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性犯罪者の物語16

片手に長ドスを持ったサトシは、

生き残りのチンピラどもの元に向かった。

まずは、

先生とアベック男に押さえつけられている奴だ


アベック男は、

サトシ一行についてきた避難者たちの一人だが、

長ドスを持つサトシを見て驚いている


サトシは、先生に言った



「やあ、チーフ(先生)、

 2匹もぶち殺すなんてやるじゃないか!

 見直したぜ」



先生は頭を上げた。

こけた頬の不健康そうな外見の凄腕ハッカーだ



係長サトシが殴られて倒れた瞬間、

 自分でも驚くほどの怒りのスイッチが入って


 本当に、無我夢中だった」



そして、サトシが長ドスを持っている意味を

悟ったのだろう。

チンピラを押さえつけている手に

さらに力を込めた


サトシは、片膝をついてしゃがむと、

長ドスの刃を下向きにして構えた


切先のすぐ下には、

うつ伏せになったチンピラの首筋がある



「ちょっ、おい!!

 何をしてる、辞めろ、おい、辞めろ!!」



チンピラが抗議してくるが、サトシは

冷たく言い放った



「今更、友達になりましょうって、

 それは無理だぞ」



先生とアベック男によって

うつ伏せに押さえつけられたチンピラは、

必死に首を左右に動かして抵抗している



「確か、ドスっていうのは鍔や柄糸がないから、

 こうやって持たないと

 手が滑ってしまうんだよな....」



サトシは、

片手を長ドスの柄頭を押すように当てて、

もう片手は柄に添える程度にした



「ああっ、あああーー」「ああああー」



チンピラの悲鳴とアベック男の悲鳴が重なる


サトシは言った



「チーフ(先生)、しっかりと固定してくれよ。

 おいっ、アベック男、お前もしっかりと

 チーフを助けて力を入れろ!!」



キャラが立っている奴らは死んでしまったので

もう、楽しむ気もない。

サトシは、とっとと終わらせたかった



「せーのっ!!」



チンピラの首は必死に左右に振れているが、

その根元部分を目掛けて切先を降ろす


ズブ.....


人体に刃がめり込んでいく感触。

サトシは、体重を掛けた


ズブブブ.....



「あぐぁ、ごぼぇっ、ゴボッ」



所詮は日本刀とは造りが違う喧嘩包丁とは言え、

腐っても刃物だ。

長ドスの切先は、チンピラの首を貫通して

樹脂コーティングの床で止まった



「気分が良いものではないと感じるあたり、

 俺はサイコパスや殺人狂とは違う。


 自分は案外、まともな人間だって思えて

 安心する」



ブツブツと独り言を呟くサトシの視界の端に、

ボンヤリと赤い血だまりが広がって行く


ボンヤリとした肌色の物体が、まだビクビクと

痙攣している


サトシは立ち上がると、

呆然とするアベック男に言った



「放っておいても死ぬだろう。

 でも、もしも、お前に慈悲の心があるなら、

 自力でこいつの息の根を止めてやれ」



サトシの後ろを、先生もついてくる


2人目のチンピラは、

初老の紳士と、子供たちの父親と、

グレーの作業着の3人が取り押さえていた


前述の2名は、アベック男と同じく、

ついてきた避難者の男たちだ


結局、先生がチンピラの身体をしっかりと

押さえつけ、サトシが長ドスでトドメを挿す


こうして、2人目、3人目、4人目.....


最後の5人目に取り掛かかる頃には、

この物流棟に居る大勢の避難者たちは

大パニックになっていた


女性たちの悲鳴が響く....



「許して、許してください!!!

 うぎゃあああああ、辞めてえええ」



最後のチンピラは比較的ガタイが良く、

自分を取り押さえている3人の

グレーの作業着たちを振りほどいた


長ドスを持って近づいてくるサトシに

背を向けて、ダッシュするチンピラ....



「諦めろ、お前たちは負けたんだよ」



サトシはうんざりすると同時に

イライラしていた


チンピラの背中に向けて、

長ドスを投げつける


なまくら刀は、チンピラの背中に突き刺さった



「あぎゃああ、痛ええええ!!!」



大根役者のようなオーバーリアクションで

すっころぶチンピラ。

その後も、背中に長ドスを突き立てながら

手足をバタバタさせて床を滑っている



「こんな、うんざりすることをやってる

 俺の身にもなってくれ!

