驚愕の事実
〜朝日奈紬〜
「朝日奈、あれ」
霜月が指差した方向を見る。
そこには1組の高校生らしき男女がいた。
そして、男の方はどう見ても天瀬晴翔だった。
「えっ⁉︎ 晴翔って付き合ってるの?」
「分からん。でも、いてもおかしくはないだろ」
まぁ、確かに、晴翔は贔屓目なしに見てもかなりの優良物件だから、彼女がいてもおかしくないけど……
それにしても、彼女と思わしき人、なんか知ってる気がするんだよね。 なんか見慣れているというかなんというか。
でも、後ろ姿しか見えないから誰か分からないな。
晴翔たちは昼食を食べ終えたのだろう。
トレーを持って、席を立つ。
その時、彼女の横顔が見えた。
「えっ⁉︎ うそ、明璃⁉︎」
明璃って、晴翔と付き合ってるの?
霜月も明璃だと気づいたのだろう。驚愕の色が見える。
いや、決めつけは良くない。
もしかしたら、友達として一緒に遊びに来てるのかも。
私だって、霜月と付き合ってないけど、2人きりでショッピングモールに来てるしね。
……いや、ありえないか。私と霜月は幼馴染で仲良いの周知の事実だけど、明璃と晴翔が仲が良いなんて聞いたことがない。
今までの明璃と晴翔の関係って友達の幼馴染で、クラスメイト以上友達未満って感じだったと思う。
それなのに、2人きりで遊びに行ってるとか、秘密裏に付き合ってるとしか思えない。
でも、でも、……
私が明璃のことを見ながら、頭の中で葛藤していると霜月に肩を軽く叩かれた。
〜霜月湊〜
「俺たちの午後の予定、決まったな。晴翔たちの尾行だな」
「えぇぇ!ほ、本気で言ってる?」
「朝日奈だって気になるだろ」
「まぁ……、気になるけど……」
「そうと決まれば俺たちもトレーを返しに行くか。いや、朝日奈は晴翔たちを見失わないように見張っといてくれ。朝日奈の分のトレーは俺が返してくるわ」
俺は朝日奈の前に置いてあったトレーを取ると、席を立ち、トレーを返しに行く。
トレーを返し終え、朝日奈と合流する。
「ねぇ、ほんとにするの?」
おそらく、尾行するのは良心が痛むのだろう。
「恋人かどうか確かめるだけで、デートを邪魔しようってわけじゃないんだ。恋人繋ぎするところでも見たら退散すればいいだろ?」
「まぁ、それならいいかな」
「あっ! 晴翔たち、フードコートから出て行ってるぞ。見失うわけにはいかないから俺たちも行くぞ」
そう言うと、俺は晴翔たちを追う為に、朝日奈の手を引っ張り、歩き出した。
面白ければ、ブックマーク、評価お願いします。