立ち食い寿司屋さんにて
先般、立ち食い寿司で「鯛」を「コングラッチュレーション・フィッシュ」と言い、「タコ」のことを「テンタクル」と言い、「イカ」を「ゲゾラ」と言う板さんのことを書いたけど、比較的その近所にある、別の立ち食い寿司店に行った時、これまた外人さんが来て、店内がざわついたという記録をメモっておきたいです。
いやほんと、外人さん、至る所にいらっしゃる。
インバウンドっちゅうんですかねー、昔は外人さんは寿司を理解できなかったんじゃなかったけか。…今は昔だねー。
凡そお昼も1時を過ぎてしまうと、界隈の昼食屋さんの混み具合はかなり空いてきます。件の立ち食い寿司屋さんも例外ではありません。私が入店した時にはカウンターに一人二人程度しかいなくて、席(立ち位置?)につくなり早々、
「らっしゃい、そんじゃ早速お客さん、先ずは何からいきやしょう!?」
と、板さんが聞いてきた。
「んじゃ、かんぱちと鯛」とお願いする私。
握られたブツを食そうとする間もなく、次のお客さんがやってきて私の隣に並んだ。
見れば、私が体調を崩したりした時によくお世話になっている街医者の先生だ。
「あ、先生こんにちわ!」
「お、どーも!、最近調子は如何ですか?」
「何とかやってますッス、またおかしくなったらお邪魔しますんで、宜しくです。」
とかなんとか二言三言言葉を交わした。
お医者さんが私の隣に並ぶと同時くらいに今度は老夫婦(推定70歳超)がやってきて、そのお医者さんの隣に並んだ。
…と、また同時くらいに今度は何処の国の方か不明だけど間違いなくガイジンと確信できる「おねーさん二人連れ」が御入店あそばされた。
(1時過ぎでこんなに店内が混んでくるというのは珍しいな)
なぁんて思っていたら、間髪入れずに「インテリを装う不良サラリーマン風」の中年ペアが暖簾をくぐってきた。
さあ、店内は繁盛花盛り状態だ。
言うまでもないけど、ここでのポイントは、かのガイジン2人連れの動向です。
予想通りというか何と言うか、この2人組みはカタコト日本語は大丈夫で、「コンニチワ」「アリガトウ」は喋れるけど、それ以上になると非常に怪しい状況です。
しかし、だからと言ってムリにカタコトでも英語を駆使しながらお客様をもてなすなんてことは、殊、こういったお寿司屋さんの板さんに期待してはいけない。
「てやんでぇ」の板さんである。「メイアイヘルプユー?」なんて言うわけない。
相手が誰だろうと「なんにいたしやしょう!」である。
それがわかんねぇ客人には、お引取り願うと言うのが江戸流か!?
ガイジンの女性に順番が回ってきた。
「はいよっ!お待たせ、何にしやすかい?」
ガイジンさんは「トロ」と発音(オーダー?)。
お、寿司ネタをちゃんと言えるではないか!と、感心していた私だが、板さんは、
「トロとそれから?」と尋ねた。
さて、ガイジンさんは「私、何か間違っていたかしら?」とばかりに首をかしげている。2種類オーダーのルールがわかっていないようだ(このお店では、頼むときには2種類をオーダーしなければいけません。すると、1種類につき2貫、都合4貫の寿司がやってくるんです。ポーカーでいうところの2ペアみたいなやつ)。
そしたら、一番端にいたインテリ&不良風サラリーマンがニコニコしながら外人さんに得意気にこう語った。
「ワン・モア・ユー・プレイ・オーケー!?」
あー、それって、多分「オーケー」じゃない。
彼女は「ワンモア?」と言いながら困惑した表情になってきた。
したら、今度は反対隣の老夫婦の爺様が、
「カジーキ!ウマーイ!」と英語風イントネーションで話しかけてしまった。
これは非常に(私が)恥ずかしい。
もはや彼女は真っ白になってしまったに違いない。
とうとう、傍目で見ていたお医者さんが苦笑しながら、ガイジン2人組みの間にやってきて、
「OK, Now let me help you, here..., it's a rule that you order two kinds of foods.」と、助け舟を出してあげたのでした。よかったよかった♪
妙なサラリーマンは苦笑い。
爺様は「ぷりーず、かじーき!」と性懲りもなくニコニコしながら話しかけていた。
爺様ぶれてない。