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言葉の言い間違いとか

 その日、初めてファスト・フード・デビューを果たした先輩は、カウンターのかわいい女の子の「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ!」という必要以上に大きな声と早口に煽られてしまい、ハンバーガーを指差して、


「ハ・ハンバーグ、下さいっ!」と言ってしまった。


「え!?」


と聞き返されたが自分が間違っていることに気が付かなかったので、


「ハ・ハンバーグです。チーズの入ったやつがいいです。」


と一生懸命丁寧語で応えた。

だが、いくら丁寧語でも相手には正しく伝わらない。


「チーズバーガーですねっ!?」


と、無情にもいきなり正しい言い方で聞き返されてしまった。大きな声で。

相手が言い間違えてしまったものを一気に言下に否定し、正答で聞き返すというのは失礼ではないかと私は思う。

かの先輩、そこで初めて自分のオーダーミスに気が付いた。

しらけた目線を浴びて、何とかしてかわしたくなった先輩は、


「そうとも言いますよね?」


と、今度は質問する側に回りこむという作戦に出た。


こうなると女の子は、

「あ、はい…。」


と応えるしかなく、先輩は

「じゃ、それを」


と、オーダーを通すことに成功した。


先輩曰く「立場逆転の法則」というらしい。


これによって、自分のミスを相手に見透かされて、さげすむような視線をこちらに浴びせさせないように出来るらしいのだ。へー。




実は先般、私もちょっと恥ずかしいミスリードがあった。

中華料理店でメニューを見ながら、「あ、これにしよう!」と思って注文したのだが、


「ヤキメシ下さい!」だった。


注文を受けたウェイトレスさんの怪訝そうな表情を見たときに「あ。マズった!」と思った。

(ウェイトレスさんの切り返しの言葉を待って、先輩のあの手法を講じよう!)

と、思ったのだが、何故かそのウェイトレスさんはそのまま黙って厨房方面に行ってしまった。


え!?…ドキドキ…

(あー、いかん、いかんっ!、ここは『チャーハン』と言うべきだった!)

そんなことを思っていたのだが、これはどんなことになるだろう?


数分後、チャーハンを携えて私のテーブルにやってきたウェイトレスさん、

「はい、『ヤキメシ』、お待たせしました。」


と、「コトン」と商品を置いて去っていった。それって、めっちゃ恥ずかしい。

言下に否定して言い直されるよりも、見ようによってはこっちの方がキツイ。

私は黙々と食べてさっさと店を後にした。

750円だった。


麦酒を指して「ムギシュ」と言ったわけではない、

棒棒鶏を「ボウボウドリ」と呼んだわけでもない、

焼売を「ヤキウリ」と読んだわけでもないのだよ、わかっておくれ。



・・・



実はまだある。


ランチを食べようとして、


「ライス下さい!」

と言ってしまったことがある。


言ったその瞬間は、自分が何を言ったのか理解できない状況だった。


「ライスですか?」

ボーイさんは繰り返す。


「ええ、ライス」



暫くして、本当に「ライス」が来てしまった。


「…!」

ここで気付いた。


言い直されるというよりもそのままオーダーが「通った」ケースだね。

…さて、

これをどうケアしたらいいのだろう?

目の前に「ライス」。

何も足さない何も引けないライスが、そこにある。


追加オーダーをしないことにはどうにもならない。これが学生時代だったら、醤油を混ぜて一気に食べることも可能だが、いい加減大人だ、そんな不健康な選択肢はしたくない。私は、臆することのない表情を心がけて、


「あ、すみません、後で餃子もお願いします!」と声を掛けた。

「後で」と言うところがカモフラージュだ。


餃子がきたのは本当に「後」になってしまった。


ご飯が冷めてしまってちょっと悲しかった。



・・・



ところで、知人でも、未だに「エスカレーター」と「エレベーター」を言い間違える人もいるし、「マツキヨ」を何故か「キヨスク」と言ってはばからない人もいる。


日本語と言うか日本人はこの辺の言い間違いに対して寛容であると思う。ので、大概は間違えても聞く側の方でデバックしてくれると言うのがありがたい。


例えば、よく間違えるやつにカレンダーを見ながら「えーっと、5日って何日だっけ?」と聞ことがある。正確には「5日って何曜日だっけ?」だ。

でも、聞く方はそこんところをちゃんと補正して聞き取ってくれるので「月曜日だよ」などと答えてくれる。嬉しい限り。

 しかし、寛容でない日本人が増えてきているのもこれまた事実、世知辛い世の中になっちまったなー。

大半の方々が、今でも寛容な人たちであることを願うです。そうじゃないと、私のようなへんてこりんな成熟をしちまった日本語ユーザーが肩身の狭い思いをしてしまうし。



ついでながら、こんなミスリードも自分にあるのですけど、同感な人っているんじゃないかなー、と思いつつ備忘記録します。



「台風一過」。


アナウンスを聞いていると「台風一家」と聞こえてしまうです

「台風一家の日曜日…」

その家族はどんな日曜日を過ごしたのだろう?




「雨天決行」。


「天候悪化のため欠航が相次いでいます」というニュースに慣れ親しんだせいか、「けっこう」=「中止」の意味合いに解釈してしまいがちだ。

そんなこんなで、昔のある日、学校行事で当日雨になってしまって、しっかり休んだ私。

あとで怒られた。




「肉体疲労時」のCM。


「肉体疲労児」とはどんな子で、その子のためにそういうドリンク剤があるのかと、本気で思った。




「十日市場支店」。


「東海千葉支店」と聞き違えて、「その支店はどういったエリアを所轄しているのだ?」と思ってた。




ヒアリング。とても難易度の高いジャンルだよ、…もしかすると。

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