手乗りのおもちゃの怪
シーンと静まり返った夜、「コトリッ」と音がして、びくっとすることがある。
そういうホラーチックな瞬間は、薄気味悪いものです。
シーンと静まり返っている夜中に何処からともなく笑い声が聞こええてきたらどんな感じがするだろう?
「わはははは!」
だったら、(あー、どこかでヨッパライが吼えているな)程度で済ませるけれど、
「くすくす」
だったら、ぞくっとしちゃうよね。
「うふふ…」
なんてのも、すんごく怖い。
「うえーん、えーん、えーん」
と泣く声ならそれ程でもないけれど、
「…うっ…うっ…う」
とこられたら、鳥肌もんだ。
何でもそうだけど、豪快なのはたとえ静かな夜でも、笑って許せちゃう部分がある。
一方、ささやかな表現の「それ」は頗るいやだ。
で、すべからく「ささやかなのは苦手だな」と勝手に仮定していたんだけど、この度、「そうでもない」展開が起きました。
その昔、結構気に入って買ったおもちゃがありまして。
それって、小さなヒヨコのおもちゃなのです。
そのヒヨコを手に乗せて、なでなでしてあげると「ピヨピヨ」と言うのです。なでなでを何回かやっていると「ごんべさんの赤ちゃんが風邪ひいた~♪」とピヨピヨ語で歌いだすという技があり、時々変則技で「ミ~ン、ミンミンミンミ~」とセミの鳴き声が出たりする事もある。
そのヒヨコのおもちゃ、暫くしたら飽きちゃったので部屋の片隅に置きっぱなしになっちゃいました。お茶だか何だかをこぼして濡らしてしまったこともあります。
そしたら、接触部分がイカれてしまったらしく、手に乗せたり、なでなでしたりしなくても突然「ピヨピヨ」と鳴きだすことが起こるようになったんです。
もうお分かりですね。
シーンと静まりかえった深夜。
「ピヨっ」
とひと鳴き、きました。
ギックーッ!
心臓飛び出すかと思った。
いやー、こわかつた。
ヒヨコの鳴き声がこんなにも人を恐怖のどん底に落とし込むなんて夢にも思わなかったわ。
(南無)