職さがし2
「国っていったら騎士とかが推奨されている職じゃないの?」
「保証はそこそこだが、資格試験が難しくなると言われているんだと。国がそこまで推奨している様子はないらしい」
お金だけ目当てで実力もない輩に国を任せられるわけもない。そりゃそうか。とりあえず、私には体力もないし、騎士の類は私には無理だ。
「もうすぐ働かなきゃいけないけど、ぬいぐるみでも作って働くつもりだった。だから今回のタイミングで国から保証のない職をやるのは難しい気がして」
国で定められているのは十六歳から働くということだけだ。その前から働く分には問題はないが、一定の場所に住んでいる場合十六歳から働くことを義務付けられている。働いているから市民権を得ることができると前に聞いたことがある。
ウィルは、少し前から鍛冶屋で働きたいと親方に頼み込んで働かせてもらっている。鍛冶屋はというと、国にとっては有益だと判断されるらしく、働いて国から保証される職だった。なかなか悪くない待遇を受けることができるらしい。このタイミングで鍛冶屋に弟子入りしていたのでウィルは運が良かったと思う。将来もある程度は約束されている。
「手先が器用だったら、ぬいぐるみじゃなくても細工師とかはどうなんだ? 悪くはないと思うけど」
「私はなるべくぬいぐるみを作りたいから、細工なんてやっていたらぬいぐるみを作る時間なんて無くなってしまうと思う」
「それを言ってしまうとどの仕事も時間ないんじゃないの?」
「やっぱり……そうだよね」
そう、都合のいい事なんて世の中にあるわけがない。もしかすると先ほど聞いた祈祷師でもやれば、ぬいぐるみを作る時間も作れるかもしれない。毎日ずっと祈りっぱなしというわけもないはずだ。決まった時間しか働かなくてもいい職業だったりするのではないだろうか。
祈祷師ハルカって少しかっこよく聞こえたりしないだろうか。
「あーハルカじゃん。ハルカもうちに弟子入りしにきたの?」
カウンターの奥から、親方の娘さん――フィラムが出てきた。
顔が少しすすで汚れているが、背中まである綺麗な茶色の髪は三つ編みで一つにまとめてあり、いつも通りの明るい笑顔で出迎えてくれた。
「いや、違うけど……」
「弟子入りさせてくれって人がそこそこ多くてさ、お父さん暫く表に出てこないと思うよ。暫くは弟子取らないってさ」
昨日の今日だ。弟子入りさせてくれ事件、いや違う、国のために働け事件もあったから弟子入りしたい人も多いだろう。
私は気分転換に外に出たつもりだったが、鍛冶屋の弟子入りは……そこまで考えていなかった。うん。あわよくばという気持ちがないと言えば全くなかったわけではない。
金の亡者っぽくなりつつある思考回路だけは……少しだけ打ち直してほしい。
私の思ったことが分かったのかウィルがハンマーを少し持ち上げて、首を傾げた。
いや、違う。変なことを考えていないはずだから、そのハンマーは降ろしてください。
2019/08/20 文章を修正しました。主人公の思考回路を修正