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最も不幸な少女の、最も幸福な物語  作者: 881374
第二章、作中作『最も不幸な少女の、最も幸福な物語』
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第二章、その四 【閑話】モテモテめあちゃん♡

 それからも君は、担任教師であるあかつきゆうから課せられた様々な『修業』をこなしていくことによって、己の『不幸の予言』の力を磨き上げていった。


 ある時は相場師を相棒にして株式市場を舞台に仕手戦を繰り広げて、巨額の利益を手中に収めた。

 もちろん株の銘柄選びに始まり売り買いのタイミングに至るまで、不幸の予言は大いに役に立ってくれた。

 何せ銘柄選びの際においては、不幸になるビジョンが脳裏にまったく浮かぶことのない株を買えばいいのだし、それに対してすでに手持ちの株については、不幸になるビジョンが浮かぶようになったものがあればさっさと売り出せばいいのだし、まったく不幸になるビジョンが浮かばないのであれば、どんどんと買い足していけばいいのだから。

 またある時の君は、初老のカーレーサーの男性を相棒にして、いわゆるオフロードレースに出場したこともあった。

 文字通り山あり谷ありといった天然の要害だけでなく数々の人為的トラップまでも仕掛けられている、某県の山奥に密かに設えられた特設のレース場を完走するのは、本来なら相当の困難を要するところであったろうが、不幸な予言の巫女である君にとってはむしろうってつけの舞台に過ぎず、見事トップでのゴールインを果たした。

 その他にも君は、山岳地での徒歩によるサバイバルレースや太平洋横断ヨットレース等、特に天候に左右される『修業』に挑んでは、不幸な予言の巫女ならではの天候予知──特に()()()に限定された予知能力を存分に発揮して勝ち抜き、大手企業コンサルタントの男性の助手を務めた際には、個々の経営戦略のあらゆる場面に潜んでいるリスクを不幸の予言によって洗い出し、最も安全で効果的な戦略方針を立案してみせて、しまいには米国政府高官に請われて招聘されたアメリカ国防省においては、各種軍事戦略に対してあらゆる局面に潜んでいるリスクをえぐり出すことによって、真に自軍にとって犠牲や損失が少ない最も効率的な戦略を提示してみせるといった、離れ業すらもやってのけたのであった。

 ちなみに相場師に始まり米国政府高官に至るまでの全員が、実は何と君の母親であるゆめどりの知り合いだったのであり、それゆえに本来なら女子小学生ごときが立ち入ることのできない場所にも足を踏み入れて、不幸の予言の力を存分に役立てることができたのであるが、美明女史の顔の広さの尋常のなさには、娘の君すらもただただ感嘆するばかりであった。


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


「──ま、第一段階としては、この辺で十分だろう」


 修業が一段落し、久方ぶりに小学校の将棋クラブに顔を出してみれば、担任教師のあかつきゆうは君に向かって、開口一番そう言った。

「……何よ、第一段階、って?」

「君に不幸な予言を使わせることによってこそ人の役に立たせて、不幸な予言にも──ひいては君自身にも、ちゃんと価値があるということを知ってもらうことだよ。実はこれこそが、今回の修業全体における最大の目的だったんだ」

「──っ」

 担任の言葉に、君は目を丸くする。

 何せそのことは数々の修業を経ることで、今や君自身重々承知していたからだ。

 むしろ予想外に役に立ち過ぎたため、短い間とはいえ相棒を務めてくれた男たちの誰もが、本気で別れを惜しんでくれたほどであったのだ。

 アメリカ国防省においては国防長官どころか、大統領御本人にまで残留を懇願されるといった有り様で、君の母親の信奉者である政府高官の取りなしが無かったら、拉致監禁されかねないところであった。

 それというのも、その米国政府の高官氏を含めて今回の修業で君の相棒を務めてくれた男たちは皆、君の母親(ゆめ)どりをマドンナとして恋い慕いあがめ奉っているからして、彼女から預かった君の身の安全こそを何よりも優先してくれていたのだ。

