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目指す者  作者: ハズカシダリア
1/3

第1話

よろしくお願いします。

修正しました。

『大昔に恐ろしい魔物達、厄災の魔王と呼ばれる魔物達によって多くの命が奪われました。』


『それを見たクレア様は深く傷つきました。』


『クレア様は厄災の魔王を倒すために各種族に勇者と呼ばれる人を生み出しました。』


『勇者達にはクレア様の力を少しだけ与えました。』


『勇者達は全ての魔法を使うことができ、ハルバー様の創った神器を扱えました。』


『しかし、勇者1人では厄災の魔王を倒すことができませんでした。』


『するとそこに、カガという賢者が…』


『「勇者を集めて厄災の魔王を倒そう」』


『と、提案しました。』


『勇者達は賢者の言うとおり、集まって協力しました。』


『協力した勇者達は厄災の魔王を撃ち破ることができ、世界に平和が訪れました。』


『クレア様は勇者達と賢者カガに感謝しました。』


「めでたし、めでたし」

「すごい!カッコいい!!」

「そうね、エイムは勇者様みたいになりたい?」

「うん!…でもお父さんのようなカッコいい"ぼうけんしゃ"にもなう!!」

「ははは、エイム~お父さん嬉しいぞ~!」


 エイムは父に抱き抱えられて嬉しそうにする。


「じゃあそのためにも鍛えないとな!」

「うん!鍛えう!!」

「あらあら、あなた、まだエイムは3才よ。

 もう少し大きくなってからにしてちょうだい。」

「そうだな、俺が3才の頃はまだ字も覚えたてだったしな。

 よし、今日もお勉強するか、エイム!」

「うん!やう~!」

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 それから2年後…。

 エイムとその父クリムは森の中の大きな切り株のある場所で木の剣を振っていた。


「えい!やあ!」ブン…ブン…

「良いぞエイム、その調子だ。」

「やあ!とお!」ブン…ブン…

「よし!今日の素振りは終わり。

 休憩してから家に帰るぞ。」

「ふぅ…は~い」


 エイムは切り株に腰掛けて木の剣を置いて持ってきた水筒の水を飲んだ。


「…ぷはぁ…疲れた~」コテン…

「クルルル?」ポト…


 鳥のような魔物がエイムに近づいて、赤い果実を置いた。


「あ!クル!」

「クルル~」

「お?今日も来たのか、ヘルス…」


(※ヘルスとは

 成長すると最大10m程にもなる鳥型の魔物)


「ヘルスじゃないよ!クルだよ!父さん!」

「ははは、そうだったな、すまんすまん。」

「うん!いいよ!

 それよりクル、これ僕にくれるの?」

「クル~♪」


 クルはエイムの言葉に頷く。

 エイムが赤い果実を手に取って食べると…。


「甘い!」

「おお!カリゴか、良かったなエイム!」

「うん!クルもありがと~」

「クル~クルル♪」

「…お父さん、本当にクルを家に連れて帰ったらダメ?」

「ああ…」

「う~」

「そうすねるな、村長との約束だろ?」

「うん…。」

「…そろそろ帰るか!」

「……分かった!クル、また今度遊ぼうね~」

「クル♪」

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 それから5年後の

 クレア歴1380年 冬春季


 冬季の寒さが和らぎ暖かい風と日の柔らかな光によって春季に移り変わる時、わが家の玄関から父の声が聞こえる…。


「エイム!届いたぞ!」

「!?本当に!?ってうわ!!」


 驚きと嬉しさで椅子から転げ落ちてしまった…いてて……。


「大丈夫?エイム。」

「う…うん、何とか…それより!届いたって!」

「おう!これだ。」


 父さんから手紙を受け取り封を開けて確認する。


『合格通知書』


 貴殿はキラミダ歴1380年度の

 冒険科1年生として迎え入れる。


 クレア異種族合同学園 学園長 ファニス=カガ


「やった!!」

「「おめでとう!エイム!!」」

「うん!ありがとう!!父さん!母さん!」

「今日はお祝いね!」

「そうだな!」


 母さんが急いでお祝いの料理の準備に買い物へ行き、父さんも出掛けていった…。


「クル!」

「クルもありがとね!」


 クルは3年前に成長して親から離れたため父さんと母さん、それと村の村長さんの許可を貰って家族になった。

 今は僕の肩より小さいがこれでも僕が乗っても飛べるからクルの種族ってすごい!


