シングルモルトのウィスキーを飲んだ頃(続き)
前回の続き。
シングルモルトのウィスキーに開眼した私は、その後、会社の近くにある洋酒の安売り店で、勉強方々色んな酒類のウィスキーを買ってみたり、雑誌などで知識を深めようと努力の日々を過ごし始めた。
体験したり、知ってしまうと、いよいよその奥の深さに驚いてしまう。化粧品と同じで、一度に区別できる匂い・味わいってのは、数種類が限界で、それを超えるともう、何でも同じになってしまいがちだ。一日に数酒類をリミットに、数ヶ月「あーでもない、こ-でもない」と、妙にマニアックな世界に埋没した。
そして、最初にお邪魔したあのお店に再び足を運んだのである。今度は味でバーテンさんと会話してやる!・・・ってなわけでして。
「こんにちは・・・というか、こんばんわ」
「あ、いらっしゃい。お久しぶりですね」
「あれ?私のこと、覚えていてくれたんですか?」
「そりゃもう、この間のMさんといらした時の印象は大きかったですもの・・・といいますか、この商売、お客さんの顔を忘れるようでは勤まりません(笑)」
なるほどね、プロを感じたね。
「で、今日は、何になさいますか?」
きた!きたぞ、きたぞ!(ウキウキ♪)
さぁ、自分の今までの修行の見せ所だぁ!
「それじゃ、グレンファークラスにしてみようかな」
「(グレンファークラス)の?」
「えっと、・・・74年」
「を?」
「ストレートで」
「に?」
「チェイサーと、チョコ」
「了解♪」
ふぅ。
バーテンさん、中々突っ込みの受け応えだぁ。
しかも必要最小限度の言葉で聞いてくる辺り、私を楽しみながら試しているとしか思えない。
「チョコの選択は、良いですよ!ふさわしい所を突いてきましたねぇ・・・あ、BGMはごめんなさい、今は他のお客さんもいるので、当たり障りのないジャズですが許してくださいね」
このお店、別に敷居が高いわけでもなく、かなり気さくに入る事が可能である。お値段的にもそれ程高いわけでもなかったと思う。ただ、「知っている」お客に遭遇すると、バーテンさんは全力モードにシフトすると言うのだ。「こっちはこれで商売しているのだから、その件でお客さんに舐められたくない」と言う事なのだそうである。努力家さんなのだ。だから私も嬉しくなってしまう。
たまに茶茶も入れたくなる。
その日はこんな茶茶を入れてみた。
今日は会社であまりいい感じに仕事が出来なかったので、ちょいとブルー入っているんですよ。クールダウンしつつ、いい気分になれるようなモノはないでしょうかね。
ってな感じで・・・(笑)。
そしたらバーテンさん、こんな風に言いました。
「クセのあるものはお嫌いですか?」
「へ?」
「もしよろしければ、ちょっと引っ掛けのきついアルコールで、リフレッシュって言うのもアリかな?・・・なんてね。そうじゃなければ、すっきりレギュラーにダルモア辺りで落ち着くものいいかと。」
「じゃ、じゃぁ、クセのある方で・・・」
暫くして持ってこられたのは、ボウモアのような種類のそれだった。イングランドの山側ではなくて、海側の醸造所で作られたものだそうである。名前は忘れてしまったが、味は強烈に覚えている。
輪ゴム系の香りだった。
むせ返るような喉越しだった。
確かに全てが吹っ飛んでしまうようなインパクトがあった。
でも、二度と口にしたいとは思わない。
つまりは、色んな味があるということですね。
シングルモルト・・・最終的に自分が落ち着いたのは、ダルモアでした。でも、今は飲みません。
何故って、思いっきり日本酒党になっちゃったんだもの
(^^;