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奪還せよ、全ては仲間の為に

あけましておめでとうございます!

今年も本作品と他の作品もよろしくお願いします!

 人々が通る大通りをコロン達は歩いていた。


 余りに堂々と歩く一団に周囲の人はミラニューロテナガザルを率いてるのもあってサーカス団か何かだと思った。

 しかし、コロンから発せられる有無を言わさぬ圧にそんなのではないとそそくさと退散していく。


 やがてコロン達は港湾都市にいくつかある区域を分ける門の前に着いた。この先にオリビアを捕らえた《サルヴァトーレ》の首魁(ドン)・モンティーズがいる。ご丁寧に地図にそう記されていた。

 その前にはやたらと身なりの整った男達がいた。


「君達が《いるかさん号》の船員達だな?」

「……誰だ」

「我々は《サルヴァトーレ》の者だ。モンティーズ様の指示により君達を迎えにきた」


 《サルヴァトーレ》の名を聞いた時、コロンの怒りは更に増した。

 男はコロンの怒りに全く気づく事なく語りかける。

 いや、気付いていようが此方には手を出せないと踏んでいるのだ。


「まぁ、災難だったなぁ。しかし、賢明でもある。所詮女、この先も航海を続けようと無事でいられる保障はない。ならば、こうして下に着くのが賢い選択だ」


 コロンの肩に身なりの良い男が手を置く。


「所詮、女が海に出るなんて無謀だったのだ」


 嘲笑を浮かべる《サルヴァトーレ》の構成員達。


「あん? グハァッ!!?」


 だが次の瞬間、コロンに手を置いた男が殴り飛ばされた事でその笑い声を止めた。


「な、なんのつもりだ!? ボスにくだりに来たのではないのか!?」

「無論、お前らのボスの元に行くとも。だがそれはお前達に連れられてじゃない。私達自身の足でだ!!」


 武器を構えるコロン達。

 その姿に信じられないものをみる目で構成員が目を見開く。


「我々はこの街を支配する《サルヴァトーレ》だぞ!!? 逆らうと言う事がどういう事かわかっているのか!?」

「だからなんだ? 名を出せば臆すると思っていたのか? 悪いが私はお前らが思うような奥ゆかしい女じゃない。捕まえたいのならば、自力で捕まえてみろ!!」

「ぐっ、お前ら! 確保しろ!」


 命令に受けて構成員達が動き出す。


「私の歩む道を、邪魔するなァッー!! 【鬼道投轟きどうとうごう】」


 群がろうとしたサルヴァトーレの構成員をコロンは錨を投げつけて、そのまま錨に巻きつけていた鎖を引っ張り、横薙ぎに構成員全てを薙ぎ倒す。


 あっという間にこの場の《サルヴァトーレ》の構成員は全滅した。

 コロンは錨を握りしめ、二角帽子を深く被り直す。


「行くぞ! オリビアを取り戻すッ!!」

「えぇ、わかってるわ!」

「よぉ〜し! ふぁみり〜の皆! 力を見せつけるであります!!」

≪≪≪うっきっきっー!!≫≫≫


 コロンを先頭に《サルヴァトーレ》の縄張りを突き進む。





 事態を悟ったのか門を越えた先の家々から戦闘態勢で現れる構成員を薙ぎ払いつつ進む。

 構成員は一人一人がそれなりに強かったのだが、それでもコロンの方が圧倒的に強かった。


「ぐっ、何て力だ!?」

「馬鹿なっ、たかだか女だろう!?」

「馬鹿野郎! ただの女があんな一振りで道路や家を破壊できるか!!」

「どけぇぇッッ!!!」


 まさに嵐の如く暴風となって、立ちはだかる全てを錨で薙ぎ払っていく。一応民宅への被害は考えているが、道は酷い有様で凹凸だらけになる。誰も彼もがコロンに吹き飛ばされた。

