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ムケチン作戦~大砲積み込み1

大型ドローンによって

線路わきに投下された材料の中には、

長さ4メートル程の鉄骨が2本あった。


一本の重量が100キロ近いそれを、

4人がかりで持ち上げる。

そして先程、むけぞうが割った

列車の窓ガラスにそれを突っ込んだ。


マッシュルーム眼鏡が言った



「ハア、ハア、

 ほら、黄色いテープを巻いてる部位が

 窓枠に来るまで、頑張って突っ込んでくれ。

 これをあともう1本だ、頑張ろう!」

 


言われた通りにすると、反対側の割れた窓から、

鉄骨が少し突き出るくらいになった。

そして、こちら側の鉄骨は、

外に1メートルほど突き出ている。

やがて4人は、

2本の鉄骨を列車に突っ込み終えたのだった


ちなみに、鉄骨の先端にはあらかじめ

”スナッチ滑車”が取り付けてある



「ハア、ハア....定滑車を使うことで、

 力の向きを変えることができる。

 さらに動滑車を使えば、より少ない力で

 重たい物を動かせるんだ。

 でも、その場合は使用するワイヤーの長さが

 倍以上になるし、

 何よりもこの気動車の力が使えるので

 今回は動滑車は使わないさ」


「......」


「....な、なるほど」


「全く、老体をこき使うんじゃないわよ....」



饒舌になったマッシュルーム眼鏡とは対照的に

残り3人は無口だった....

 


次に、むけぞうと技術者が

『シセⅢ型気動車』に乗り込んだ。


そして、キャッチクランプのような金具で

鉄骨を窓枠に固定した。

反対側の窓枠も同じようにして、鉄骨を

しっかりと列車に固定する


今、列車の窓から2本の鉄骨が、

平行に1メートルほど突き出ている光景だ


4人は再び列車の外に集結した。

そして、マッシュルーム技術者が言った



「ハア、ハア....これで、

 列車に大砲を吊り下げる準備は終わった。


 次は、大砲を線路の横まで

 引きずって持ってこないといけないね。

 ワイヤーと滑車が必用だ。

 

 滑車は、分岐駅の町にドローンが

 投下していて、この列車に積んでいる。

 ワイヤーは、線路わきに投下されてるはずだ」



ヨッシーは、線路わきに投下された材料の中の、

50メートル巻きのワイヤーを指さして言った



「ワイヤーの端を列車の先頭かケツに付けて、

 もう一方の端を大砲に付けるんですね。

 んで、途中にスナッチ滑車を噛ませて

 列車で引っ張るんでしょう?」



マッシュルーム眼鏡が答える



「その通りだ、さすが日頃から

 漁師をやってるだけあって理解が早いね」



ちんかわむけぞうが後を継ぐ



「俺達”白装束”は、常にバンバンと人型を

 撃ってるだけのイメージを持たれているが。 


 でも、それは対人型任務の中であっても

 全体の1割ってところだ

 

 残り9割は下準備で、

 今みたいに工兵のような事をしているのさ。

 おかけで、俺もすっかりと土木作業に慣れた


 ...あっ、でもウメさんは

 周囲の警戒をしてください」



ウメさんは、ニンマリとした笑みを浮かべると

軽く敬礼のような仕草をした



「了解、残りの力仕事は若者たちに任せるわ」



マッシュルーム眼鏡が軽口をたたく



「ふふふ、ウメさん、

 あなたはツーリング中に立ちゴケした時に、

 重さ200キロ以上の『隼』をヒョイっと

 持ち上げましたよね?

 実は怪力の持ち主だって僕は知ってますよ?」



ウメさんは鼻を鳴らした



「フンッ、生意気な坊やは守ってあげないわよ!


 大体あなたねぇ、いつまで

 マッシュルームカットでいるつもりなのよ、

 いいオッサンでしょ?

 いつまでもネガティブな青年を

 気取ってるんじゃないわよ!


 私が孫たちにしてあげるように、

 ハサミで髪を切ってあげようか?」



むけぞうとヨッシーは、

終わりそうにないウメさんのトークを後目に

そそくさと作業を開始した


4分くらいのワイヤーの50m巻きを

二人掛かりで転がして、

神社の石段の前まで持って行く


むけぞうが言った



「このワイヤー、超ボロいだろ?

 列車に大砲を積み終えたら、

 ここで廃棄するんだ。

 

 まあ、でも、マッシュさんが言ってたけど、

 破断することなくきっちりと最後の仕事を

 こなしてくれるだろうって....」



列車は、石段の手前くらいに停車しているので、

恐らくはワイヤーの端を先頭に付けて

バックして引っ張るのだろう。


ワイヤーを束ねている紐を解きながら

ヨッシーはブツブツ呟いた



「....てことは、

 石段の正面である、ここのレールに

 スナッチ滑車を一台取り付けて....

 もう一台は、灯篭にでも付けるのかな?」



むけぞうがヨッシーの独り言を拾う



「ん、今の俺に話しかけたのかね?


 それとも、

 君も俺と同じく独り言を呟くタイプかね?


 まあ、ビンゴだよ。

 大砲を方向転換させるための滑車は、

 参道の横にポツンと立ってる灯篭に付ける」



そう、参道の横に一つだけ『灯篭』が

立っているのだ。

それは、相当に古く、けっこうデカい


神社内では歴史的な遺物として

残してあったのだろう


むけぞうは言った



「んじゃあ、俺は残りの材料を取ってくるから。

 ちょっと待っててくれたまえ」



むけぞうは、列車のほうへ向かった


しかし、ヨッシーはすでにやることは

分かっていた。

横倒しにした50メートル巻きワイヤーの

先端を取ると、そのまま石段を上る


斜め上前方には『二の鳥居』が見え、

そこから腐敗臭が漂ってくる


ワイヤーを引きずりながらヨッシーは思った



(本来なら、鳥居の内側は神聖な場所のはずだ。

 しかし、境内には

 人型の残骸と人間の死体がある


 しかも、これから俺達は、

 神社に奉納されているモノを略奪しようと

 しているとは.....

神聖な場所を穢しておるよな、俺達って)



ふと気が付いて”戦慄”する


そして、思ったことを口に出していた



「いや、もしかしたら......


神が守護するべき対象は、

もはや”人型”なのではないか?


 そうなっているほうが本来の姿で、

 むしろ俺達のほうが異端なのではないか?


 だとしたら.....

神の加護は、俺達の側にはないのか!」



後ろから、むけぞうの声が応えた



「そんな風に思っちゃあダメだよ。


 神様が、あんな臭いモノを

 愛するわけがないだろ?


 にしても、やっぱり独り言を呟くんだね」




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