本気で恋、してみませんか?
丸く収まったようで何も収まっていないので、香川に美奈子さんのことを尋ねることにした。
「ちょっと待って、美奈子さんは何なの?」
まるで忘れていたかのような顔をしていた。
「今から病室に行こう。璃子、先に帰ってて。」
「わかった。」
私たちの気持ちは通じ合った。
なのに、まだ不安でいっぱいで美奈子さんは香川の何なのか分からなくて真実を聞くのも怖かった。
「あら、小春ちゃん。話が終わったようね。」
「いえ、まだ終わってません。」
「香川から全部は聞いてないのね。いいわ、ここからは私が話すわ。」
美奈子さんは静かに語り始めた。
「4年前だったかしらね、私が突然倒れたのは。まぁ大した病気じゃなくてただの疲労なんだけどね、この子ったら心配しちゃって少しの入院なのに急いで花束抱えてやって来たのよ。
私が思うにその時じゃないかしら、あなたに一目惚れしたのは。」
え?美奈子さん何言ってるのかな。4年前ってまだ私高校生だった気がするんだけどな。
「それで急に歌詞作って持って来たの。私は何も言わなかったけどすぐに分かったわ。一目惚れしたんだなって。すぐに問い詰めたらかわいそうだったから歌が売れてから聞いたらやっぱり一目惚れで4年の時を経て彼が楽しそうに過ごしてるもんだから聞いたら自分の妹があの子と友達になったからチャンスだとか言ってはしゃいでるのよ、可愛いでしょ。」
歌?え?何々?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。歌ってなんですか?」
「本当に何も聞いてないのね、私、歌手のLilyなんだけど分かるかしら?」
「Lilyは分かるのですが、美奈子さんだとは。」
「そりゃ仕方ないな。二人とも顔出してないし。」
と突然香川が会話に入って来た。
「二人?え?どういうこと?」
「私が曲作って香川が詞を書いて、私が歌ってるけど顔は出してないのよ。」
たしかにLilyは顔出しはしてない。
ということで、話は解決をした。
「ねぇ、香川なんでうちの大学にいたの?」
「あぁ、あの日は講師として呼ばれたからだな。そんなことよりさ、いつまで香川って呼ぶ気なの?」
「そうだったんだ。いや、だって本当はさん付けしなきゃいけないくらいだし。」
「もういいだろ。恋人なんだし。」
正式に言われた言葉にやっと、やっとこれで恋人になれる、嬉しさと安心と解放感で涙が止まらなかった。
「え、なんで泣くんだよ。」
「どんな気持ちで過ごして来たと思ってるの?」
「今、幸せか?」
「幸せだよ。守。」
「俺が幸せにするから。小春。」
本気で恋するなんてもう絶対にないと思ってた。
付き合ってみて、まぁ気が合うならラッキーみたいな感じだったの。でも、こんなに愛おしくて切なくて幸せな恋が出来るなんて思ってもみなかった。
本気で恋をするということは辛いけど、幸せになることなんて保証もされてないけど、それでも
本気で恋、してみませんか?
次回は番外編のようなものなので、ストーリーはこれでおしまいです。
ありがとう!




