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チョコボーラー4

廊下の奥には、巨大な曇りガラスの自動ドア。

それが左右に開き、

ミヤモトの目に飛び込んできたのは....


まずは、”プール”だった。


いや、まるでプールのように巨大な風呂だ。

広大な美しいスカイブルーの水面から

湯気が立ち昇っている


メインプールの左右には、いくつかの

小さなサブプールがあった。

それらは滝状になっていたり、

泡がボコボコとなっている。

後者は、ジャグジーとかいう奴だろう


まあ、設備が豪華だろうというのは

ミヤモトも予想はしていた.....


しかし、彼の予想をはるかに越えていたのは


利用客が、若い美男美女ばかりなのと、

所々に配置された豪華な料理群と酒類



『酒池肉林』



詳細はビーグル検索で調べて欲しいのだが、

その故事がミヤモトの脳裏によぎった


ヒョウ柄ビキニのミズハ少尉が

振り返って言った



「豊富な真水に驚いたでしょう?


 ここでは、原発の生み出す電力を用いて、

 海水から真水を作っているのです。


 さらにそれを電熱器によって加熱し、

 ポンプで循環させてろ過装置を通し、

 常に清潔に保っています」



目の前のミズハ少尉と、大皿に惜しげもなく

盛り付けてある肉料理、

氷入りのバスケットに入ったシャンパンなどの

酒類を見渡し、

涎が出てきそうになるのを抑えながら

ミヤモトは応えた



「いや、別に、豪華な設備類に関しては

 そこまで驚きではありませんね


 私が一番驚いているのは、

 ここに居る大勢の美しい若者達です


 失礼なことを申しますが、全てが

 自衛隊の方ではないですよね?」



ミズハ少尉のように、半裸の恰好の男女の群れ


彼らは、自分達の存在には目もくれず、

思い思いに享楽の限りを尽くしているように

見える


半裸状態で、親し気に肩を組んで

語り合ったり、

周囲の声援を浴びながら”レスリング”をする

男女の姿もあった


二人は、狂騒の美男美女たちの間を縫って

プールサイドまで歩いて行った。


プールの前で準備体操のようなものをしながら

ミズハは言った



「彼らは、3年前の”救出作戦”で

 救い出した若者達です」



記憶が蘇り、ミヤモトは拳をグッと握った



「ああ、思い出しましたよ!!


 確か、”県知事ゴンドウ”の放送で

 言ってましたね


 今後の復興の為に、

 若くて健康で優秀な者たちを”選別”して

 救出すると!

 

 自衛隊のヘリで、各地の避難所から

 彼らを連れてきたのでしょう?

 その他大勢の人たちを置きざりにして...」



ミズハは、やや冷たい視線でミヤモトを見て

言った



「腰に絹タオルだけを巻いた状態で 

 怒らないでください。

 

 あの時の作戦が正しかったのは、あなたも

 ご覧になった通りです。

 

 優秀な働き手を得たおかげで、我々は

 即急に立ち直ることが出来たのですから。

 それに、若者ばかりではなく、

 医者や技術者などの貴重な人材も救いました


 とても良い結果を出した作戦だったのです」



ミズハは前に向き直ると、ふいに上半身を

大きく屈ませた


ということはつまり、ミヤモトの目の前には

突き出されたお尻と、

悩まし気に食い込むヒョウ柄の生地が....



「ワタシハベツニオコッテイルワケデハ」



ついにミヤモトは、立っていることが出来ずに

ヘナヘナと座り込んでしまった。


勢いよくプールに飛び込むミズハ少尉


お湯しぶきを上げ、そのまま綺麗なフォームで

プールの真ん中を泳ぐ


ミヤモトは、未だに立ち上がることが出来ずに

座り込んだ状態のままチョコチョコと移動した


....なんと情けない動き方よ


結局、誘惑に勝てずに

大皿に盛り付けてある料理に手を出す


牛肉の塊に、色とりどりのフルーツ


『島』で生活しているミヤモトにとって、

それらは滅多に食べられないものばかりだ。

料理群の側には、

出しっぱなしの水道のようなものが設えてあり、

エチケットとして手を洗えるようになっていた



「まさしく、極楽浄土だな...

