焼き鳥の味っ
よく言われることだけど、素材の味を完璧に楽しむには「塩味」がよろしいということがある。天麩羅にせよ、焼き鳥にせよ、ちょいと「ツウ」ぶっている人が
「味付けはどうしましょう?」と店員さんに聞かれて、
「そりゃ、やっぱり塩にキマっているでしょう!」と応えるお客さんがいる。
実際に塩味で楽しみたい時もあるけれど、本来、お店の実力をチェックする時には塩よりもタレの方がはっきりするんじゃないかと思う私。
ずーっと昔の頃の話しだけれど、家の近所に焼き鳥屋さんが出来たことがあってさ。そのお店は「立ち飲み」とか、「居酒屋」とか言うものなのではなく、単に精肉屋さんが街頭セールの一環として実演販売し始めたもの(コーナー)だった。
まだ小学生だった私は、学校帰りにそのお店の前を通りかかると、どうしてもその「匂い」が気になって仕方なかった。
一本50円。
自分のお小遣いを焼き鳥に落とすことになったのは自然の成り行きだった。
「おじさん、焼き鳥一本ちょうだい」
おじさんは50円玉を受け取ると、正肉をタレに「どぷっ」とつけて、私に渡すんだ。
それをほおばりながら帰り道を歩いてく。。美味かったなー。
ちょっと焦げた感じに、甘めのタレ。あの焼き鳥の記憶は、かなり強烈に残っている。
社会人になってからこっち、居酒屋などで焼き鳥を食べる機会は物凄く多くなったと思う。でも、あの当時の味とは明らかに異なるのだ。
どんなに有名な希少価値の高い地鶏であろうと、どんなに自慢の特性のタレを使用するお店であろうと、幼少期にほおばりながら帰宅したあの焼き鳥の味には程遠いんだ。
決して高級ではないあの店のタレ味。外でやってたんだからゴミなんかも浮いてたと思う。焼き鳥だって焼き過ぎた感じがあって、焦げた苦みまですさまじい記憶になっている。
要するにジャンクでした。
でも、そのジャンクっぷりを再現できてるやつにお目にかかれないんだ。
居酒屋での焼き鳥も確かにうまい。
でも、もう一度あの時の味に遭遇したい。
その焼き鳥ならば、お酒は一切不要だ。
焼き鳥オンリーで食したい。
今までで、一番あの時の味に近いと感じたのは・・・、
あ、そうだ、缶詰の「ホテイの焼き鳥」かもしんない。
それって、思えばラーメンと同じだー。
僕ね、どんなに美味いラーメン屋とかを紹介されても、個人的にはカップスターの醤油味を超えてるものに出くわしたことないのよね。
(ひょっとして、自分がジャンクなんだな)