「エイム!!」

「ザダ!!どうしたの?」

「合格したんだよ!!」

「ザダも!やった!!」

「他のみんなも合格したんだって!!エイムもか?」

「うん!もちろん!!」

「良かったぜ!」


 この村には子供が18人居て僕と同じ歳の子供は6人居るのだ……みんな合格して本当に良かった!

 その夜、村はいつもより少しだけ暖かな雰囲気が漂い祝いの声が聞こえた…。

 ・

 ・

 ・

 その2週間後…。


「忘れ物はない?」

「うん!」

「着いたら手紙を送るんだぞ!」

「うん!」

「ウェイズさんに迷惑かけないようにな!」

「うん!分かってるよ。」

「クル~!」

「よし!じゃあ、ウェイズ…エイムとクルのことをよろしくな。」

「もちろんですよ!クリムさんのお子さんは賢いですしクル君も頭がいいですから、私も安心して送らせてもらいます!」

「ウェイズさん、よろしくお願いします。」

「クルクー!」


 ウェイズさんは行商人で季2で村にやって来て、この季になると頻繁に来る。

 そのおかげで、ザダ達はすでに出発しており、僕が最後だ。

 ウェイズさんの荷馬車はウェイズさんを合わせて5人しか乗れず、さらにこの前は商品があまり売れなかったので1人分乗れず僕だけ乗らずにとどまっていた……それにクルも一緒となると結局乗れなかったんだけどね


「じゃあ、荷物はそこに置いてね。」

「はい!…よいしょっと。」

「結構多いね。」

「はい、一応持っていた本と調合用の道具、それと父さんから誕生日プレゼントの剣を持っていこうかと……ダメでしたか?」

「ははは、問題ないよ…じゃあ出発しようか、はっ!」パシッ


 ウェイズさんが手綱をとって馬に指示をすると、荷馬車が動き出した。


「しっかりやるんだぞー!」

「ごはんはしっかり食べるのよー!」

「分かったー!!いってきまーす!!!」


 この日初めて村を出た……もちろん両親と町まで買い物することもあったが1人(クルと一緒)で村を出たのだ…。

 荷馬車が進む度に手を振っていた父さんと母さんの姿が小さくなる……僕も見えなくなるまで手を振り続けた………。

 ・

 ・

 ・

 学園に向かう途中……村を出て5日後…。

 荷馬車が少しだけ整備された森の中の道を通っていると、右側の木々から4、5人出てきた……格好からして冒険者だろうか、怪我をしていて血で防具が汚れていた。


「すまない!そこの行商人!」

「?って、ケルスさん達じゃないか!!どうしたんですか!!」


 ウェイズさんが荷馬車を停めて冒険者に近寄る。


「へへ…少し魔物にな…。」

「喋らないで下さい!トトスさん!!

 というより回復薬はどうしたんですか!?」

「それが…今手持ちになくて、ヨーラのMPもきれちゃってるのよ…。」

「ウェイズさん、急で悪いが回復薬を売ってくれないか?相場の2割増しでいいから!」

「それが今無いんですよ…そうだ!エイム君!」

「何ですか?」

「エイム君は回復薬作れるかい?」

「材料さえあれば一応…。」

「そうか!じゃあ材料を渡すから作ってくれ。」


 そう言ってウェイズさんが荷馬車にある箱からクリア草と回復茸を取り出して渡してきた。


「お願いするよ、エイム君!」

「分かりました。」


 回復薬は村の薬師のタタさんから特別に教えてもらって、何度か作ったことがあるので2分せずに作ることができた。


「できました!」

「ありがとう!エイム君!!トトスさんこれを飲んで!」

「ぐ……苦いが…楽になってきたよ。」

「傷口は既に塞いであるから、問題ないね。

 」

「ありがとう、ウェイズ…助かったよ。」

「いえいえ、回復薬を作ったのはエイム君ですから、エイム君にお礼を言ってください。」

「エイム君?エイム君ってあの"グリフィーの嵐"のクリムさんの子供のエイム君?」

「そうですよ、今年から学園に入学するから送ってるんですよ。」

「は~大きくなったな…エイム君、ありがとうな!」

「はい、どういたしまして!