 そのコロンを狙う影があった。


「ぐっ、調子に乗りやがって。その肩を撃ち抜いて……がっ!?」

「撃たせる訳ないでしょ?」


 ボウガンでコロンを家の窓から狙っていた構成員をリリアンが<凍てつかせる氷鳥銃コキュートス・マスケット>で腕に凍りつかせた。


「そーれ! 行くでありますよぉー!!」

≪≪≪うっきっきー!≫≫≫


 更にはリコのミラニューロテナガザルが窓硝子を割って内部へと雪崩れ込む。あっという間に敵は全滅した。


 その後も、リリアンは遠距離からこちらを狙おうとした奴を正確に撃ち抜いていく。


「コローネ、道はあってるのよね!」

「うむ! それに敵の数も増えてきている。それだけ奴等が近づけたくない存在がいるってことだ!」

「そうね、数だけは多くて鬱陶しいけどこのまま行けば……ッ!」


 その時、つんざくような鳴き声が響き渡った。


≪ギュイィィイィィンッッ!!≫

「この鳴き声は!」


 聴き覚えのある鳴き声だった。

 リコの隣にやたらと身軽なミラニューロテナガザルが降りてきて情報を伝える。


≪うき、うきき、うき≫

「せんちょー! リリアン殿! さるとびから連絡であります! 東の方角から例のカッコいい竜に乗った兵士が複数来ているらしいであります!」

「兵士!? 例のカッコいい竜か!」

「そうであります! あのカッコいいの!」

「"俊走竜(ヴァロニクス)"よ!」


 目を輝かせ始める二人の気を引き締める為にリリアンが突っ込む。


「どうやら聴きつけたみたいね。騒ぎを起こしてるから来るとは思っていたけど思ったよりも速いわ。リコ、その兵士達はコイツらの倒れている所はどうしている?」

≪うき、うきき≫

「全部無視して此方に来ているらしいであります!」

「……最悪の想像が当たったわね」


 もしかしたらとは思ったがこのマフィアとこの港街の組織は繋がりがあったらしい。


「そもそも、コイツらのボスは人を攫うような奴だ。何故捕まえないのだ!」

「コローネ、癒着って奴よ。多分、こいつらと兵士は結託していたのよ」


 リリアンは考え込む。

 話を聞けばもしかすれば理解は得られるかも知れないが、物的証拠がない。それにリリアン自身が言ったように癒着しているのであれば問答無用で襲い掛かってくる可能性が高い。こっちは今殴り込みをかけているのだ。秩序を維持する名目としても、コロン達を捕まえようとするだろう。


「どの道味方とは思えないわね。良いわ、コローネ。リコ。そのまま貴方達は先に行って」

「リリー!?」

「どの道あの"俊走竜(ヴァロニクス)"に追っかけられたら追いつかれるわ。私達は今此処でそんな時間を食っている訳にはいかないの」


 その言葉にコロンは、ぐっと反論を堪える。


「わかった。リリー、私の背後は任せたぞ」

「勿論。それに私はコローネと違って無茶しないわ」

「むぐ、どう意味だそれは!?」

「言葉通りよ」

「リリアン殿、リリアン殿。ふぁみり〜の一部をリリアン殿の護衛として置いていくであります。よければ、力を使って欲しいであります」

≪うき!≫

「リコ。ありがとう。アンタ達もね」

 

 リコの心遣いをありがたく受け取る。


「コローネ、オリビアの事よろしく頼むわね」

「うむ、任された!」







 "俊走竜(ヴァロニクス)"が疾走する。その誰もが倒れ臥す《サルヴァトーレ》を放置し、コロン達がいる方向へと突き進んむ。

 その数は二十騎余り。過去に海賊団同士が争ってるのに対して数騎しか現れなかったのを考えると、かなりの数が投入されている。


 それだけ被害の大きさを深刻に受け止めているのか、それとも()からの指令があったのか。


 リリアンは高い民家の屋根の上からその様子を伺っていた。

 流石にリリアンもあれだけの数に包囲されたらどうしようもない。


(けどね、別に一体一体を馬鹿正直に狙う必要はないのよ)


 <凍てつかせる氷鳥銃コキュートス・マスケット>の銃口を取り外して、遠距離特化の物にする。その形はさながら細長い鳥の嘴のようだった。


 リリアンは予めミラニューロテナガザルに命じて撒かせた水溜りに向かってリリアンは<凍てつかせる氷鳥銃コキュートス・マスケット>の引き金を引いた。

 瞬く間凍る路面。そこを通った"俊走竜(ヴァロニクス)"が一斉に転け、操縦者も投げ出される。


「ぐがぁっ!!」

「どうした!?」

≪ギュ、ギュイィ……≫

「くっ、なんだこれは! 路面が滑るし、冷たい!」

「それはね、氷っていうの」


 誰ともなくリリアンは呟く。

 "俊走竜(ヴァロニクス)"は急に止まれず、次々と将棋倒しのように積み重なる。数少ない無事だった"俊走竜(ヴァロニクス)"もリリアンに狙撃され、地に伏せる。

 更にはそこにリコのファミリー達が襲いかかってきた。瞬く間に混戦になる。そんな最中でもリリアンは"俊走竜(ヴァロニクス)"のみを正確に射撃し続ける。


「コローネ達の所には誰一人としていかせない。私の目から逃れられると思わないことね!!」


 その後もリリアンは狙撃を続けた。







 リリアンと別れ、その後も構成員を危なげなく倒して進んだコロン達だが新たな障害にぶつかっていた。


「むぅ、別れ道か」


 コロンが唸る。

 どうやら地下へと通じる所らしいがその道が大きく2つに分かれていたのだ。


「? 何を迷っているでありますか?」

「いや、地図には此処より先が描いていないのだ」

「えぇー! 肝心なところを忘れてるなんてもんてぃ〜ずとやらもとんだお間抜けさんでありますな」

「そうだな、とんだお間抜けらしい」


 策略と考えずに、モンティーズを間抜けと断じる二人。本人が聞いたらさぞ青筋を立てていただろう。

 それはともかくとして此処から手掛かりがないことが問題であった。コロン達は此処らの地形について疎いのだ。ある程度はミラニューロテナガザルを散開させて屋根の上から偵察させてリコが逐一報告しているが、地下となると全く情報がない。


