむけぞうが言った



「俺とマッシュさんはオッケーだ」



ヨッシーが大声で伝える



「大丈夫でーーーす!!」



ウメさんが大声で返した



「それじゃあ行くわよ、Fire in the hole!!」



バアァンッ!!!!!



結構な音が響き、

両脇に抱いた毛のモフモフがビクッとする


ヨッシーは思った



(ワイルドだぜ)





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