夢を見た(フライング・ブイ guitar教室)
ギター弾く方はご存じだと思いますが、フライング・ブイという形状のギターがあります。ギターのボディ部分が「V」のフォルムをしてるのよね。(全体的には【>-→】みたいな形ね)
私、これ、魚の尻尾を模したギター程度に思ってたんだけど、どうも違うらしい。ごめんねギブソン。
『ギターはひょうたん型(or女性フォルム)でなければならん』という既成概念をぶち壊し、『とにかくステージ映えするギターを作るべ』と、ギブソン社が考案したフライング・ブイ。座って演奏することすら許さない奇抜なデザインはインパクトが大きい。買わんけど。。
それはそうと、フライング・ブイな夢を見た。
「フライング・ブイで演奏する為のギター教室開講」
そんなチラシがドアに挟まってました。目が釘付けになったのは言うまでもありません。
ギターはあんまり弾かない私だけど、そんなマニアックなギター教室なら覗いてみないわけにはいかない。私はさっさと見学に伺うことにしました。
そこは駅前ビルの地下フロア。
『メタル以外は軟弱音楽である』
正面ホワイトボードには、そんな標語が大きく書き込まれており、端っこの方に「そうだ!」と小さく落書きもされている。
インストラクターはとある大人の女性。レイバンのサングラス、身体にぴったりくっつくような革ジャン(黒)を纏い、当然のようにフライング・ブイを肩からぶら下げて立っている。ムチは持っていない。
「ちょっと見学していっていいですか?」
「あらどうぞ、そちらのアンプの脇の椅子にでも座ってご覧になってって下さいね。」
私の問いかけに、服装とはかなり異なる物腰の柔っこい対応です。
と、そこに今日がレッスン初日という若い女の子がやって来た。まだ20歳前だな。80年代アイドル系だ。明らかに訪れるべき場所を間違えてんじゃないか?と思われたが、どうやらその子はマイケル・シェンカーのファンでギターを習いたいらしい。しかもフライング・ブイで。何故だ。何故フリフリフリルのワンピース着てるんだ。
インストラクターは弾き方よりも先ずカタチから入ることの重要性を説く。
ギターをいかにして脚に挟み込み、前傾姿勢をとるか。これが上手くいかないようではフライング・ブイ奏者失格である。
新人の女の子は頑張るも中々上手くいかず、戸惑っている。それを見かねてインストラクターが吼えた。
「だめだめっ!ちっ、なにやってんの!そんなことじゃマイケル先生に嫌われるよ!」
インストラクターの厳しい指導を受けている新人女の子を見てると、思わず落涙しそうになる。
ふと、入り口付近をみると、マイケル・シェンカー先生本人が腕を組み、ドアにもたれかかるようにして、その光景を遠巻きにニヤニヤして見てるではないか。
(え!?本人!?)
私の驚きを他所に、インストラクターはマイケル・シェンカー先生に向かって挨拶をした。
「あ、先生、お見苦しいところをお見せいたしました。早急に調教いたしますので!ほら、先生が見てるんだから、しっかりなさい(ぴしっ!)」
(え、ぴし?調教?)
「ダスイストオゥケー、レーラー…」なんか、そんな感じで言いながらほくそ笑むマイケル・シェンカー先生。
インストラクターは、やおらくるりと向きを変え、今度は私に言い寄る。
「さ、今度は貴方の番ですよ!」
(え!?)
「貴方のリクエストは何?」
「え?え?えーっと、なんか弾かなきゃならんのか?えーっと、えーっと…」
思案している私をマイケル・シェンカー先生は首をちょっとかしげながら凝視している。怖い。
マイケル・シェンカーって、ちょっと怖い顔つきですよね。眼が窪んでて、ちょっと三白眼的な青い瞳で。ぎょろりとタレ目で。そこだけ切り取るとなんか、ラルクのハイドに似ている気もする。
こういう顔つきのスターってかっこいいよね。でも、お近づきになりたい!とは思う一方で、近づかれたくない!とも思う。彼らはなんかよくわかんないものを持ってる。
どうしような、なんか曲名言わないといけないのかな?どうしようどうしよう?
「ブ、ブラック・ナイト!?」私の口をついて出てきた曲名は、あろうことかマイケル・シェンカー先生とは縁のない曲であった。やっちまった感で心拍数が上がる。
「パープー?」と眉間にしわ寄せてこっちを睨んでくるマイケル・シェンカー。
彼は、携えてる自身のフライング・ブイのネックを握り、親指でヘッド部分を「くっ」と抜き動かすと、ネックの中から日本刀が出てきた。凶器!
ぎょっとして、目が覚めた。
寝汗びっしょりだった。
(違うんだ、そうじゃないんだ。私が欲しい楽器はそんなんじゃないんだ。。)