 …と言っても材料はウェイズさんの物ですから…。」


 しかし、それよりも気になることがあった…。


「…それより、僕…会ったことありました?」

「ああ、と言っても産まれたばかりの頃に1、2回だけだけどね。」

「へ~。」

「エイム君もクリムさん…お父さんのような冒険者になるのかい?」

「はい!」

「そうか!なら、俺達は君のお父さんが所属していた"グリフィーの嵐"に所属していて最近は学園近くを拠点にしているから困ったことがあれば何時でも頼ってくれ!」

「分かりました…ええっと…。」

「そうだったな、俺はこのチームのリーダーのケルスだ、よろしくな。」

「私は副リーダーのヨーラよ、ありがとね」

「私はミミー、で、こっちの怪我してたのがトトス、本当にありがとねエイム君!」


 その後は行く方向が同じなのでウェイズさんが護衛を頼んで回復薬代ををちゃらにした……もちろん僕も賛成した…。

 ・

 ・

 ・

 しばらくすると石造りの壁が見えて、近づくにつれてどんどん高くなっていく…。

 門の前まで来ると荷馬車が大きな門に吸い込まれていき、ウェイズさんの荷馬車も進んでいくと門番の兵士が近づいてきた。


「この荷馬車はどこまで…ってウェイズさんでしたか、今回も乗せてきたんですか?」

「はい、エイム君、荷物を兵士に見せてくれ。」

「分かりました、これです。」


 そう言って荷物を渡すと兵士が少しだけ触って、返した。


「ありがとう少年、荷物を返すよ。」

「はい、お仕事お疲れ様です!」

「フフ…学園都市クレアスにようこそ!」

「じゃあ、ここでお別れだけど大丈夫かい?」

「はい!ここまで送っていただきありがとうございました!」

「では、俺達も報告に行ってくるか。」

「またね~エイム君!」

「はい!ケルスさん達もありがとうございました!!」


 ウェイズさん達と別れて、クルと2人(?)だけになってしまったが、学園の建物は入り口からでもはっきり見えるほど大きな建物だった。


「じゃあ、クル!」

「ク!」

「一緒に行こうか!!」

「クルクー!」

 ・

 ・

 ・

 学園都市クレアスはかなり栄えていて、見たことのない種族ばかりいた。

 学園の門に着くと改めて学園の建物の大きさを実感する…1度受験のために来たが何度見ても大きい……。


「そこの君、入学生かい?」

「あっはい!そうです!」

「じゃあ、合格通知書を見せてくれ。」

「はい!…これです!」

「冒険科か…なら、とりあえず冒険科の寮まで案内しよう。」

「お願いします!」


 門の近くにいた人が案内してくれるようで、それについていくことにした。

 学園内を歩きながら見渡すと1度来た時にはあまり見なかったが広い校庭に様々な種族が遊んだり、話し合っていた…。

 そんな風に周りを見ていると1人の老人が近づいてきた…。


「キュロスさん、そちらの子供は入学生かな?」

「はい!そうです!」

「そうか、そうか、君、名前は?」

「エイムです!こっちはクルです。」

「クルクー♪」

「なるほど、エイムにそちらのヘルスはクルか…

 儂はファニス…ここの校長じゃ。」

「校長!?」

「ファニス校長、また入学生を驚かせないで下さい…。」

「ホッホッホ、すまんのぉ…。

 おっと、またジャスに怒られてしまうわい、では、去らばじゃ『********"テレポート"』」

「!?」

「クルルル!?」


 全然反省する様子もなくファニス校長は何かよく分からない言葉を発して消え去った。


「はぁ…ファニス校長め…。

 …とりあえず、エイム君行くよ。」

「あっはい!」


 よく分からないけど校長って言うだけあってすごい人だ、と思いながらついていく…。

 しばらくすると、大きな建物があった……。


「ここが冒険科の寮さ…。

 エリさーん、居ますかー。」

「…はい……少し待ってくださ~い。

