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01 転生は思ってたより獣臭かった。

初作品となります。

あかむと申します。

よろしくお願いします。


 ある日、俺は死んだ。

 まあよくある展開なのだが、交通事故だ。

何かを助けてとか、急に車が突っ込んできたとかそういうんじゃなく完全に俺の不注意からくるものだった。


 まあさすがに我ながらあっけない最後だと思ったりもしたけど、案外後悔ってのは残ってないと思う。

何かを目指していたわけでもなくこれといってやりたいこともなかった。

毎日朝から学校に行って、それほど親しいわけでもないクラスメイトと喋ったり、ふざけあったり。

本当にこれといって特徴がある人生ってわけでもなかった。


 まあそんな凄く平凡な俺だけど、心の中で「死んだらどうなるんだろう?」なんて思って、最近小説やアニメでよく見るような異世界転生みたいな所があったら楽しいだろうなぁなんて思ってた。


 ……。


 マジであった。

 あったのだ。いやマジで。

まさか本当に転生するとは思わなかった。


 車にひかれて全身が痛いと思ったら感覚がだんだんと無くなってきて意識が遠のいていって気づいたら、知らない森の中だもん。めっちゃびっくりした。

 なんかさっきから獣?のような声が聞こえるしチョー怖い。

しかもなんか俺、全裸なんだけど。何もないんだけど。


 異世界転生なんて初めてだからわかんないんだけど、え?全裸なの?そういうもんなの?

よくアニメとかである転生したら最強だったとか、女神がや妖精が導いてくれるとかないの?

めっちゃハズイしなんか肌寒いしこれどうしろっていうの?


 俺は今自分が置かれている状況を整理しようと、とりあえず考えてみたが整理できなかった。

できるわけないよ。

 置かれてる状況に対して俺はすごく理不尽に思いながらもここでこうしてても始まらないし、とにかくこの森を出て、村を探す事に決めた。

とにかく服を着たいのだ。布だけでもいい。とにかく大事なところを隠したい。


「ハァ…ハァ…」


 それから俺はかなりの時間森の中を歩いたが、一向に出られる気がしなかった。

 いくら歩いて見渡しても同じような景色。腹も減ってるし素足で歩いてるためか、足裏もかなり痛いし正直限界だ。

 まさか異世界転生が最初からこんなに大変なんて思いもしてなかった。

今日死んで異世界に来たのにもう既に死亡フラグが立ってるんだが。


 さすがに限界が来た俺は、少し休もうと辺りを見回して寄りかかるのに丁度よさそうな木を見つけて腰を下ろそうとしたその時。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…!」


 森のどこからか雄たけびのような大きな声が聞こえた。


「ビックリした!オイオイなんだよ…」


 俺はすぐに辺りを見回した。

すると後ろのほうから何かが走ってくるのが見えた。

俺は目を凝らして走ってくる奴を確認した。


「なんだあれ…!犬が走ってる!しかも二足歩行で!しかもめっちゃ速いスピードで!」


 その走ってくる奴の外見は犬だった。まんま犬なのだ。

よくある獣人とかそういうんじゃなくまんま犬。見たままの犬。それが二足歩行で走ってくるのだ。流れ星もビックリである。


「みぃぃぃぃぃぃぃつけたぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」


 二足歩行の全力ダッシュ犬は俺に気付いたのかこちらにすごい勢いで走ってきていた。


「くっ…!くるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 捕まったら食われる!咄嗟にそう思った俺は全力で犬から逃げていた。


「待てぇ!!なぜ逃げるのだぁぁぁ!」

「二足歩行の犬が走ってきたら誰だって全力で逃げるだろうがぁぁぁぁ!」

「私は逃げないぞぉぉぉぉ!」

「それはおまえだけだぁぁぁ!」


 走りながらそんなやり取りを数分の間していたが空腹と足の痛みで、すぐに捕まった。


「まったく…。そんな逃げないでもいいじゃないか。」


 終わった。俺の異世界生活は、森の中を全裸で歩き回って二足歩行の犬につかまって食べられて終わりだ。第二の人生もめっちゃしょうもないまま終わってしまった。

 俺はその場で大の字に寝転がり犬に向かって告げた。


「さあ!もうあきらめた!あとは煮るなり焼くなりお前の好きにしろ!でもなるべく痛くないようにお願いします!」

「お前は何を言っているんだ?私はお前を食べる気もないしそんなこと一言も言っていないだろう…。」


 喋る二足歩行の全力ダッシュ犬は、大きなため息をついた。


「私は天よりの使いだ。別の世界から人間が迷い込んだと女神ドッグ様から聞いてお前を導けと言われてお前を探してたんだぞ。なのに私を見るや否や化け物を見るかのように全力で逃げおってからに…。」

