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ムケチン作戦~デビューの予感

『シセⅢ型気動車』は、座席が

ロングシートだけのシンプルな車内だった。

要は、山手線や地下鉄のように、

窓際の長い座席に乗客が向い合わせで

座るタイプだ


これは、車両が非常に高速で停車駅も少なく、

最初から最後まで乗っても1時間以内で

済むからだ。

同様の理由から、車内にトイレは無い。


天井には、ほとんど

使われたことが無いであろうつり皮が

並んでいる。


驚くべきは、しつこいくらいの

「チョコボール」のつり広告.....

やはり、森〇製菓の猛プッシュの痕跡が

ここにもあった。


さらに、数枚の「リバーサイド同盟の市」の

広告も見受けられる


”隠れた名所だらけの歴史ある街です”


”県内一の規模のショッピングモールで

 楽しいお買い物を”


”全国一の珈琲好きの市に選ばれました”


まあ、この私鉄路線を使って、漁港町方面から

リバーサイド同盟の市に行くには、

分岐駅から乗り換えなければならない。

結局、大抵の者はそのまま真っすぐに

県庁所在市に行ってしまうのであった



「....それに、一般道を使って

 車で行ったとしてもだ。

 あの漁港町からだと、川沿いの県道が

 最短ルートなんだけど、

 あそこは通りにくいからね


 結局、広い快適な国道を使うと、

 この分岐駅の町に来てしまう。

 ここまで来たなら、結局は、

 県庁所在市のほうに行っちゃうんだね」



マッシュルーム眼鏡の言葉に、むけぞうは

相槌を打った



「しかし、これから俺達リバーサイド同盟は、

 今までは疎遠だった漁港町の連中と....

 いや、正確には”島の連中”だけどさ


 その連中と蜜月な関係を築くことになる」



気車の運転席で、計器類を見ながら

エンジンの試運転を終わろうとする技術者。

そして、その隣に立つちんかわむけぞう


派手な原色のラインと、ブラックホールの

マークが付いた白装束に身を包んだむけぞう。

さらに、プラスティック製のヘルメットを被り、

サブマシンガンを肩に掛けて、

両腰には拳銃と柄の長いナイフを挿している


むけぞうは、ギュッと拳を握ると続けて言った



「それはつまり.......


 チョコボーラーをはじめとした

 ゆかいな列強どもの社交クラブ、


 俺達は、そこに”鮮烈なデビュー”を

 果たすということだ!


 今までの俺達は、

 内地に閉じこもっていたし

 どちらかというと同情される立場であった


 さて、これからの俺達は、

 列強どもの目にはどう映るのだろう?」



計器類を確認しながら、マッシュルーム眼鏡が

答える



「ギラついた野望剥き出しで

 海への進出を果たしたヒャッハー軍団

 ...かもね


 最初に立ち塞がるのが、

 あの小林渉が率いるチョコボーラーとか、

 ハードゲームもいい所だ」



むけぞうは、クルリと背を向けると

運転席から出た。

室内灯によって煌々と照らされた車内


そして、「チョコボール」のつり広告


左腰の鞘からナイフを抜くむけぞう


それは、柄の長いステンレス製の

『ハンティングナイフ』だった。

カナエやウメさんが持っているような

業物ではない


背後から、マッシュルーム眼鏡の声が聞こえる



「コバヤシ1佐....彼はかつては

 陸上自衛隊のホープだった。


 君は覚えているかい?

 世界情勢の変化に伴って陸自に新しい部隊が

 創設されたあの日を。

 これまでにない、”攻撃的”な部隊編成に

 世論は荒れたねえ


 『広域即応作戦群』


 そう名付けられたエリート旅団は、

 特殊部隊をヘリボーン作戦で展開するために、

 強力なヘリコプター連隊を持っていた


 コバヤシは、その機動力を使って

 ゾンビパンデミック時にうまく立ち回り、

 原発を占拠した


 その後は知っての通り、ヘリを使って

 各地の避難所から有能者狩りを行ったんだ。


 やがて、コバヤシの元に他の自衛隊も集結し、

 多くのコミュニティーが傘下になって、

 今や「チョコボーラー」は日本随一の列強さ


 彼等が僕達にとって

 最悪の敵となるのは悪夢だ!

 十文字さんは、どうお考えなのだろうか?」



目の前のチョコボールのつり広告には、

呑気な顔でこちらを見つめる『キ〇ロちゃん』


むけぞうは、手に持ったナイフで

キ〇ロちゃんに切りつけた



ザシンッ!



真っ二つになったプラスティックシートの

下半分が、ヒュラヒュラと床に落ちる


ふと、ロングシートを見ると、

ゾンビパンデミック時の混乱を物語る遺物が

見受けられた


それは、置きっぱなしのハンドバッグに

ペットボトルやサングラスや折り畳み傘など....


そして、”チョコボールの空箱”があった


優しい性格のむけぞうは、

この忘れ物の持ち主たちが

チョコボーラーの傘下でもいいから

生き延びていることを願わずには

いられなかった


しかし、ナイフでチョコボールの空き箱を

突き刺す


箱のど真ん中のキ〇ロちゃんが貫かれている


そして、ナイフをブンっと振って

空箱を床に叩きつける。

そのまま、

ジャンプして両足でそれを踏み潰した


むけぞうは、大声で宣言したのだった



「賽は投げられたんだ、ルビコン川を

 渡った俺達に後戻りする選択肢はない!」



すると、マッシュルーム眼鏡が言った



「さてと、出発するぜ!

 ちんかわ君、他チームと本部に連絡を頼むよ」








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