 ……お待たせいたしました…あら?入学生さん?」

「そうですよ、エイム君こちらがここの寮の管理人のエリさん。

 エリさん、この子はエイム君、そしてクル。

 じゃあ、後は頼むね。」

「はい!」

「ありがとうございました、キュロスさん。」

「ははは、これも仕事だからね。

 エイム君、しっかりと学園生活するんだよ。

 困ったことがあれば俺かエリさん…後は先生方に相談するように…じゃあまた。」


 そう言ってキュロスさんは来た道を戻っていった。


「とりあえず、寮の施設を案内するね。」

「お願いします…あ、そういえばここって魔物同伴って良いですか?」

「ええ、構わないわよ、何なら従魔士科もあるから。」

「そうなんですか、良かったな、クル」

「クル~♪」


 寮に入るとそこそこ人が居た……長机と背もたれのない長椅子がある。


「ここが食堂よ、一応校舎にここより広い場所があるから、ほとんど使われてないわね。」

「へ~。」

「ちなみに、寮での料理は私が作るから何時でも言ってね。」

「分かりました。」

「次は裏庭ね。」


 そう言って階段の横の通路を抜けて行くとそこそこ広い庭には洗濯物に占領されていた。


「昼はこうなっているけど朝と夜は空いているからたまに自主トレに使ってね。」

「分かりました。」

「それで、あっちにある建物が大浴場ね。」

「大浴場?」

「要は温かい水浴び場ね、汚れたらちゃんと洗うのよ。」

「へ~…分かりました。」

「じゃあ最後に部屋まで案内するね」

「お願いします。」


 裏庭に出た場所から寮に入って2階、3階と上がっていき、そこそこ広い通路を通って"308号"と書かれた扉をエリさんがノックする。


「カイ君~、カガ君~」

 ガチャ「何ですか?エリさん。」

「あなた達と同じ冒険科の入学生よ。」

「エイムです!こっちはクル!「クルック!」よろしくお願いします!」

「お、おう、俺はカイ!よろしくな!」

「何だ…男か…。」

「当たり前だろが…こいつはカガ。」

「よろしく。」

「エイムです!よろしくお願いします!」

「…エイムは俺らと同じ10歳だよな?」

「え?はい、そうですよ。」

「なら、敬語は要らねえぜ!」

「あ、はい、なるべく気をつけるよ。」

「カイ…これは、癖ってやつだな…まあ、問題ないだろ…。」

「そうだな。」

「じゃあ2人とも、後はお願いね。」

「分かりました。」

「エリさんのためならば!」

「フフ…あ、そういえば、エイム君、これがエイム君の制服ね、それじゃ、お願いね。」


 そう言ってエリさんは帰っていった…。

 その後、カイ君に促されて部屋に入った。

 部屋は洗面所と広い部屋、外に出れる場所と寝室に別れていた。


「とりあえず、荷物を置こうぜ。」

「エイムの場所は……()()だな。」


 カガ君の指を指す方向を見ると扉があった……あれ?()()()()に扉なんかあったかな?


「相変わらず…カガの()()は凄いな…。」

「こんなの()()()な事だぞ。」

「んなわけあるかい……。」


 2人の会話も気になるがとりあえず荷物を置くために扉を開けると先ほど居た部屋より1回り小さめの部屋だった…中には何も置かれておれず窓もなかった。


「広いね…。」

「全くだ…。」

「まだ狭いな…修行せねば…。」

「まだ、狭いのかよ…。」

「?」

「まあいいや…そういえば、エイムは何を持ってきたんだ?」

「…ああ…、まず、本と調合道具、それに剣!」

「おお…中々いい剣だな。」

「調合道具もしっかり手入れされているな。」

「まあね…あ、そういえば、クル用の止まり木が無かったな…どうするか……。」

「?ならば、創るか。」

「「作る?」」

「ほいっと…。」ポンッ


 カガ君の手が一瞬だけ光ると何もないところから丁度いい止まり木が()()()……ええ!?