「いや誰でも犬が二足歩行で走って追いかけてきたら逃げるだろう…。」


 俺を追いかけてきた二足歩行の犬、仮に名前を”二足歩行の全力ダッシュ犬”と呼ぶことにしたこいつをよく見てみると、普通の柴犬くらいの大きさの見た目は、秋田犬よりの姿をしている。

 俺は、二足歩行の全力ダッシュ犬を見ながら話を続ける。


「それにこういう時って女神が最初に導いてくれるもんじゃないのか?まあ…俺も異世界なんて初めてだから知らないけど…。」

「…まあ、お前の言う通り本来であれば人間がこの世界に転生してくる場合、本来であれば女神ドッグ様のいるドッグラン神殿に送られて転生血統書を発行の元、この世界に送り出されるんだ。」

「ちょっと待て。さっきから聞いてるとなんか犬のような扱いになってないか?転生者。」


 俺は一度、大きく深呼吸をして話を続ける。


「俺も女神とかそういうのはよくわかんないけど女神ドッグっていうからには、まさかその女神もお前みたいな犬なのか?」

「貴様…。次女神ドッグを侮辱するような発言をした場合、ぶっ殺してやる。」


 急に二足歩行の全力ダッシュ犬の声色が低くなり鬼のような形相で睨まれて俺は、背筋が凍った。


「ご…ごめん…なさい…。」


 俺は急に変わった二足歩行の全力ダッシュ犬の態度に恐怖を覚えとっさに謝った。

すると二足歩行の全力ダッシュ犬の顔は元に戻った。


「女神ドッグ様含め神クラスの存在は、我ら雑種天使とは異なる存在。特に女神ドッグ様は神の中でもポメラニアン型の最高クラスの神であるぞ。」


 やっぱ犬じゃねぇか。そう思ったが怖いので心の中にとどめた。


「まあさっきの話に戻るが、本来であればその最高クラスの女神、ドッグ様の元に行くわけだがちょっとした転送障害が起きたのだ。」

「転送障害?」

「そうだ。原因はいまだ不明でな。まあそういうわけでお前はこの森に送り出されてしまったわけだ。」

「なるほど…。この森に飛ばされた理由は分かった。でもなんで俺全裸なんだ?もしかしてそれもなんかの影響なのか?それともこういうのが普通なのか?」


 俺がそう問いかけると二足歩行の全力ダッシュ犬は、首少し傾げ俺にこう言った。


「だから本来はドッグラン神殿に転送されて女神ドッグ様によって雑種犬に転生するんだよ。それで転生した証として転生血統書を貰ってこの世界に送り出されるんだ。」


 ん?聞き間違いだろうか?

こいつ今なんて言った?


「すまないがもう一度言ってくれないか?聞き間違いかもしれないから」

「まったく…。ちゃんと聞いておけ。大事な話をしているんだから。」


 俺は、さっき聞こえてしまった事が空耳であってほしいと思いながら耳を澄ませた。


「だから本来であれば、ドッグラン神殿に送り出される予定だったんだが…。」

「そこじゃない。ドッグラン神殿に行って何されるって言った?」

「いやだからドッグ様によって雑種犬に転生するんだ。その後転生血統書貰ってこの世界に送り出されるんだって。今度は聞いてたか?」

「聞いたけどわかんないからもう一回…。え?何?犬になる?よくわかんないんだけど?なんで犬?」

「なんでってそりゃあ…。ああそうか。そういえばまだ話してなかったな。この世界は犬の世界なんだよ。」

「犬の…世界…?」

「そう。ここは犬が織り成す世界。犬呼んで、ワンダーワールド!!」


 どうやら俺は、とんでもない世界に転生してしまったらしい。






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