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新生活

「お…き……おと…」


 体を揺すられる。なんだか久しぶりの感覚だ。でも、まだ夢の世界に浸っていたいんだ。放っておいてくれ…。


 気持ちよく寝ているところを起こされるのはいつになってもいい気分にはなれない。昔は寝起きが悪いって親に言われていたっけ。


「起きて!お父さん!」


 お父さん。


 呼ばれ慣れないその単語に頭が徐々に覚醒していく。


 そういえば、俺の家に未来から娘が来たんだ。夢じゃなかったんだな……。伸びをしながらゆっくりと体を起こす。


「おはようございます。お父さん」


「ああ、おはよう」


「本当はご飯作ってあげたかったんだけど、冷蔵庫になにもなくって……」


 そりゃ食事なんてカップ麺オンリーだからあるわけがない。


 ふと辺りを見回すと、部屋が綺麗になっているのに気付いた。


「あれ、部屋掃除してくれたのか?」


「すごく汚かったからね。綺麗なところで生活していたらきっと気分も明るくなっていくよ」


 そんなものなのだろうか。まあ、足の踏み場が出来たことには感謝しなければいけない。


「ありがとな、未紀」


「えへへ、どういたしまして」


 照れの含んだ笑顔を向けてくる。きっと彼女が出来たらこんな感じなんだろうな。なんだかリア充どもが妬ましく思えてきた。いや、俺も未来には結婚するのだからこんな幸せを味わっているんだ。約束された未来。明るい未来。心も明るくなってきたような気がした。


「お父さん、カップ麺ばかりじゃ体に悪いよ。これから買い物にいこ!ご飯なら私が作るから!」


「うーん、そうだなあ」


新妻のようなことを言う娘。しかし、この時あることに気が付いた。すでに今月の仕送りはゲームの課金に使ってしまい、もう使えるお金が残っていない。


「実は今月のお金、もうないんだ……」


「えええ!お父さん、一体何に使ったの?まだ今月2週間もあるんだよ!」


「えっと……それは……。まぁ……無いものは無いんだ。で、未紀はお金持ってきていないのか?」


「未来ではキャッシュレスが普通だから現金は持っていないのよ。それに未来の通貨は今の時代には使えないからね」


「へえ、時代も変わったもんだね。でもカップ麺なら沢山あるし今月いっぱいはこれで凌ごう」


「むー、私カップ麺好きじゃない」


 そう言って頬を膨らませる。意外とわがままっ子なんだろうか。


「好き嫌いはよくないぞ、娘よ。」


「こんなジャンクフード、好きな方が良く無いよ」


 言うじゃないか、我が娘よ。だが娘にお説教されるようじゃだめだ。


「いいか?もし大きな自然災害が起こったりしたらこんなものでも食べなければならないんだ。それにすぐ復興して食品が流通するとも限らない。だからこれを訓練と思って食べるんだ」


「そ、それもそうだね。分かった……」


 未紀は顔を伏せ、なんと納得してしまった。自分でも何言ってるんだって思いながら言ったのに。ちょろいぞ、我が娘よ。


 こうして見るとやっぱりまだ子供なんだなって思う。いくら未来から来たとは言え、人生経験はこちらの方が上なんだ。何も経験なんてしてないで引きこもっているけどこっちの方が上なんだ。お父さんの貫禄を見せてやる!



「あ、そういえば今日は大学ないの?」


「きょ、今日は……休み……」


 もちろん嘘。 痛いところを突いてきた。そもそもニートになるのを防ぐために来たのだから大学にも通わせる気なんだ。すっかり忘れていた……。


 幸せな未来が待っているとはいえ、その過程には今まで逃げていたものに立ち向かわなければならない訳で……。ああ、憂鬱になってきた。

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