「なんで!?」

「そうだよな、誰だって驚くよな…」

「こんな丁度いい止まり木見たことない!!」

「そっちかよ!」

「え?」

「いや、え?じゃない、いきなり止まり木が出てきたんだぞ?」

「う~ん、よく分からないけどカガ君が魔法?を使ったことは分かったよ?」

「ああ…いや…うん、そうだな…。」


 実際、ここまでクルの休めそうな止まり木は見たことがなく、いつも自作していたぐらいだ…。


「カガ君!ありがとう!」

「ああ、男に感謝されても嬉しくないが、受け取っておこう。」

「クル、どうだ?」

「クルク~ル♪♪」

「そうか~良いか~」

「エイムは言葉が分かるのか?」

「いや?」

「ありゃりゃ…」

「でも、一緒に暮らしていたら何となく分かるよ」

「そういうものか…」


 キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…


「……今のは?」

「あれは下校の時間を知らせるチャイムだな。」

「そういえば…そろそろ夕食だな。」

「そうですね。」

「そうだな。」

「よし、今日もエリさんのごはんを食べよう!」

「俺はたまには校舎の料理が食いたいな……。」

「何を言うか!

 校舎の料理は男が作ってるじゃないか!!

 食いたいなら1人で行ってこい!!」

「へいへい…エイムはどうする?」

「そうですね……カイ君についていこうかな…。」

「了解…じゃあな、カガ。」

「さっさと食ってくるがいい!」


 カイ君に続いて部屋を出て、そのまま寮を出て校舎に向かった。

 …今度はエリさんの料理を食べてみようかな……。

 ・

 ・

 ・

 校舎の廊下は横に6人位が広がっても余裕で歩けるほど広く、現に何人かの生徒とすれ違った。


「ここが校舎の食堂だ、広いだろ?」

「はい!」


 目の前には向こう側の人が小さく見えるほど広く、人も多い。


「エイム、こっちでまず食券を買う。」

「へ~。」


 そう言ってカイ君は"ブルステーキ丼"と書かれたボタンを押すと紙が出てきた。

 凄いな…僕は"日替わり挑戦"と"魔物用の料理(鳥型)"と書かれたボタンを押すして紙を受けとる。

 何故か、カイ君が驚いている…。


「エイム、それかなり量が多いぞ?大丈夫か?」

「?」

「まあ、いいか…。

 後はこの紙を調理場にいる人に渡せば良いから。」

「分かったよ、お願いします。」

「はいよ!ブルステーキ丼1つと魔物肉の鳥1つと挑戦1つ!」

「了解!」


 紙を渡してしばらくするとカイ君のお盆の上にブルステーキをのせたどんぶりが出てきた。


「そっちの学生さんはこれね。」ドンッ

「ありがとうございます、

 この料理食べてみたかったんですよね。」

「クルルル~♪」


 僕の頼んだ料理は僕の顔より高く盛られたごはん…チャーハンが置かれた。

 本でしか見たことがなかったから楽しみだ…。


「おい…あれって…。」

「まじか……。」

「あんな小柄で食べられるのかよ……。」

「エイム、本当に大丈夫か?」

「?問題ないですよ?」


 正直、思っていた通りの量で安心した。

 クルの方もお盆に置かれたので、カイ君と一緒に空いている席に座る。


「「いただきます。」」

「クルク!」


 チャーハンを付属のスプーンのようなもので掬って口に運ぶ…。


「美味しい!!」

「だろ~、ここの料理人の料理は一級品だからな!」

「クルクル~♪」

「クルも美味しいか!」


 カイ君と話ながら食べ進めていく………。

 ・

 ・

 ・

「ふぅ~…お腹一杯です!」

「ク~♪」

「俺もだぜ……と言うか、食いきったのか…。」


 カイ君が食べ終わると()()()僕とクルが()()()()()()…。


「はい!ちょうどいい量でした!」

「え?」


 ざわ……。

 ?何故か分からないが他の生徒に見られている。

 あ、そうか、早く退かないと、座れないから見ているのか。


「カイ君、早く片付けて席を譲らないと…。」

「え?ああ…そうだな。」


 お盆を持って"返却口"と書かれた板の掛かった場所に置くと、料理人から"挑戦報酬券"と書かれた紙を貰った……どうやら、7つ集めると交換できるらしいが、未だに誰も報酬品を見ていないらしい……。

