王子様
来ちゃった、どうしよ。
「男の部屋は何回めですか」
からかってるだろ、こいつ。
「いや、部屋なんて来ない、いつもはホテルで。
って違くて。ずっと聞きたかったことがあるんだけど。」
「何でしょう。」
いちいち笑顔に胸が熱くなるのが悔しい。
「何で、私の名前知っているの?それとあんたの名前は?」
「よく見かけるから覚えてしまった、それだけ。名前は、香川守。」
「彼女とかいないわけ、女なんて家にあげちゃって。」
ふふ、と笑われた。
「俺のことが気になるか。」
やめろ、やめてくれ。
もう恋なんてしないんだ。
なのに、好きになりそうな自分が嫌で嫌で泣きそうだ。
「きゃっ」
急に宙に浮いて気がつくとベッドの上だった。
「急に何すのよ」
「お前、このまま襲われたら受け入れるだろ。」
否定なんてできるわけがなかった。
「やめろよ、もう。自分の体くらい大事にしろよ。好きじゃないなら、はっきり断れ。男の家にノコノコ上がるな。最後に辛くなるのは自分だって、知ってるだろ。」
気がつくとたまに強い口調になる、そういうこいつもかっこいい。
認めてしまおうか、いや、まだ認めない。
でも、本当はわかってる。
終わった後の虚無感も結局捨ててしまう罪悪感も辛さも全部味わって来た。
それでもいつか会えるであろう王子様を夢見て来たんだ。
今更やめて、もう夢中になって何も見えなくなるのは怖いの。
「ほっといてよ。もう私にはこんな生き方しか出来ないの。どうせあんたもこっち側何でしょ。」
「そうだよ、だから言ってる。」
「意味わかんない。」
「一緒に本気で恋をしてみないか、と言っている。」
本気で恋、か
「何、告白?」
「あぁそうだ。」
苦しくて、嬉しくて、どこか切なくて、ドキドキして。
またそんな恋愛をするというのか。
本当の私を見てもまだ好きでいてくれる人がいるんだ。
でも、
「気持ちだけ受け取っとくよ、私にはまだ無理だから。」
「無理じゃない。」
「無理よ。」
「無理じゃない。」
「無理、今更恋なんてできない。」
彼は一呼吸置いて真剣な顔で告げた。
「俺が本気にさせてやる。」