運命の扉
「で、どうするのよ」
差し迫った顔で聞いて来たのは安藤優子で
「こういうのは時間かかるもんね」
と優しく鎮めようとしてくれたのが小野澤璃子。
女子だけの時は基本この3人だ。
告白されたことを伝えたら身を乗り出して色々聞いて来た。
いちいち報告するのかって聞きたいのかな。
当たり前じゃない、女子だもの。
いつもならこの報告は彼氏ができたよ報告になる。
「付き合うつもりがないならはっきり言わないとダメだよ。」
優子の言う通りなんだけど、勇気と理由がない。
「そう言う目で見たことがないとは言ったもん。」
「これからも見るつもりないって言わないと。」
「そんな勇気ございませーん。」
「まぁまぁ2人とも。」
璃子がいるととても穏やかな気持ちになるなと思うんだ。
まるでちゅんちゅんと鳴くアレみたいにね。
「でも、小春ちゃん、断るのははっきりと、だよ。」
「うぅ、分かってるよ。」
そう決めたものの、勇気がまだなくて私にはハードルが高すぎる。
悩んでいるうちに男子が寄って来たからその話は自然と終わって今日はどこに行こうかと話していた。
私は迷った挙句、距離を置く、と言う選択をすることにした。
「ごめんね、今日は体調悪いから帰るね」
みんな深く聞いて来ることもなく送り出して来てくれたが優子からはすかさず『逃げてどうするのよ』
と連絡が来た。
毎週こんな嘘つくわけにもいかないしな、困ったもんだ。
漫画でも読んで考えるか。
と言うことで本屋へ到着した。
「何かお探しの本はありますか」
まさか、この声は。
ここでも働いているのか、と思って振り返ると私服の彼がいた。
「驚かさないでよ。」
「それは失礼。いつもの友達がいなかったから声をかけました。まさかまだ告白を断り切っていなくて逃げている。なんてことありませんよね。」
どこまでお見通しなんだ。
「この後お茶でもいかがですか」
静まれ、静まれ。
このドキドキは恋じゃない。
もう恋はしない。
「でも、今日は。」
行きたい気持ちを必死に抑えた。
「忘れていました。体調悪かったんでしたね。」
「ストーカーなの?」
「違いますよ、ではまた。」
行かないで。
行かないでよ。
「家、来ますか?」
「はい。」
彼の家の扉の音はかなり大きい音だったはずなのに、胸の高鳴る音で遠くに感じた。