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ムケチン作戦~金色のエンゼル

マッシュルーム眼鏡の技術者は、

夢の『シセⅢ型気動車』の運転に夢中だ



プシュ―、ゴゴゴゴゴ、ガタンゴトン



列車が出発すると同時に

客室に居るちんかわむけぞうは、

ポケットから通信機スマホを取り出した



「あー、こちらチームアルファ、

 チームアルファだ


 ついに列車が出発した!

 

 速度は通常の半分以下で巡行するから、

 チームブラボーの神社まで約30分掛かる」



やがて、チームブラボーから返事が来た。

ウメさんの声だ



「こちらチームブラボー、ただいま取り込み中、

 人型の襲来が続行、以上」



ウメさんの音声に混じって、銃声が聞こえる。

ヨッシー少年のレバーアクション銃だろう



むけぞうは短く言った



「了解、健闘を祈る」



チームチャーリーとムケチン作戦本部は

沈黙している。


彼等は、今のむけぞうと同じように

心配そうな面持ちでいるのだろう。

しかし、チームブラボーに対しては

何をすることも出来ないのだ。


ふいに、車内放送が響いた


それは、運転席からの

マッシュルーム眼鏡の声だ



「もどかしい気持ちだが、僕達は

 フルスピードで駆けつけることは出来ない


 当然ながら、路線は3年間ほったらかしで

 整備や点検はされてないからね。

 低速で慎重に進まないといけないんだ。


 まあ、日中にビーグルマップで見たところ、

 線路にダメージを受けている場所は

 無かったが.....


 ただ、一箇所だけ

 トンネルを通る場所があって、

 中はどうなっているか分からないな


 まあ、何もないとは思うがね」



天井スピーカーから鳴り響く声を聞きながら

むけぞうは思った



(そうあって欲しいものだ.....)



あの、”矢之板智”の事件があって、

むけぞうの中には

ヨッシー少年に対して申し訳ない思いがあった


一刻も早く神社に駆けつけて、人型どもを

蹴散らしたいものだが、どうしようもない


見晴らしのいい広い車窓からは、

暗闇しか見えなかった。

むけぞうは、彷徨う視線を床に落とした



「???」



......と、先ほど踏み潰したチョコボールの箱


潰れてペシャンコになった箱から、

黄色いクチバシ状のフタが飛び出ている。


その黄色いフタに、濃い金色っぽいマークが

印刷されているではないか!!

むけぞうは、前屈みになってよく見てみる


小さく、『金』と書かれているように見える



「むむ、これって、まさか、

 ”金のエンゼルマーク”では!」



そう、5枚集めなければならない銀と違って、

たった1枚で『おもちゃの缶詰』が貰える、

あの金のエンゼルマークだった


むけぞうは、身体を屈めて、

潰れたチョコボールの箱を拾った。


間違いなく、”金のエンゼルマーク”だ



「確か、この県の臨海工業地帯にある

 森〇製菓の工場は、

 チョコボーラーから手厚く保護されている


 あの世界最高の菓子メーカーは、

 3年より前の当たりマークであっても

 持って行けばオモチャの缶詰と

 交換してくれるという男気を表明していた


 そして、金色のエンゼルマークが

 出現する確率は、

 わずか0.2パーセントだったはず」



むけぞうは、潰れたチョコボールの箱を

白装束のポケットに仕舞った。


そして、頷きながら自分に言い聞かせた



(大丈夫だ、大丈夫.....俺達はツイてる)



///////////////////////////////////////////



ヨッシーは、レバーアクション銃『アウトロー』

のレバーを操作して次弾を装填した



ガチャンッ、ガチッ



空薬莢が上部に飛び出し、

ファイアリングピンのケツがハンマーを起す



カン...カン....



傾斜した屋根の上を、

金属薬莢が転がり落ちていく音だけが聞こえる


人型の波が途絶え、神社には静寂が訪れていた



.....さて、これで倒したのは9体目だ



「ええっと、さっきリロードしたのが5発で

 撃ったのが4発ってことは、

 残弾は3発かな?」



この銃は、オートマチックのような

箱型弾倉ではなく、チューブ型弾倉だ。

弾を一発ずつ送り込まなければならない


銃を片手で持ち、

もう片手で11.5ミリ弾の入った胸ポケットを

まさぐりながら、

ヨッシーは再び独り言を呟いた



「まあ、確かに慣れてないと、

 フルオートのサブマシンガンを使ったら

 あっという間に弾を使い切ってしまうよな


 ....そういえば、さっきの人型は?」



と、すぐにウメさんの声が聞こえた



「ヨッシー君、さっきの奴は倒したわよ」



ヨッシーは、安堵するとともに驚愕していた



(ふゅ~、いや、マジでスゲエな!

 多分、あの軍刀で斬ったんだろうけど、

 十文字流、凄すぎるだろ!

 ほんと、ウメさんが居なければ詰んでたぜ)

 


LED照明の拡散光と星あかりに照らされ、

倒れた人型の残骸が散乱しているのが分かる


ヨッシーの心は、唐突に騒ぎ始めた



「なんてこった!!

 こいつらの一体だけでも、俺を引き裂いて

 ズタボロにする力があるんだ。

 それが、この外界には無限と居る....


俺は今、外界の真っただ中に居るんだ」



胸の動悸が速くなったのを感じる


置いてけぼりにしていた不安と恐怖が、

今になって戻ってきたような感じだ


急に、3月の夜の寒気が襲ってきて

ヨッシーの身体は震え始めた。

そして、麻痺していた嗅覚も復活し、

最低の腐敗臭を思い出した



(落ち着け俺、落ち着け、

 まだだ、まだ、終わってないぜ)



ポケットをまさぐるのを辞めて、

まだ熱気が籠っているレバーアクション銃を

身体に寄せて両手で構える



「ハア...ハア」



だんだんと心臓の動悸が収まっていく



・・・・・・・・・



すると、鳥居の暗闇の中から、

また新手の人型どもが出現した



「よっしゃあ!!!

 来るなら来やがれモンキー野郎ども」



ヨッシーは、すぐに”ニーチェ的超人モード”

に切り替わったのだった。


と、カーゴパンツのポケットが振動している。

中に入れてる通信機だろう



(通信機はウメさんにお任せして、

 俺はひたすらお前等をぶち殺し続ける!!)



ヨッシーは、先頭の人型に狙いを定めた




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