その7 謎の宇宙少年1
ケンの意識の荒廃は日々すすんでいった。表面上の判断力には問題ないのだが…目はすでに光を失っていた。アイツはパーティでの修行を拒み、一人で怪しげな猟奇的な魔物虐殺という名の修行をしている。修行の内容は日々非人道的になっていく。街の周りのスライムやマッドスライムなどのHp一桁の魔物をオーブ30倍以上の魔法で【オーバーキル】し続ける。自然、大地はそのたびにグロテスクな黒く焼け焦げた植物の焼死体と無数のフラクタル状の断層状の亀裂を残す。ガイアが泣いている。紅の血を流し、植物も動物も魔物も人も紅に染まる。地獄。彼の瞳の中は弥勒菩薩さえも目を伏せる地獄よりも深い絶望の色に染まっている。
俺は目を醒ます。母さん、父さん、いない。ルミ子はどこだ。ルミ子を抱きしめたい。ルミ子の小さな胸の中で俺は深海へ沈んで生命の活動を止めてしまいたい。俺は泣いていた。
夢の中の夢から醒め、城門へ向かう。再凶悪の魔物、山地のドラゴンを倒したということで俺らはすでに新勇者達の間では最高の評価を得ていた。大臣から俺らはメダルをもらい中級勇者となった。第二種禁呪の使用も許可された(神経系の呪文、自己の痛覚の遮断等)。現在のパーティーの能力は以下の通りだ。
俺 春日アキラ 戦士
攻50 防58 Hp71 Mp29 魔18 賢9
呪文 中火炎、雷鳴、水霊、回復、雷神剣、飛翔
星野ケン 魔法使い
攻42 防52 Hp69 Mp104 魔120 賢72
呪文 上暴風、中火炎、中水霊、中雷鳴、中回復、睡眠、中筋弛緩、中幻覚、神風、以心伝心、中飛翔、神経切断
泉ヒトミ 賢者
攻29 防40 Hp55 Mp74 魔71 賢70
呪文 上水霊、中土砂、雷鳴、上回復、鉄壁、魔法壁、中魔力譲渡、光悦、筋弛緩
(各魔法は無印→中→上→極という順に強力になり、またMpの消耗も大きくなる。もちろん上級魔法を扱える者は同属性の下級魔法も扱える)
修行に身が入らない。
ここ3週間ほど王からのクエストもない。
ヒトミが俺に声をかけた。
「春日さん、あのぉ…ちょっと散歩でもしない?近くの草原をさ、あの、
いまライラックが綺麗なのよ」
「星野さん、いやケンさん、なんだか人間って感じがしないのよね…」
俺達二人は街郊外の荒野を歩いている。
「意識っていうのかな?が、ここではない遠くへ消え去ろうとしてる感じなのかな?」
「キミの指摘通りだね、ヤツのオーブは回復魔法も効かない呪いが蓄積されてるのだよ。」
気付かないうちに変なヤツがいた。とても地球の人間には見えない、白髪の少年のようなヤツがいる。
「突然驚かしてすまないね。ボクは「フォボス」、この惑星「アース」の双子惑星の「マーズ」のガイアの息子の具現体なんだよ。」
意味が…わからんが…冗談で言ってるようにも思えん。
「つまり、おまえ、この大陸のものではないってことなのか?」
「大陸?違うよ、隣の星からここへ着たのだよ、ボクのお父さんがめちゃくちゃするからそれをどうにかしようと思ってわざわざ来たんだ。すごい大変だったんだよね、惑星間には空気もなにもないし、危ない放射線も飛んでるしボクも死んじゃうかと思ったよ」
「ほう、それは、お疲れ様…で、君、ほん…」
そのとき王の「以心伝心」で
「街南部の荒野に未確認生命反応確認、調査をお願いしたい」、ときた。
「ははは、ボク疑われてるね、でも安心して。ボク、この星、いや惑星系を守りたくて真の勇者であるキミ、春日アキラに逢いに来たのだよ。」
は?
ほ?
「あんた、いったいなんなの突然、私も、春日くんもみんな勇者なのよ。しかもいきなり惑星どうのこうのとか意味わかんない。ってか、あんた、なにものなの?」
「二度も説明するのは面倒だねー、とにかく泉ヒトミ、キミそして星野ケンはマーズに生を蝕まれてるのだよ。」
なかなかの電波野郎だ…正直俺はいますぐ街へ帰りたい。
「今から南のバンコ砂漠へ行こう。君たちは幻術にかけられ星々を見たことがないでしょ。空気の澄んでる砂漠地帯ならボクの魔法で少しの間だけど結界をやぶれるよ。とくに春日アキラ、キミには真実を知る義務がある、いますぐ来い。」
超展開とはこういうことをいうのかな?王の未確認生命反応とはまぁこいつのことだろう、そいつを知るためにも、まぁとりあえず付き合うことにするか。
ということで、俺、ヒトミ、謎の少年で砂漠へ向かった。
寒さにも暑さにも負けないようにど○兵衛と野菜ジュースでキチンと栄養補給してます。