「せんちょー、どうするでありますか?」

「むぐぐ、一つずつ確かめるしかないか。罠があるかもしれんし」

「でも。それじゃ時間がかかるであります。大事なのは、オリビア殿であります。オリビア殿は戦えないであります。だから、すぐにでも助けなきゃならないであります」


 リコはあほだが、馬鹿ではなかった。

 キチンと優先すべきは何かをわかっていた。


「リコ……、そうだな。わかった、なら私は左に行こう。リコ達は、右を頼む」

「任された! で、あります! へへーん、リコ達が先にオリビア殿を見つけて褒めて貰うであります!」

「ぬぁーハッはー! まだまだ甘いなリコ! オリビアを見つけるのはこのCキャプテン・コロンだ!!」


 二人はにっと顔を合わせるとそれぞれが左右の道に別れていった。

 コロンが左、リコが右である。


 リコはリリアンに分けたミラニューロテナガザルのファミリー以外のほぼ全員引き連れて地下に入った。ミラニューロテナガザルのうち、二匹は連絡用として地下入り口で待機している。


「それー! 進め進めー! であります!」

≪うっきうっきー!!≫

≪うきゃきゃっ!≫

≪きぃー! きぃー!≫


 ドタバタと大騒ぎしながら進む一同。

 しかし一向に敵は出てこない。


 やがて光が見え、そこに行くと広い空間に出た。


「おぉー、なんだかだだっ広い所に出たであります!」

≪うききっ!≫

≪うきぃ?≫

≪うきゃきゃっ≫


 リコ達が到着したのは天井を巨大な天幕を吊るし、至る所に様々な武器が錯乱している場所であった。しかしこんな場所見た事ない。

 リコとミラニューロテナガザル達は好奇心のままあたりを見回す。


「あら、やっと来たのね。随分と待たせてくれたじゃない」


 見上げれば、高い位置の観客席のような場所で一人の女性が此方を見下していた。やたらと扇情的な服に獣の皮を丸ごとあしらった物を羽織っている。更には貴金属を身につけ、化粧も厚かった。

 背後には護衛らしきスーツを着た男性が二人佇んでいる。


「なんだか凄くケバケバしいおばさんが来たであります!」

≪うききっ≫

≪うきっー≫

「け、ケバッ!? ふんっ、これだから蛮族は嫌なのよ! 最新のファッションも分からないだなんて!」

「ふぁっしょん? 何だか美味しくなさそうであります」

「食べ物じゃないわよ!! って、いけない。怒ったらお肌に良くないわ」


 サディコは余裕を持つ為深呼吸する。

 そのまま品定めでもするように観察する。


「……ほんと、汚らしいわね。身体は貧相、服装も古臭い、連れている猿達もアホヅラばっかりまるで蛮族ね」

「これはリコのふぁみり〜であります! 馬鹿にするのは許さないであります!!」

「ファミリー? 何よそれ、《サルヴァトーレ》と対抗でもするつもり? はっ、ファミリーっていうのはね、人間同士で構成されるものよ。それを猿とだなんて、本当にとんだ猿真似ね」

「いやぁ〜、それほどでもないであります」

≪うきぃ〜、うきぃ〜≫

「褒めてないわよ! 何照れてんのよ!?」


 猿真似と言われ、|ミラニューロテナガザル《猿》が褒められていると勘違いしたリコ達は皆思い思いに照れた表情を浮かべる。

 その様子にコイツらとまともにやってたら頭がおかしくなりそうと、サディコは本題に入ることにする。


「さて、貴方達が此処に来た理由は例のあの女を取り戻す為にでしょう?」

「! オリビア殿でありますか!」

「そうよ、そのオリビア。あんな……あんなっ、わたくしよりも肌の艶が良くて胸の大きい女ッ……! わたくしがこのプロモーションを維持するのにどれだけの努力を重ねているとッ……!」

「サディコ様、話がズレております」

「サディコ様、あまりお怒りになると健康によろしくありません」

「はっ! そ、そうだったわね」


 部下に宥められ、落ち着きを取り戻す。


「あの女を傷つけたかったけどそれが出来なかったから鬱憤が溜まっているの。それを貴方達で晴らさせてもらうわ。さぁ、素敵なショーを見せてもらうわよ? お間抜けなお猿さん達?」


 パチンと指を鳴らすとともにこの場に地響きが轟いた。


果たして現れたものの正体とは?

続きが気になると思った方は是非ともブクマと評価の方をお願いします!

コロン達の航海を完遂させるには皆様の力が必要です。是非とも船員として力を貸してください。

よろしくお願いします!


作者の他作品「こちら冒険者ギルド、特殊調査官! 貴方に魔獣の情報をお届けします!」と「

【連載版】この日、『偽りの勇者』である俺は『真の勇者』である彼をパーティから追放した」もよろしくお願いします。

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