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夢で思い出した小学生の頃の一場面

今朝方、時間にして3時半くらいだったろうか、夢から醒めていきなりフトンから起き上がってしまった。なに、そんなに恐ろしい夢を見たわけでもありません。ただ、物凄く記憶の彼方に跳んでいた懐かしい人の夢を見たから。


 私が小学校に行っていた頃、突然秋田から転校してやってきた子がいました。私の実家は千葉県のとある地方、学校では転校生そのものが物凄く珍しい。それが遠く秋田から転校生がやってきたというのだから、みんなの目は興味深々でその子に向けられた。これがマンガだったりすると、東京のような垢抜けたところから妙に洗練された人物登場で物議をかもすものだが、現実は、やって来る転校生と言うのは都会人とは限りません。田舎から田舎に転校してくるパターンだって充分にある。

私の体験もそういうパターンだった。


 この転校生、Hクンは勉強はそれほどでもないが、スポーツ万能なのでありました。これで話題性は充分だった。今でこそやらなくなってしまったが、当時は鉄棒が結構周りではブームになっていて、「蹴上がり」「コウモリ」は勿論、「巴上がり」までできると羨望の眼差しを受けるのであった。「卵周り」などは10回以上回れなければ有資格者として「認定」を受けることが出来なかった。

放課後は、みんなこぞって練習に励んでいた。私は「巴」以外はできたので、まぁ、「並みの上」辺りにいたような気がする。ところがこの転校生、これら全ての技を転校当初で既にクリアしていたものだったから、それはそれは羨望の眼差しを一気に受けることになった。マット運動に至れば、バク転、バク宙を難無くこなし、ナワトビになれば、二重とび以上に三重とびをもクリアしてしまった。凄いやつだと思いつつ、どこに住んでいるのかと思ったら、結構私の家のすぐ近所ではないか。何とはなしに話しているうちにそれなりの友達のような関係になった。


 彼の家は決して裕福ではなかったと思う。子供の目には単に「Hちゃん」としてしか見ていなかったが、後で冷静に考えると、父ちゃんはいるけど、母ちゃんはいなかったようだ。木造長屋を賃借していたようだが、この家の間取りは今で言えば1K木造と言う環境に親子で住んでいた。僕が遊びに行っても、必ず傍で新聞やテレビを見ている父ちゃんがいた。

窮屈と言うよりもなんか不思議な空間で、それほど居心地は悪く感じなかった。「狭くてごめんねー」などという言葉をかけられたような気もするが、ぜーんぜん気にもならなかったっけ。子供の目には、家の間取り・広さなんてのはどうでもいいことだったんだよね。


 中々いいやつだと思って友達づきあいをしていたが、思いもよらぬ展開があった。僕の親しかった女の子友達Tさんの気持ちを持ってってしまったのだ。極めてフクザツであった。その後、僕は別の僕に興味を示してくれた女の子Oさんと遊ぶようになったが、Hクンは最初からこのOさんに興味があったらしい。三つ巴というか四つ巴というか妙な関係になってしまった…しかも小学生の分際でである。


 こんなこと、久しく忘れきっていたが、今朝方、それら登場人物が当時のままの状態で私の夢の領域に訪問してきたのです。いろいろ思うことはあったけど、時間の経過は淡くも深い郷愁の一場面に集約されてしまったような気がしたなー。

「だからといって、もう一度この夏を最初からやり直すことは出来はしない」とは私のリスペクトする小説家、福永武彦氏のフレーズであるが、まさにそういった不毛の部分と、憧景、それらが一色たになったエモイワレヌ「どきどき虚脱感」でありました。


 当時、僕なりに一生懸命にやりくりしていた人間関係。それが今にどう反映しているんだろうか…なぁんて数分間布団の上で「ぼーっ」と考えた。けど、眠くなってしまったので、また寝入ってしまった。

心の中で呟いたことって、『なんか、俺、いつも人間関係じゃん…』。


でも、二度寝に入る前にこれだけはしっかり思ったよ。


『もう一度、あの連中に会ってみてぇなぁ。』

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