 ここに永遠に居たいような気分だ


 しかし、この瞬間にも、島の人々は

 海賊に苦しめられている!


 山崎氏は、もう二日もクレーンに

 吊り下げられたままだ。

 おそらく、もはや生きてはいまい....」



すぐ側では、半裸の若くて美しい男女が

肩を組みあって秘密の会話をしている


色欲と食欲に飲まれそうだ



「ああ、俺は、俺は何をやっている!!」



ミヤモトは、食物を貪りながら涙を流していた。

罪の意識とは裏腹に、口内に広がる幸福感


これこそが、禁断の背徳というものか?


そして、几帳面にも手を洗ったミヤモトは、

もはや後先考えない行動に出た


屈んだままチョコチョコと動き回りながら、

周囲の美女たちの身体を触りまくったのだ



「ちょっ、ちょっ、何、何!?」


「いや~ん、誰ぇ、お尻を触られたんですけど」


「うわっ、なんて大胆なんだ、胸を揉んだぞ」


「いいぞーいいぞーもっとやれーー」



自分に対する怒りと、周囲への羨望、

それらが複雑に混じり合い、

ミヤモトは混乱していた


若者たちから見れば、

それは、ペンギンのように動き回り、

なぜか涙を流しながら

痴漢行為をしまくる中年オヤジだった


そして、若者たちは嫌がることはなく

盛り上がっていた



「ちょっとちょっと、誰かあの人を治めてよー」


「おーい、ユウカ、アキ、もう、

 二人で相手してあげなよー」


「おや、あれってミズハ3尉じゃないの?

 怖い顔をしてこっちに来るよ!!」



錯乱したミヤモトは、

氷の入ったバスケットからシャンパンの瓶を

取った。

それをシャカシャカと大きく振ると、

群がる若者たちに向けて栓を開ける



ポンッ、ブシューー!!



とたんに噴き出す、きめ細かな白い泡の奔流


それは、見た目麗しい男女の剥き出しの肉体を

白くいやらしく汚していく


今や、ミヤモトは、恥を忘れて

立ち上がっていた。

腰に絹タオルを巻いただけの姿だが、

そのタオルはグワンと持ち上がっている


....と、唐突に、

背後からガッチリと締め付けられた



「ぐががあああ」



持っているシャンパンの瓶を落とすが、

床は柔らかい素材で出来ていて

瓶は割れなかった


ミヤモトは、背中全体に

柔らかくも力強い肉体の感触を得ていた。

しかし、瞬時に

成すすべもなくクルリと身体を回される


そして、今度はガッシリと顎を掴まれた



「あがごぁっ」



そのまま、すごい勢いで押し出され、

ミヤモトは、背後の小さなプールに

投げ出された


ドボンッ!!



「うぎゃああ、冷めてえええ!!!」



それは、湯冷まし用の水プールだった。

冷水の中をのたうち回るミヤモトの頭上から、

冷たい声が言った



「ミヤモトさん、何を弾けているのですか?


 少し目を離した隙に、やりたい放題やって

 まるで、ペットの犬か何かですね!


 あなたをここにお招きした、1佐の面目を

 潰さないで欲しいですね」



ミヤモトは水プールの中から顔を上げた。


ヒョウ柄ビキニの美女が、腰に手を当てて

仁王立ちしてこちらを見下ろしていた


真顔のミズハ少尉だ


しかし、水を含んだヒョウ柄の生地が程よく

肉体に張り付き、フワリとしたゴージャスな

前髪が額に張り付き、

更には、お湯によって肌は若干の赤みを帯び、

ミヤモトの股間の冷却を阻むのだった



ミヤモトはおずおずと謝罪した



「申し訳ありません、取り乱してしまいました、

 もうしません。

 しかし、しばらくこの中で

 冷やさせてください」



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