あの頃
隠しきれないほど彼にときめいているを感じながら、最近読んでいなかった少女漫画を読んでみることにした。
「私、○○くんが好きすぎて辛いの」
「デートが楽しみすぎて眠れない」
「キスなんて恥ずかしい」
そんな時期が私にもあったんだ、誰も信じてくれなくても私にもあったんだよ。
思い出したくなくても、
この部屋にいるだけで、あの公園に行くだけで、ホームに立っているだけで。
一目惚れだった。なんでだろ、何年経っても忘れられない。
あんなに惹かれたのは初めてだった。
後にも先にもきっと彼だけなんだって思える。
勇気を出して手紙を渡した。
そして、初めての彼氏ができたんだ。
その時は嬉しくて、何も見えなくて本当に好きで気づけなかった。
遊ばれていることに。
別れを告げられるときも適当で、いきなり音信不通で結局私に「別れよう」と言わせるようなやつだった。
今から考えればどう考えてもおかしかったのに何にもわからなかった。
それでも高校生の間はずっと諦めきれずに好きでいた。
その気持ちを何度も何度も利用されてそういう関係だって分かってても分かっていないふりをする若さが私にはあったんだ。
利用されてるのに体を重ねることが嬉しくて、どんなに友達に止められてもやめなかった。
今だからわかる。
それが今の私を作った全て。
昔のあいつはきっと私のことなんて1ミリも思い出さないし、今度会っても何食わぬ顔で「久しぶり」と言って来るだろう。
それでも私は嬉しくなる。
会えたことに、話しかけてくれたことに。
しょうがないじゃん、好きだったんだよ。
そう言い切れるほど好きになったことがあったんだなと思い返して
今日の出来事に対する謝りメールを宇佐美へ打った。
好感度を保つために。