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人形使いハルカ  作者: いつき
無職のハルカ
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ボロボロさん1

 鍛冶屋を出て、露天商の通りに戻り、町の中央を目指す。何回考えても、前に職業案内所の場所に行ったことがある気がする。しかし、元の建物は何だったのか。建物が変わるくらいよくあるが、何か引っかかる気がする。思い出そうとすればするほど全く思い出せない。


 そうこうしているうちに、職業案内所に着いてしまった。

 出来たばかりらしい、茶色の石で出来た塀が見える。建物自体はそこそこ頑丈そうで壊れにくそうで少し古い感じがする。高さも四階くらいはあるだろうか。敷地もそこそこ広い。

 広さと立地を考えると前までは何か重要な役割をしていた建物だと思うのだけど……。


 その建物の前には白いテントが複数立っている。机を挟んで案内所の職員と思しき人と住人達が相談している。中の建物に人が入りきらないくらいに相談者が殺到しているのだろうか。


「ひゃっ」


 肩に手を置かれたようでほんの少し衝撃を感じた。

 私の肩を掴んでいたのは私よりも少しだけ年上の男性だった。肩につかないくらいのさらさらの黒髪が一番最初に目に入った。綺麗な髪を引き立てるような真っ白――いや、病的とまで言ったほうがいいくらい白い肌と目の下には酷い隈が見える。私の中で職業案内所の人という職業が即座に消えた。

 私の肩に手を置いたのとは逆の手にはフィラムが持っていた赤い本を抱えている。病的な彼がこの本を持っていると、本がよろしくないアイテムにしか見えない。何か怪しい儀式でも始めそうな気がしてしまう。


「御嬢さんも仕事の相談に来たのかな? 場所がないので、とりあえずそこのテントで話を聞くけど」

「あ……お願いします」


 彼に言われるままにテントの中の空いている椅子に案内された。

 木の板とパイプで作られた少し低めの椅子――これって学校の椅子じゃないのかな。私が座っているところだけ、学校の椅子だった。まともに相手してもらえそうにないかもしれない。私だって立派に働ける年齢なのだけれど。

 お金に潤沢な職場ではないのかもしれない。そう思うと益々、職業案内所で勤務したいとは思えなくなる。

 薄いけれど懐かしいような木のぬくもりを感じる椅子に腰を掛けた。


2019/08/20 文章を修正しました。

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