その4 北の森を鎮る獣2
フガジの村について、真っ先に俺らは村長にあった。村長曰く、村の外れに住んでいる木こりがジャガーパンサーを目撃したそうだ。村長からジャガーパンサーの生態についても聞いた。
「やつは鋭い爪と電光石火の素早さをもってる強敵じゃ。爪で引き裂かれて生き残れた者はいない。村の人々は皆恐れている。勇者さんたちよ、どうかこの村を助けて下さい!またやつの弱点は火炎呪文だ。」
ってことなので、とりあえず村唯一の宿場へ向かった。
「田舎の空気は綺麗だなー、森林の香りってやつかなー、素敵だわー」
「アキラよう、フガジ周辺は人口も少ないし植物相も豊かで、適度に湿度もあるから住みやすいよな。俺も勇者定年(60歳です)で引退したらこうゆうとこに住みたいな!俺ら二人で一緒に楽園のようなハイツを築き上げないか?」
「は!?おめー、なにゆっとんの!っざけんな!だれが、おめーなんかと…」
「冗談、冗談、そこまで真に受けるとは思わんかったよ、なぁ親友」
「う、うっせー…」
「うふふ、二人はまるで兄弟みたいね。」
「ああ、あいつとはなんか知らないけど6歳で学院に入ったときからずっと同じクラスだったんだよね、腐れ縁ってやつかなー」
宿場はこじんまりしたロッヂのような場所だったが、勇者向けの部屋は個室で狭いが快適に一夜を明かすことができた。
翌日、キャンプに必要な食料を市場で買い、やつ、ジャガーパンサーをみたという木こりの元へ行った。
「おう、勇者さんたちか、ありがたい!とんでもねぇんだよ、やつが何頭も現れて、おいらは村へ戻ることもできねぇ状態なんだ。どうか助けてくれぇ。」
1匹じゃないのか…ちょっと油断できないなぁ…
「そりゃひどいわ、ジャガーパンサーを私たちで倒しましょ」
「せやなー。この村が危機って訳だな。ここは気合いいれるぞー」
「相手は1匹じゃないみたいだな。俺の魔力をオーブで増幅させて一気に片付けよぅ!」
フガジの森付近は降水量が多くシダ植物や地衣類が多く歩き辛い場所だ。こうした環境のおかげで開発が遅れ貴重な薬草などが手に入る。俺らは朝食の電子ピザ魔力強化+壱とマーブルチョコ魔力強化+壱を平らげたあと、森の深部へ向かった。魔物の気が数カ所から感じられる。おそらくやつは2匹どころじゃない、5,6匹はいると俺は確信した。
下草の多いジャングルを鎌で刈りながら俺らはさらにすすんだ。途中大きな川があり森が分断されていた。ここより向こう側へはやつもいけないだろうとかと3人で話していた。そのときやつが現れた。
「ジャガーパンサーだ!1,2,…3匹いるわ、一気に攻めないと危ないわ!」
「任せろ!おまえら、ちっと暑いだろうから伏せてろ!」
ケンはオーブを使い魔力を30倍にし、魔力270の中火炎を放った。凄まじい火炎に俺とヒトミは顔をあげることすらできなかった。
火炎が消えたあとやつはわずかな灰だけを残し消えた。
「恐ろしい威力だ…あの強敵3匹をおまえ…イチコロするなんて…」
「いや。王の言いつけを守ったまでだ。常に敵が確実に消えるだけの魔力を出し惜しまない、【オーバーキル】の法則をまもったまでだ。」
「ケンさんすごいわ!…あ、でも邪気がまだ残ってるわ。」
「「なに!?」」
確かに泉さんの言うとおり、禍々しい気が残っている。なんだこれは…
「グレートジャガーパンサーだな。おまえら、俺が魔力を溜める時間を稼ぐ時間を稼いでくれ!」
「「え!?」」
グレートジャガーパンサー、ジャガーパンサーのなかでもとくに巨体で凶悪な個体、学院図書館の図鑑では全個体討伐されたと聞いたが…まさかやつがここにいるとは…
「わかった、ケン。俺はやつがあらわれたら先に攻撃し、気をひくよ。その間にヒトミはケンに魔力譲渡して一瞬で片付けよう。鉄壁を使ってもやつの攻撃は耐えられないだろう。一発で仕留めないといけない。」
「わかったわ、あっ、南南東100mほどの場所にに強い気があるわ!」
「やつがいるっ!」
いままでで感じたことがないほどの強い気。グレートジャガーパンサーだ。基本能力はジャガーパンサーと同じだが、Hpが400ほどと高く、攻撃力も恐ろしく高い。1ターンで倒せなかったらパーティーに死傷者がでるだろう。打ち合わせ通り、俺はやつをひきつけることに専念した。大きな声をあげ、剣を振り回し気を引いた。
「ガオオーー」
よし、俺の方へ向かってる。作戦通りだ。
「魔力譲渡!!!ケン、任したわー!!」
「オーブ50倍、全力で行くぞ!中火炎!!!」
魔力500以上の凄まじい中火炎は半径数メートルの森と標的を灰にした。弱点属性なので1000ダメージは下らないだろう。
「はぁはぁ…ケンさんすごいわ…」
「ふぅ…恐ろしかった…ケン、かっこよかったぜ」
「いえいえ、仕事なので…うぅぅ…ちょっと疲れたわ、さすがに…」
宿屋へケンの「飛翔」で戻り、村で1泊してもどることにした。宿場に着くなり、ケンはすぐさま泥のように寝た、俺もヒトミも疲れたので互いに殆ど会話もせずにすぐ寝た。
翌日、村の村長や住民から祝われながらノヴェラの街まで歩いてもどり、俺のパーティは王から大変祝福された。
今回の旅で4000経験値を俺らは手にし、王から一人あたり5000ゴールドのボーナスを頂いた。
「いやー、まさかグレートジャガーパンサーがまだいたとはねー、君たち、特にケンくんはほんとに優秀だね!判断力の鈍いパーティーなら死人が出ててもおかしくなかったよ、王として誇らしいわ、わっははは」
ちぇっ、結局褒められるのはまたケンなのか、俺が時間稼いだおかげであいつはフルパワーの呪文を放てたっていうのに。
まぁいい、無傷で最初のクエストをクリアできた、今月はボーナスも弾むだろうな。久しぶりに贅沢できそうだ。
気候とか植生について設定考えるのは好きです。