 頼むから、男らしく覚悟を決めろよ!

 お状際が悪いぞ....」



サトシは、泣き叫ぶチンピラの背中から

長ドスを抜いた。

そのまま、うつ伏せに倒れるチンピラに

馬乗り状態に跨る


周囲の避難者たちの悲鳴や嗚咽をBGMにして、

サトシはまるで”鎌倉武士”のようになった


.....そう、長ドスの刃を真横にして

チンピラのうなじに当てて、

刃の背の部分を両手で押さえたのだ


まさしく、敵の首を取る鎌倉武士そのものだ



「ががが、助けて、くださ....たすけ...」



切れ味の悪いなまくら刀を左右に揺らし、

同時に体重を掛ける


サトシの鼻息は荒かった



///////////////////////////////////////



「君...なんてことを」



初老の工場長は絶句していた。


目の前には、血まみれになった男の姿.....

坊主頭で、額に細長い布を巻いているが、

それも血に濡れている。


そして、片手には切断したチンピラの首を

持っている



「こいつらを生かしておいて

 何のメリットになる?

 食料も限られているんだろ?


 怪我の治療もしてやったら、貴重な物資と

 労働力が無駄になるだけだ


 それとも、さっきの狼藉は笑って忘れて

 お友達にでもなってやるつもりか?」



サトシは、持っている首をポーンと放り投げた



「きゃあああああ!!」「いやああああ!!」



女性たちの悲鳴


生首は、誰も居ない場所にボトンッと落ちた


サトシは、工場長を睨みつけて言った



「いいかね、俺は逆らうつもりはない、

 工場長であるあなたに従うつもりだ。

 

 床に落ちてる2丁の銃、チンピラの死体か

 車を探れば、弾だって見つかるだろう


 それらは、あなたが管理するといい」



工場長は少し落ち着きを取り戻した



「すまない、あの連中が

 私たちに何をしようとしてたのか

 忘れるところだった....


 君たちは勇気をもって抵抗してくれたんだね。

 ありがとう、我々を救ってくれて」



サトシはヘナヘナと床に座り込んだ。

心底疲れているように見える



「ちょっとだけ意見をいいかね?」



工場長は答えた



「どうぞ...」



サトシは言った



「まずは、この工場の設備を使って武器を

 作るんだ。

 俺達は、洋食屋の厨房の機器を使って

 ガス銃を作成した


 ここには、洋食屋の厨房よりも優れた材料や

 工作機械なんて、たんまりとあるだろ?

 高圧ガスとか、まあ色々と。


 即急に武装を始めないといけない


 もう、ああいうチンピラどもなんて

 脅威にしてはいけないんだ。

 我々は、最悪の事態を考慮して

 先に備えておかないと」



サトシは、しばらくハアハアと

息継ぎをしてから続けた



「避難者たちを受け入れるのはいいとして、

 俺達自身、避難者だったしな。

 ....でも、この物流棟に

 銃を持った者を多数、配置して

 常に警戒していなければならない


 ゆくゆくは、近隣の工場同士で協力し合って

 ここら一帯を安全地帯にするんだ。


 病院なんかは、例えリスクを冒してでも

 救う価値のある施設だ。

 その判断も、あなたが下さないとね


 工場長、あなたが道理に叶った道を

 示してくれるのならば、

 皆が、あなたに従ってついていくだろう。

 

 ....ええっと、俺、

 もうそろそろ気絶してもいいかね?」



工場長は、思わず頷いた。


と、瞬時にサトシは気を失って、

座り込んだまま後ろ向きに倒れたのだった


今まで、彼の行動にドン引きして遠巻きだった

仲間たちが駆け寄ってくる。

まずは先生、そしてルミ、ケンタに避難者たち


工場長は周囲を見渡した


まずは、彼を管理棟の医務室に運んで、

チンピラどもの死体を片付けないといけない。

避難者たちも落ち着かせないと。


さらに、即急に武器を作るのだ


そう、彼の言う通りだ


自分たちは、生き残るために

行動を開始しなければならないのだ




 

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