 そんな事を聞いていると……。


「おい…あれって…シャイン様じゃ。」

「マジかよ…今日も美しい…。」

「隣にいるのはガッド王国の第1王子とリュウズ王国の第1王子じゃねえか…。」


 近くにいた生徒達が入り口を見ながら話しているのが聞こえた…。


「?誰ですか?」

「俺も詳しくないが、

 シャイン様ってのが勇者の一族の長女で、

 他は俺も王子ってことしか知らないな…。」

「勇者って、物語の勇者ですか?」

「たぶんエイムが思っている勇者で合ってると思うぞ。」

「へ~。」


 他の生徒に混じって遠目から見るが、噂されている人達がいる場所だけぽっかり空いている。


「まあ、俺達には関係ない人達かな…。

 寮に戻ろうぜ、エイム。」

「そうなんですか…。」


 勇者さん達を横目に出入り口から出て寮まで戻った。

 ・

 ・

 ・

 ・

 部屋まで戻るとカガ君がソファーにのんびりしていた。


「カガ君は食べ終わったんですか?」

「ああ…帰ったかエイムとカイ…。

 エリさんの料理はうまかったぞ…。」

「そうなんですか…明日、食べようかな。」

「そうするがいい…。」

「そういえばカガはもう体洗ったのか?」

「まだだが…?」

「エイムは風呂は初めてだろ?」

「?はい、その風呂というものは大浴場の事ですか?」

「おう!

 ちょうど良いから全員で入りに行くぞ!」

「分かった…ん…。」

「?なんだよ。」


 カガ君がカイ君に腕を伸ばす。


「起きあげてくれ、次いでにおぶってくれ。」

「何でだよ!それこそ魔法使えよ!」

「……ちっ…仕方ない…。」

「なんでキレられたの!?」

「うるさいぞ…浮け…。」


 カガ君の魔法?によって近くにあったクッションが浮いて、カガ君がそれに捕まって浮いている……魔法って凄いな!


「カガ君の魔法?は凄いね!」

「フフン、当たり前だ…。」

「まあいいや、行くぞー。」


 3人で部屋を出て裏庭方面から出て大浴場に向かう。

 ・

 ・

 ・

 大浴場というだけあって建物もかなり大きく寮と同じかそれ以上に大きかった。

 ちなみに、クルのような魔物は魔法を使って綺麗にするらしい……何で僕達は魔法でしないのだろうか?

