ムケチン作戦~2チーム合流
「こちらチームアルファ、
列車は、もうすぐチームブラボーの神社に
到着する!
待たせたな、ウメさん、ヨッシー君。
ゆっくりと積もる話でも...
というわけにはいかないが、
まあ、一息くらいはついてくれ」
「こちらチームブラボー、了解した」
ちんかわむけぞうは
通信機をポケットに仕舞った。
やがて、『シセⅢ型気動車』のヘッドライトが、
線路わきに置かれた資材と
小型の4輪バギーを照らしたのだった
ゴゴゴゴ、キュイーー、キイイィー
列車を止めて、マッシュルーム眼鏡が告げる
「よし、神社に到着したぜ!
さっそく騎兵隊の突撃だー」
しかし、むけぞうが言った
「まあ、人型に関しては
俺達の助けなんて必要なかったけどね。
これからの俺達は工兵隊だぜ」
むけぞうは
リュックからLEDバッテリー照明を2つと、
11.5ミリ弾の30連マガジンを2つ取り出した。
細長いマガジンを、左腰のナイフの後ろの
ポーチに差し込む。
そして、
運転席から出てきたマッシュルーム眼鏡に、
LEDバッテリー照明を一つ渡した。
彼は、『スターム・ルガー 10/22』という、
小ぶりなオートマチックライフルを
背負っている。
2人は、高さ1メートルほどの列車のドアから
降りた。
目の前は、両側を森に囲まれた上りの石段だ。
LED照明で照らされたその奥には、
木製っぽい粗末な鳥居が見える。
石段を登りながら、むけぞうは言った
「人型の素晴らしい香りがここまで
漂っているな。
さぞや激戦だったのだろう」
そして、むけぞうとマッシュルーム眼鏡は、
木製の粗末な『二の鳥居』をくぐった....
・・・・・・・・・・・・・・・・・
まず感じるのは、やはり強烈な腐敗臭.....
こちらから見て右側には
並んだ2棟の建物があって、
そこからLED照明の光が周囲を照らしている
照らされているのは、
地面に転がる人型の残骸だ
むけぞうは感心して言った
「すごいな、多分、20体以上はある」
とりあえず、さっと周囲を確認してみる
持っているLED照明で左側を照らすと、
目的の大砲が祀られている櫓が確認できた。
他は、末社の祠や取水舎などがあって....
正面には一直線の石畳の道が伸びていて、
つまり参道だ。
その奥は高い石垣で、一段上に本殿がある
むけぞうは、
右側の2棟の建物のほうへ向きなおると
歩んで行った
「ご苦労さん、ウメさん、ヨッシー君」
LED照明を持った片手を上向きに掲げる
すると、2棟の内の奥の建物、
つまり『神楽殿』の前に立っていたウメさんが
片手を上げて挨拶を返した
そして、手前の建物、
つまり『社務所』の屋根に跨るヨッシーも
片手に持った銃を上に掲げた
近付くにつれて、
ヨッシーの素晴らしい笑顔が見えた
むけぞうは笑顔を返しながら思った
(うん、とてもチャーミングな笑顔だ!
ウメさんが君にゾッコンなのも頷けるわい)
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通信機からの連絡と、聞こえてきた列車の音、
さらにボウッと
こちらに向かってくるLED照明の光で
分かっていた
『社務所』の屋根の天辺に跨るヨッシーは
フウッと一息ついた
「チームアルファが来てくれたか。
なんだかやけに長かったような
あっという間だったような、不思議な気分だ
本当に、この短時間で色々とあり過ぎた」
こちらに向かってくる、ちんかわむけぞう
片手にLED照明を持ち、
サブマシンガンを背負っている
そして、ヘルメットを被り、
派手な原色のラインと
ブラックホールのエムブレムが入った白装束だ
とても目立つ服装だが、ちゃんと理由がある。
それは、人型には”迷彩色”などの視覚的な
カモフラージュは全く意味がないからだ。
味方同士が、一目でお互いの存在を
把握できるようにしてあるのだ
むけぞうの後ろには、マッシュルーム眼鏡が
ついてきている。
やはり片手にLED照明を持って
小ぶりのライフルを背負い、汚れた作業着姿だ
「今や、2人がかつてないほどの
ベッピンさんに見えるね」
ヨッシーは呟くと、
片手に持った「アウトロー」を掲げて
とびっきりの笑顔を作って見せた。
むけぞうが、笑顔を返してくれた
と、ウメさんの声がする
「結局、私が8体で、
ヨッシー君が18体片付けたわ
合計26体もの人型が襲ってきたってわけ
裏の森のほうからもかなり来たけど、
矢之板が作った鉄条網がよく防御してくれた
彼の遺体は、神楽殿の控室にあるから
そこには入らないほうがいいわね」
むけぞうは頷いた。
マッシュルーム眼鏡が言う
「了解、では、早速始めましょうか!
こんな悪臭漂う陰気臭い場所から、
さっさと抜け出しましょう」
そして、屋根の上のヨッシーに向けて言う
「それでは”凄腕ガンマン君”、
列車に大砲を積み込む作業を行うから
君も手伝ってくれないか?」
「もちろんっす、屋根から降りますね」
ヨッシーは、ようやくレバーアクション銃を
背中のライフルホルスターに仕舞った。
そして、屋根に据え付けてあるLED照明を
肩に引っ掛けて梯子を降りる
「ワンワンワンッ」「ワンワンッワウウー」
石垣の上段にある神主の自宅から、
2匹の犬が戻ってきた。
胡麻毛の犬太郎と、白毛の犬次郎だ
LED照明で照らしながら
マッシュルーム眼鏡が言う
「おおっ、この2匹、
この地方原産の猟犬じゃないか?
とても貴重な犬種だよ」
犬たちは、新しい訪問者たちに
興味深々のようだ。
特に、優しそうな外見のむけぞうは、
犬たちにも人気だった。
むけぞうは、通信機を取り出して会話しながら、
まとわりつく2匹を手で払っている
「あー、こちらチームアルファ、
今、神社に到着して
チームブラボーと合流した!
って痛ぇよ、なぜ噛む?
ああ、例の犬たちにまとわりつかれている...
それじゃあ、大砲の積み込み作戦を開始だ」