「……じゃあ、もう目標は達成したってことで、修業は終わりなの?」

 君は恐る恐る担任に確認するが、彼はさも申し訳なさそうに、首を左右に振った。

「いや、もう一つの目的である、『完璧なるリスク対策をなし得るまでに、不幸の予言の力を磨き上げる』ことのほうが、いまだ不完全なんだ。何せ比喩でも何でもなく実際に生死がかかっている『最終目標』を乗り越えるには、今まで以上に困難な修業を行う必要があるんだよ。つまりそれこそがこれから挑んでもらう、『第二段階』ってわけなのさ」

 最終目標と聞いて君は、当然のように先日惨敗を喫した、幸福な予言の巫女である腹違いの姉(ゆめ)どりに対する、将棋の勝負での雪辱戦を思い浮かべた。

 確かに将棋や碁の真剣勝負においては、まさに命がけで挑む必要があるであろう。

 しかし担任のほうは、どうやらそういうことを言っているわけではなさそうであった。

「生死がかかっている最終目標って、いったい何のことよ? まさか今度は本物のギャングを相棒にして、マフィアと抗争でもやらせるつもりじゃないでしょうね?」

「いやいや、確かにこれまでも似たようなことをやらせてきたけれど、いくら何でも預かり物の娘さんを、現実に命の危険にさらしたり犯罪行為に手を染めさせたりするわけにはいかないだろう」

「だったら、どうする気よ?」

「つまり、()()()()()()()、何も問題が無いってことさ」

「はあ?」

 いきなり意味不明なことを言い放つや、君に向かってにんまりとほくそ笑む担任の青年。


 ──その瞬間、世界のすべてが暗転した。


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


 気がつけば君は、見覚えのないブレザーの制服を着た()()()()となっていた。

 どうやら今は春たけなわの新入生の入学シーズンらしいが、君自身の学年は二年次以上のようであった。

 それというのも、こうして校舎内のあちこちを寄る辺無く歩き回るほどに、周囲の生徒たちが君のことを噂しているのが、否応無しに耳に入ってきたからだ。

「──あっ、あの先輩が、噂の『不吉な予言の魔女』よ!」

「しっ、声が大きい」

「彼女の予言て、必ず当たるんですって」

「そのせいで、サッカー部のエースストライカーの竹内たけうち君なんて大けがをして、県大会に出場できなくなったそうよ」

「可哀想に。入部してからずっと、一生懸命練習してきたというのに」

「それに去年の修学旅行での集団食中毒事件も、前もって予言していたんだってさ」

「大勢の生徒が病院に担ぎ込まれてしまい、引率の先生の責任問題に発展したんだよな」

「せっかくの『魔女』様のお告げを無視した祟りじゃないかって、噂もあったりして」

「くわばらくわばら」

 聞くに耐えない誹謗中傷ばかりであったが、お陰で君はこうして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ばかりだというのに、自分の立ち位置をしっかりと認識することができたのであった。

 そして君はこの後すぐに、運命的な出会いをすることになる。

 その新入生の少年は、君の不幸な未来の予知能力を知るや、他の生徒たちのように忌み嫌って遠ざけようとしたりはせずに、むしろまるで愛の告白をするかのようにして、突然迫って来たのだ。

「──先輩! あなたこそ散々探し求めてきた、僕の救世主です!」

 本来ならいきなり見ず知らずの下級生からそんなことを言われたら、ただただ困惑するだけであろうが、文字通り()()()()()君自身においては違っていた。

 何せ、人の不幸な未来の姿が映像ビジョンとして脳裏に浮かぶ力を持つ君には、その少年がこれから様々な不幸な目に見舞われることが見て取れたのだ。

 ただしどこぞの小学校教師のように、少年自身が不幸体質とかであるわけではなかった。

 実は彼は大富豪にして秘伝の暗殺武術を司る一族の後継者の有力候補の一人で、他の後継者陣営から常に狙われていて、事故を装って殺されかけたり、直接暗殺者に襲われたりといったことを、日常的に繰り返していたのだ。