 そんな事を考えながら建物に入る…。


「エイム、男湯はこっちだ。」

「へ~、広いですね。」

「ああ、俺も初めて来たときは驚いたぜ。

 服は冒険科用の籠に入れてくれ。」

「分かったよ。」


 貰ったばかりの服を脱いで籠に入れて下着も下着用の籠に入れる。


「じゃあ、入るとするか」

「うん!」


 扉を横に開けると温かい空気が襲ってきた…。

 中に入ると、奥に大きな湖があった。


「エイム、まずこっちで体の汚れを落とすから……とりあえず、今日は俺がしよう。

 座ってくれ。」

「分かった。」


 小さな椅子に座るとカイ君が何かを付けて髪を洗ってくれた……何か花の匂いがする。

 その後はお湯で洗い流してくれた。


「体の方はこの赤色の容器から出るボディーソープをここに掛かってある布に付けて泡立ててから洗うだ。

 ちなみに、こっちの赤色の容器がからだ用でこっちの黒色の容器と白色の容器が髪用で黒色の後に白色を使うんだ。」

「へ~何でそうするの?」

「黒色の容器に入っているシャンプーで髪の汚れを落として白色の容器に入っているリンスで髪の滑りをよくするんだ。」

「へ~。」


 とりあえず、髪はカイ君が洗ってくれたので、からだ用のボディーソープ?と掛かっている布を使って体を洗う。

 このボディーソープも花の匂いがした。


「よし、で最後にあの風呂に入ったら終わりだ。」

「温かそうだね。」

「気持ちいいぞ~。」


 カイ君が風呂に入って肩まで浸かったから、僕も真似して肩まで浸かると……。


「ふぁ~…気持ちいい……。」

「だろ~しかも広いから足も伸ばせる…。」

「本当だ~…。」


 クルにも味わってほしかったが魔物は入浴禁止だから仕方ない…。

 しばらく、浸かって風呂から出て、体の水気をタオルと呼ばれる布で拭いて、冒険科用の僕に合うサイズの制服を着て、外に出て、クルも一緒に帰る……。

 ちなみに、カガ君はずっと黙っていた。

 ・

 ・

 ・

 部屋に戻るとクルも疲れたのか止まり木に止まって眠ってしまった。

 僕も疲れたので寝室に入ってベッドに腰を落とすと、家のベッドより柔らかくてびっくりした。


「凄く柔らかいね!」

「ああ、と言ってもこれでも中の中らしいぞ。」

「これ以上があるんだね!」

「フフ、エイムは今日は色々と初めてばかりだな。」

「うん!村では体験できないことばかりで楽しい!」

「村か…そう言えば、エイムはどこの村出身なんだ?」

「僕はフラム村だよ~。」

「フラム村か…聞いたことないな。

 ちなみに、俺とカガはここの近くのプラウっていう街から来たんだ。」

「プラウ?…ごめんね、僕はここまで来たことが受験の時しかなかったから、この辺りの地理に詳しくないんだ…。」

「ははは、謝ることないぜ。

 それなら今度、プラウに行くか。」

「行ってみたいけど…徒歩だと遠いんじゃないの?」

「まあ、徒歩だと2日、馬車でも1日位だし、少し高いが竜車なら半日位だな。」

「竜車?」

「ああ、その名の通りのドラゴンが運んでくれるんだぜ。」

「凄いね!!」

「そんなもんに乗らんでも、魔法を使えば一瞬だ…。」

「そりゃ、お前のような魔法が使えればの話だろ…。」

「それくらい、1ヵ月修行すれば良いだけだ…。」

「簡単なんだね?」

「エイム、こいつの言っている修行は生ぬるいもんじゃないから止めとけ…。」

「?」

「あれくらいで根をあげるお前が可笑しいだけだ…」

「なんだと!」

「やるか?」

「あわわ…落ち着いて2人とも。」


 その後2人をなだめるのに少し時間を使った……消灯時間のお陰だ……。

 …寝る前に村を出てから書いていた日記を書いてからベッドに入って眠る………。

 旅の疲れからか、目を閉じたら眠ってしまった………。

クレア歴1380年 冬春季 27日 晴れ

今日は父さんが所属していた"グリフィーの嵐"の人と出会った。

魔物に襲われて怪我をしていたので回復薬を作って渡した。

その後は"グリフィーの嵐"の人達にウェイズさんの荷馬車を護衛してもらい、学園都市クレアスに到着して別れた。

都市は広かったけど学園の建物は大きくて、1度行ったことがあるから迷わず着いた。

学園の入り口でキュロスさんに案内してもらいその途中でファニス校長と出会った。

寮に着くとエリさんに寮を案内して貰って、部屋に着くと、新しく友達ができた。

その後は食べたかったチャーハンを沢山食べて、初めてお風呂に入った。

今でも花のいい匂いがする。

ベッドも村のベッドより柔らかくて気持ちよかった。


日記はここで終わっている……。


ちなみに1月から12月は

冬・本冬・冬春・

春・本春・春夏・

夏・本夏・夏秋・

秋・本秋・秋冬

の順番で、1季に30日まであります。

なお、入学式は春の1日からです


1話1話が長いです。

ありがとうございました。

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