その3 北の森を鎮る獣1
儀式の5日後の春の陽射しのやや暑すぎる日に、はじめて俺のパーティーは王からのクエストを頂いた。
「やぁ、春日くん、星野くん、泉さん、ごきげんよう( ^ω^ )、街の北にあるフガジの村周辺の森林地帯で凶悪なジャガーパンサーの報告があった。おまえらにとっては大したことのない敵だが、ガイアのオーブの力を試す練習台としてはちょうどいいだろう。あと、おまえらにとっては強敵でなくても、オーブのない村人には十分脅威になる相手だ、くれぐれも被害が出る前に解決して欲しい。頼んだぞ。」
という感じで始めての実戦をこれから経験することになった。もちろん勇者達は実戦のない日々も毎日鍛錬を義務付けられている。具体的には総合戦闘力(オーブ使用前の攻撃力、防御力、Hp、Mp、素早さ、魔法力、賢人力のそれぞれの偏差値から計算されるものらしい、詳細は明かされてない)から月末の給与が決められる(実戦の有無、特別な成果等のボーナスあり)。能力値が下がった場合最悪給与は0になる。とは言っても一般的によほど自堕落な生活でもおくらない限り、勇者の給与が多の職を下回ることはない。もちろん俺はそれを目当てにこの職を目指した。そんな感じで儀式後、パーティー3人で模擬武闘、仮想空間での魔法生物との格闘等の訓練を行い、また3人の能力値もおおよそわかってきた。
俺 春日アキラ 戦士
攻35 防40 Hp55 Mp18 魔8 賢3
呪文 中火炎、水霊、回復
星野ケン 魔法使い
攻28 防38 Hp59 Mp80 魔90 賢45
呪文 上暴風、中火炎、中水霊、中雷鳴、中回復、睡眠、筋弛緩、幻覚、神風、飛翔
泉ヒトミ 賢者
攻20 防30 Hp40 Mp55 魔55 賢52
呪文 中水霊、土砂、中回復、鉄壁、魔力譲渡
(各魔法は無印→中→上→極という順に強力になり、またMpの消耗も大きくなる。もちろん上級魔法を扱える者は同族生の下級魔法も扱える)
各ステータスは、攻、防、Hp、Mpはみんなが知ってるようにRPGとかでよくあるようなやつ、
魔法力は攻撃呪文の威力や範囲を倍増したりするもの
賢人力は回復や補助呪文の威力や範囲を倍増したりするもの
んな感じだよ。上のステータスをみてわかるように圧倒的にステータス的才能に乏しいのは俺。さらに一般的人間としての知力も二人、とくにケンには大きく劣る。これは悔しいけど否定できねぇな。まぁ、で
「おい、アキラなにぼぉーっとしてるんだよ、行くぞ!」
「ああ、はいはい、待てよ、いま読者に大事なこと伝えてのに。」
「春日さん、読者ってなんのこと?わたし気になるわー」
「(おい(笑))」
フガジの村はノヴェラの街から北北東に約100km。本当ならばケンの仕える上級魔法「飛翔」を使えば数分で移動できる距離なんだがさすがに3人分移動させるとなるとMpの枯渇が心配になるので徒歩で移動することにした。
「ふぅ…春とはいえ直射日光をずっとあびるとわりとしんどいなー…ああくそー」
「相変わらずアキラはヘタレだなー。もっと気合いいれろよ。そんなのだと永遠に上級勇者にはなれんぞ」
「そうね。でも、パーティーの命を大事に行動することが大切だって王様も言ってたよね、一旦ここは小休止に…」
「いや、大丈夫だ
【回復】!」
こんなところで情けないところみせられるかよー。俺は勇者なんだぞ!
「おいおい、こんなところでおまえが補助魔法使ってどうするんだよ。そうゆうことはMpの高い俺かヒトミに任せるべきでしょ。無駄な行為は全滅への一歩だぜ」
「そうね、王様が言ってたでしょ、困難はパーティーで分かち合ってこそ勇者だって」
「すまぬ…」
恥ずかしい…反論できない。残りMpは8。回復魔法のMp消費は大きいし戦士の俺の場合回復量も少ない。また、魔法使いや賢者は職業特性としてMpの回復も早い。これは俺の早とちりだ。
このあたりは草原地帯。街は森林気候とステップ気候の間にある場所に位置している。勇者にとっては動きやすいし、敵も見つけやすいもっとも都合のいい場所にあるといえる。北へ行くと降水量は増え、森林地帯になる。移動での体力消耗はさらに大きくなる。こうなると戦士である俺はいちいち回復魔法なんかつかってられなくなる。自分が明白に足をひっぱてるのがわかって辛い。
「あ!」
「泉さん、なんかみつけたの?」
「あれ、もしかして、スライム?」
遠くの方に魔物の気配がかすかにする。
「そうだな。あれはスライムだな。アキラ、ここは逃げるぞ」
「え?なんで?」
「おまえもう忘れたのか?パーティー単位で常に考えないと駄目だって言っただろう。」
確かにその通りだ。スライムはこの辺り普通に生息してるし、あの程度の魔物ならば村人のもってる通常兵器で倒せる。ここで無駄なMpを使うのは無駄としかいえない。やはりケンの判断は正しいな。
「ねぇ、あのスライムちょっと変じゃない?教科書でみたのは青色だったわよ。しかもちょっと強力な魔力もってるようにみえるわ」
「なるほど。あれはパワースライムだ。全戦闘力を攻撃力に特化させた危険種だね。」
「なに?ならばこいつは倒さないと危ねぇんじゃないのか?ケンおまえの魔法でなんとかしてくれよ。」
「アキラ、それでもいいんだがスライム属は属性耐性値が高い。Mp消費が大きい。おまえの剣であれを始末してくれ。」
「なるほど!では最初の獲物は俺が始末してるっ!」
パワースライムに気付かれると危ない。奴らは攻30近くあるので万が一攻撃を受けると骨折や内臓損傷などの傷を負う可能性がある。ここは回り込んで背後から…
オーブで攻撃力を10倍にする。全身全霊で斬りかかる。
「えいっっっ!!!」ぶっしゃあああ
攻撃力350なので150以上のダメージは与えただろう。
パワースライムは消え去った。おそらく即死だろう。
「やったーー!春日さん、すごいーー!」
「おまえもやるときはやるじゃないか」
「ははは。ありがとう。」
こんな感じでこれ以上の強敵と出会うこともなく夕暮れどきにはフガジの村に俺たちはついた。
初日の公開はここまで。コメントくれたら嬉しいです。