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性犯罪者の物語15

サトシの真正面に対面したルミは、

コートのポケットからハンカチを取り出した。

見るからに女の子が使いそうな、

お洒落な柄のハンカチだ。

それをサトシの顔に近づける



「おいおい、君の大切なハンカチが汚れるよ」



しかし、ルミは黙ってサトシの顔を拭いた


額を濡らしていた血を拭き取ってから、

サトシの顔を覗き込む


サトシの眼前には、

前髪を切り揃えたポニーテールに

そばかすの跡が残る若い女の顔。

しかし、その大きな目はじっと

真剣にサトシの頭部を観察している


ルミは、少し半身を横にずらして

サトシの側頭部を覗き込んでから言った



「頭頂近くの左側面に切り傷が出来てますが

 出血は止まっているみたいです。

 本当に、大事にならなくてよかった」



サトシは、ややモジモジと

目を明後日の方向に反らしながら言った



「ああ、あの時、怒りで我を忘れて

 立ち上がってしまったが.....

 でも、そのおかげで

 バットが勢いをつけて振り下ろされる前に、

 俺の頭に命中したんだろう。


 つまり、十分に加速されてなかった」



間一髪といったところか....

それでも、十分なくらいに強烈な一撃だったが



「あくまでこれは応急処置ですから!

 後で、兄に医療品を持ってこさせます」



ルミはそう言うと、

ハンカチを折りたたんで細長くして

サトシの頭に巻いた


されるがままにじっとしているサトシ


.....こうして、ずっと他人に世話をされながら

過ごしていきたいものだ。

やりたくない事、きつい事は誰かに任せて、

自分はその背後で守られながら

文句だけは一丁前に言う



しかし、自分は”やらなければならない”



「ああ、ありがとうルミちゃん、

 当分はこれで十分だ。


 さて.....と」



そう言うと、急いでルミに背を向ける


これから、恐らくは自分にしか出来ないことを

やらなければならないのだ



・・・・・・・



見上げると、首を絞められたサングラス男が

クレーンに吊り上げられてブラブラとしている


サトシは、先ほど自分が銃撃した3名を

確認した。


床に倒れてモゾモゾと動いている金髪男、

まだ死んではいない


そして、身体を折り曲げたまま

ピクリともしない格闘技経験者



「金玉を撃ち抜かれてショック死でもしたか?

 つまらねえな....」



長ドス男は、うつ伏せに倒れて死んでいる


さらに、2体の死体があってサトシは驚愕した



「これは、先生がやったのか?

 おっかねえ....


 とんでもなくブチ切れてたんだな先生」



2体の死体は、頭部を叩き割られていた。

間違いなく、

バールのようなもので何回も殴打した痕跡だ


躊躇なく全力で叩き割られた頭部からは、

赤いドロリとした液体と共に

もっとおぞましい物体が流れ出ていた


.....まあ、刑務所に入るような人間だから

とは言いたくはないが、やっぱり....


サトシは、誰も聞こえない小声で呟いた



「やっぱり刑務所に入るような奴って、

 普通の人間とは違うスイッチを持ってるよな

 

 でも、先生はこれから

 皆にとって必要な人材になるだろう」



先生によって頭を叩き割られた

2人のうちの1人は、

まだ十代くらいの若い男だった


サトシは、その少年を見下ろしながら言った



「いくら若いとは言え、

 今までロクなことをやってこなかったんだろ?

 そしてこれからも、きっと....

 

 いいか、死んでるだろうがよく聞け


 今まで、お前たちを守ってくれていた法律は、

 これからは消滅してしまうだろう。


 ここの連中が覚悟を決めて武装を始めたとき、

 お前たちのようなクズは

 恐怖に怯えることになるんだ。

 見つかり次第、

 害虫のように駆除されるからな


 ....それは、俺も同じだけど」



次にサトシは、

未だにモゾモゾと動いているレオンの所に

向かった


レオンは、散弾の直撃によって

片腕は引きちぎれ、腹部にも数発食らっていた


うつ伏せでモゾモゾと床を這うレオンと、

そのすぐ側に座り込むサトシ



「よお、お前、確かレイダーなんたらって

 自己紹介してたよな?


 もしかして、お前、弟が居ないか?」



顔を上げるレオン


サトシは上着のポケットからゴソゴソと

何かを取り出した


それは、鞘に入った『KA-BARナイフ』だった


片手に持ったそれを見せ付けると、

レオンは、絞り出すような声で言った


 

「あが、ぐっ、...これはレオトのナイフ...

 テメエ、それをどこから....」



「ああ、やっぱり、あの洋食屋の金髪の兄貴か」



サトシは、笑みを浮かべて続けた



「いいか、このナイフは確かに

 お前の弟のものだ

 

 そんで、お前の弟は俺が殺した。

 あいつの死に様、マジで受けたぜ!


 必死に命乞いして泣き叫んでたよ。

 俺は笑いながら、奪ったこのナイフで

 あいつを執拗に切り刻んでやったぜ」



レオンは、うつ伏せの状態のまま

顔だけを上げていたが、

その顔は怒りで歪み、

口からゴボゴボと血を吐いていた



「テメェ、よくも.....レオトを....

 許さねえ....ぐああぁ...ぁぁ」



サトシは、笑み浮かべたまま、

鞘からケイバーナイフを抜いた



「弟想いだな、感動したぜ!

 まあ、その弟はお前と同じく、

 生きる価値のないゴミだったけどな


 よしっ、即死はさせずに、

 後、十数秒くらいは余命を与えてやろう」



そして、レオンの金髪を掴むと

頭をグイっと持ち上げ、ナイフでスッと

真一文字に首をなぞったのだった



「ごぼぶぇっ」



首から鮮血を吹き出しながら

ビクビクと痙攣するレオン。

そしてサトシは、

ケイバーナイフと鞘を置き去りにして

立ち上がった


見渡すと、生き残りは後5人だ


その生き残ったチンピラ全員が、

数人がかりで床に押さえつけられている


サトシは、死んでいる長ドス男の元に行くと、

床に落ちている長ドスを拾った


それは、

刃渡り60センチ程度の拵えのない刀だ



「トドメを挿すには便利だよな、刃物って」



長ドスを持って

ブツブツと独り言を言うサトシを、

全員が恐怖の眼差しで見つめていた




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