 そんな彼なればこそ、もし仮に人の不幸を予知することができる君を味方にできれば、この上もないアドバンテージとなることであろう。

「お願いです、先輩! 僕と一緒に後継者争いを闘ってください!」

「ちょっと、人を勝手に自分ちの私闘に巻き込んだあげくに、事もあろうに『警報器』代わりに使うつもりなの⁉」

 最初は不満たらたらの君であったが、これまでずっと他人から忌み嫌われていた身としては、このような形とはいえ人から頼りにされることに予想外の悦びを見いだし、次第に自ら率先して少年に協力するようになる。

 しかもお互いに暗殺武術を駆使しての常に生死がかかった闘いの場などという、これほど人の不幸を予知する力を役立てるにふさわしい場所なぞはなく、君は存分に力を振るうことによって、少年とともに次々と強敵たちを屠っていった。

 そしてついに『最終決戦』の場において、何と少年の明確なる死の未来を予知してしまった君は、あえて自ら盾となることで彼の窮地を救うものの、その結果致命傷を負ってしまう。

 君の献身のお陰もあってどうにか最後の敵を倒すことのできた少年は、決着がついた後ですぐさま、瀕死の状態で倒れ伏している君の許へと駆け寄ってくる。

「──先輩、どうして僕なんかを庇って⁉ 嫌だ、先輩、死なないでください!」

「……よかった、あなたが助かって」

 少年の無事を確認するや、君はもはや心置きなく、静かに目を閉じ息を引き取る。

「先輩──────‼」

 その場に悲痛に響き渡る、少年の絶叫。


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


「駄目だ駄目だ。確かに物語的には盛り上がったけど、肝心の君自身が死んでしまっては、何の意味もないじゃないか。──ということで、やり直し!」

 このたびは量子論と集合的無意識論とで『後期クイーン問題』を解き明かす、まったく新しいSF的ミステリィ小説『最も不幸な少女キミの、最も幸福な物語』の第二章第四話をお読みいただき、誠にありがとうございます。

 この作品は『第六回ネット小説大賞』応募記念新作長編三シリーズ日替わり連続投稿企画の第三弾作品でありますゆえに、次話投稿の前に他の二シリーズ──第一弾の『ツンデレお嬢様とヤンデレ巫女様と犬の僕』と第二弾の『僕の可愛い娘たち』のそれぞれの最新話の投稿が間に挟まれることになるので、次回第二章第五話の投稿は三日後の2月17日20時ということになります。

 少々間は空きますが、お待ちになられてけしてご損はさせませんので、どうぞご期待ください。

 なお、ご閲覧をお忘れにならないように、ブックマーク等の設定をお勧めいたします。

 もしくは皆様のご要望が多ければ、この作品単独での『毎日投稿』も考慮いたしますので、そのようなご意見やご感想等がおありでしたら、ふるってお寄せください。

 次話の内容のほうにちらっと触れておきますと、「またしても作中作ということで作者の趣味が爆発し、第二次世界大戦末期の帝都ベルリン上空で世界初のジェット機による夜間戦闘を大展開するという、やりたい放題でありながらも、同時にまさしく本編を通してのメインテーマである、未来予知能力の秘められた本質に鋭く迫っていきますので、乞うご期待!」──てな感じとなっております。

 ちなみに明日2月15日20時には、もはやおなじみの大嘘つきの主人公が二人のヒロインを壊し尽くす、愛と狂気の学園ラブコメ『ツンデレお嬢様とヤンデレ巫女様と犬の僕』の第三章第三話を投稿する予定でおりますが、これまた具体的な内容に少々触れておきますと、「何と前回に引き続き今回においても、もう一人のメインヒロインである巫女姫月世様の、ラノベ的には完全に掟破りのとんでもない本性が明らかに⁉ ……もしかしてこの作者は、本当はライトノベルというものを知らないのでは?」──といったふうに、いかにもせっかくこれまで好評だった作品テイストをぶち壊すような、奇矯なる展開を予想させるものとなっているという、まさしく平成最大の奇書にして新世紀のドグラ・マグラ『人魚の声が聞こえない』の881374の本領が、いよいよ本格的に発揮し始めておりますので、そんな一癖も二癖もある作品がお好きな方は、こちらのほうもどうぞよろしくお願いいたします!

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