夢を見た(新しいスタイルのライブハウス)
夢を見た。
私は仕事帰りに、とあるライブハウスにいつも足を運ぶ。そのライブハウスに出演しているバンドは、往年のヒット曲をカバーしたり、オリジナルなポップ・ロックを演奏したりと色々な試みをしていて、実に私のストライク・ゾーンであり、ガス抜きにサイコーなのである。正直ハマっている。(これ、10ン年くらい前の事実でもあります)
このところ『改装中』となっていたそのライブハウス。
『新装オープン』のメールが届いたので、早速行ってみることにしました。
薄暗い入り口を抜けると、様々な機材が装備されているテーブル群が目に飛び込んできた。
「店長ぉ…、これらは一体何ですか~!?」私が驚きの声を発すると、
「やぁ、いらっしゃい! 如何です? 新しいライブハウス・スタイルの提案ですよ。」
と店長、ご満悦の様子だ。
「あ、新しいって…。」
「名付けて『スポーツ・ジム&ライブ・バー』…ライブ時間の時は演奏を楽しみ、演奏の合間には、各テーブルにしつらえたマシンで、お客様が各々エクササイズで楽しめるという寸法です」
…完っ璧に、逆方向にタイムリーやんけ。
ってか、酒飲みながら筋トレする人なんているんか?
大体、ジムとバーが一体化するだけでも新しい試みなのに、そこにライブハウスのエッセンスが取りこまれているとなると、もはや「試み」というか「冒険」である。第一、マシンが邪魔になってステージが良く見えない。
「演奏に合わせてエクササイズもできるんですよ!『フィジカル』とかが演奏されると、ほら、あのベンチ・プレス、ライト・アップされる仕組みになっています。しかもビートに合わせて、ライトが明滅して利用者のエクササイズをフォローするという画期的なシステムを構築しました♪」
(・・;)
…気付けばまた『改装中』の張り紙が入り口にしてあった。
その後の改装が、正しい改装であることを祈るばかりであった。
ほどなく、『装いも新たにリ・オープン!』のメールがやってきた。よし、行ってみるか。
「や!いらっしゃい! 前回の反省点を踏まえ、今回は『基本に立ち返る』をキーワードにリフォームしました。もう予算は尽きました。如何でしょう?」
「おぉ!」
この度の改装は、ステージを思いっきり広くし、照明とかPAとか、そういったところに力を入れている風だ。基本である。客席は黒を基調としたシックなデザインで、各テーブルが2人ずつ座れるようになっており、そのテーブルは簡単に合体・分解ができて、1人用テーブルになったり、4人テーブルになったりできるようになっている。これもよろしい。
ステージは上座に設置されるのではなく、客席がステージを囲むようにレイアウトされている。そのステージは大きな円卓のようなもので、バンドが演奏している最中、バンド全体がステージの回転によって360度回れるようになっている。つまり、どこに座っているお客さんでも、バンドを正面から裏面から観れる環境だ。(ちょっとキャバレー風じゃないですか?)
折角なので、演奏を聴いて帰ることにした。
さすが新しい舞台ではバンドの皆さんもテンションが上がる。お客さんたちもご満悦のなかでオーラスとなった。バンドの皆さん「Joy to the world」を演奏し始めた。
すると店長が(ニヤリッ)としたかと思うと、無線で何やらコールした。
「お客様、今回の改装の目玉です!」
店長の不敵な笑みが私を不安に駆りたてた。
「!!」
なんと、舞台の袖から、宝塚的なと言おうか、聚楽的なと言おうか、キラキラ・ビキニを身にまとい、ラメラメ帽子を被り、孔雀羽のようなものをお尻に纏ったダンサーがぞろぞろと入ってきて、ステージを埋め尽くした。
で、みんなで両手を上げて「じょぉ~~い、とぅざ、わ~~♪」と振りつけはじめた。
…ゴージャスですな。
ってか、…それでいいんか? 基本ってこうだっけか??
「さぁ、ご一緒に!」
ラメラメ孔雀羽ダンサーの一人がニッコリしながら手を伸ばしてきて、座って呆けてる私の腕を「むんずっ」と掴み、引っ張り上げようとしてきた!
目が覚めた。
深層心理の奥底で、普段着の中にサプライズを求める私らしいよ。