通販番組って好きだなー
テレビ通販の番組というのは、時々とんでもないものを売っている時がある。
特にインパクトがでかいのは、USAモノの通販だ。
その昔、腹筋にベルトして弱電気を流す『ブテナロック』(あり?名前、違うな・・・何だっけ?)とか、物凄く小さいくせにパワーが尋常じゃない掃除機(CMでは机とかを吸い上げて、いかに強力かを強調していたっけ・・・でも、掃除機で机を吸い上げるやつなんか・・・)とか、激しく切れ味が冴え渡る「包丁一式」(「ナイフ」と言った方がいいかな?・・・だって、食べ物だけでなく俎板とか岩石まで削りとってしまっていたし、ダーツよろしくちょっと離れた柱に投げて差し込んだりしていたもんねー)等、数え上げたら限がないほど暴走している商品が多い。
だから、通常の番組以外に観るとしたら、なんてったってこの通販チャンネルに限るのだ。
この度目の当たりにしてしまったものは、ジューサー・ミキサーの強力なもの。しかも頗るコンパクトで、その破壊力は正に驚愕の一品。もう、ここまで説明しただけで「きたなっ!」って予感がしますでしょ?そう、間違いなくその期待を裏切りませんでした。(でも商品名、忘れちゃいましたけど)
それは概ね、以下のような展開だったと私は観た。
ホームコメディ風の番組宜しく、とても陽気な男性と女性がペアになって先ずは登場。二人ともにっこり「歯を見せながら」の登場だ。会場からは拍手が巻き起こる。
男「やぁ!皆んな、元気かい?」
人懐っこいというか、馴れ馴れしいというか、とにもかくにも男性の方が会場に語りかける。もちろん、吹き替えなのでこれらの台詞は基本的に日本語である。この吹き替え(和訳)も極めてツボを押さえている。「やぁ!」なんてところからして微笑ましいではないか。
女「今日皆さんにご紹介するのは、とっても素敵なミキサーなのよ♪」
男「そうそう、これを見たら欲しくてたまらなくなること決まりだね。そうだろ?ルーシー(仮称)」
女「ええ、もちろんよ!」
このノリ、女性(吹き替え)も負けていない。
思えば、「なのよ」という日本人女性も少なくなったものだな。<我が国
男「よーし、ルーシー。先ずは何からいこうか?」
女「そうね、じゃあパスタのルーを作ってみようかしら。クリームチーズのパスタなんかどう?」
男「おいおい、いきなりそんなに難しいメニューなんか言ってしまって大丈夫かい?」
(む・・・『難しい』ときたか。)
女「任せて。大丈夫よ♪ これさえあれば、何だって出来ちゃうんだから。」
(『何だって出来ちゃう』のか!?・・・いいのか?そんなに大きく出て。)
この会話のテンポ、激しくコテコテなんだけど『これで引き込まれないで何とする!?』みたいな、不思議なパワーがある。もちろん私もTVにガブリ寄りだ。
会場からは、何人かのお客さんがステージに招待され、この実演販売のペアを囲むようにカウンターテーブルに腰掛ける。
さあ、そこでパワーミキサー(仮称)の登場だ。このミキサーのミキシングするモーター部分と、材料を入れるカップとを先ずは外し、カップの方を持ちながら、女性は話し始める。
女「オリーブオイルとパルメザンチーズでしょ、それから…ニンニクを入れて、あ、そうそう、ダイエットを気になさる方のためにも、野菜が必要よね。ニンジンも入れてみましょうか…」
などと言いながら、どっさどさとアイテムを入れる。「入れる」と言うよりも「突っ込む」の方が正しい表現だな。そして、「料理」と言うよりも「工作」。
その手つき、指さばき、スピーディ・かつ・大胆だ。
女「さ、これをパワーミキサーにセットして…っと、後はスイッチを入れるだけよ。」
女性は楽しそうに解説をするが、分量とかの細かい説明は一切割愛。USA素敵。
男「じゃぁ、こっちは彼女が調理している間に、バジルソースのルーも作ってしまおうかな?」
男性の方もエンジン全開だ。「彼女が調理…」ったって、スイッチを入れて動かしているだけなのに、…ま、いっか。
カップにはバジルの他に、何だかわかんないけど色んな野菜とかチーズを突っ込む。ブロッコリーを入れた瞬間、カウンターに座っていたお客さんの一人が、
客A「おいおい、俺はブロッコリーが嫌いなんだよ。」
と、これもまたお約束の突込みだ。
ウキウキしながら男性は応答する。
男「だーいじょうぶさっ。こうやって調理すると、今まで君が苦手だったものでも不思議とイケちゃうようになるんだぜ。それがこいつの凄いところなんだ。見ててご覧…」
スイッチをカチリと入れると、すんごい勢いでモーターが回転し始めた。
『ブオィーーーーーンッ!!(数秒)』
男「・・・ほら、もう出来たよ。ちょっと味見してくれるかな?」
客A「(ごくん!)…ホントだ!これなら大丈夫だ。」
男「っだろ~?」
そうこうしているうちに、女性の方も何だか凄いクリームパスタを完了した。
女「・・・さ! 食べて見て」
いぶかしそうな表情を浮かべながらもお客さん、一口食べるととたんに眼を剥いてオーバーアクションを始めた。
客B「うっそぉ!信じられないわ!美味しいわよ、ほら、貴方も食べて見て」
そうしてその隣のお客さんも口にして、これまた美味しいと奇声を上げる。
(溺レースだな)
ところで、そのパスタ、調味料などはどうしたのだろう??俗に言う「無添加」なのか。
謎は深まる一方だ。
女「ね?凄いでしょ?今まで何時間もかけて作っていたルーなのに、これを使うと僅か数分! しかも違った二種類のルーまで出来ちゃったのよ!」
男「どうだい?これをキッチンの仲間に入れておかないテは無いだろ?」
場内、完璧にミキサーの虜になったところで、ナレーションだ。
ナ「如何ですか?きっと貴方もこの商品にご興味がおありと思います。さぁ、それではこのパワーミキサー(仮称)のお支払方法についてご説明いたしましょう。こんなに多機能なミキサー、とても高い商品だと思いますか?ご心配入りません。月々たったの3,800円の5回払いなんです。」
トータル金額は決して口にしない。それがルールなんだね?
ナ「しかも今回は、付け替え用のカップを3つお付けいたします。このカップの部分は逆さまにすることで、なんと、コップに変身してしまうのです。」
映像は、そのカップをコップとして使っている数人の集まりのパーティー風景を映し出す。みんなドレスアップして、これまたみんなで「白い歯を見せながら」の笑顔をキャッチボールしている。画面全体にはフォギーのキラキラ・フィルターがかかり、とてもイリュージョンな映像だ。各人の手にしているのはミキサーのカップを逆さまにしたやつなのだが…。
ナ「更に今回は、コップの口に装着するカラフルなリングを5色用意いたしました。もうこれなら、誰のコップか迷うことはありませんよね!」
買おうかどうしようか、一瞬迷った。