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#1 旅立ちとグリフォンとインスタ映え

「それでは勇者ユウキ様、ご武運を」プルプルと小刻みに震えながら俺をこの世界・ザウスに召喚したゲイルマン爺さんが言う。


「はい!頑張ります!」


何百と集まる街の人に手を振り、旅立ちの街・アルハノイムを出発した。

ゲイルマン爺さんの話によると、どうやらこの世界はよくあるRPGのように魔王によって支配されているらしい。


つまりは魔王を倒せばお役御免。晴れて地球に戻れるはずだった。……そういえば地球に戻れるかどうか聞いてなかったけど、きっと大丈夫だろう!!


街を出るとそこはまさにゲームやアニメでしか見たことがないような光景が広がっていた。どこまでも続く大草原に、遥か彼方に見エマ三日月形の山、空に浮かぶ雲は藍色から水色に、水色から薄桃色へと時折色を変え、まるで誰かが色を塗っているのではないかと思うほど美しかった。


パシャ、パシャ、パシャ!

スマホでその光景を余すことなく撮る。

地球との違いを改めて感じる。異世界というものは凄い、見るものすべてが新鮮だった。


「ユウキ様、先頭は危険です。私が前に行きましょう」戦士のナイラスさんは筋骨隆々の巨体に重そうな赤い鎧を身に着け、背中には大きな斧を装備していた。まさに絵にかいたような戦士だった。

「ああ、どうもどうも」

俺を取り囲むように僧侶で巨乳のマリナさんとロリッ子魔道士・エマちゃんが歩く。

「むう…」守ってくれるのは有難いのだが、これではいざって時ベストショットが撮れない。


「しかし勇者さまは面妖な恰好をされていますね。私たちの世界ではそのような服、見たことはありませんよ?」隣で不思議そうにマリナさんが言った。


「これはですね、今の地球で流行のファッションなんですよ。MA-1に白のロング丈のTシャツ、黒のスキニ―にスポーツブランドのスニーカー!これね、全部俺の好きな子に選んでもらったんですよ~」思わず早口になってしまう。俺の話を聞いているマリナさんは「えむえーわん、すきにー?」と完全に置いてけぼりだった。しかし、喋りたい、カオリが運よく上機嫌で奇跡的に服屋に付き合ってくれたときトータルコーディネイトをしてくれたことをもっと喋りたい!!


「でね、髪はちょっと今風にパーマをかけて…。っていうのも俺の好きな子がね、パーマが好きってのを友達伝いに聞いて……」


「勇者様、伏せて!!!」突如、ナイラスさんが叫ぶ。

「はい!!」言われるがまま俺は草原に身を隠すようにダイブした。

大草原に突風が吹く。チリが目に飛び込んできてだいぶ痛い。


「あれは……グリフォン!」まるっきりロリータボイスのエマちゃんが風で吹き飛びそうな黒革のとんがり帽子を手で押さエマ。


「グリフォン?」エマちゃんの目線を追っていくと、大空に何やら羽の生えたたかのようなわしのような動物が飛んでいる。

その動物はこちらに気づいているのか、旋回し、空中から俺たちのほうに突進してきた。


「なんでこのエリアにグリフォンが?生息地が違いすぎませんか?」マリナさんが驚いたように言う。

「魔王の力がもうこのエリアまで及んでいるということかもしれん。勇者さま、このナイラスから絶対に離れないように!…って勇者さま?」


「すごーーー!!こんなデカい鳥、地球じゃ見たことないぞ!!」

俺はスマホ片手に特攻してくるグリフォンに向かっていく。


「勇者様――!!何してんですかーー!!!」ナイラスの怒声にも似た声が背中越しに聞こエマがそれを振り切り走る。シャッターチャンスは今でしょ。

しかし、走りながらでは手ブレが酷くてまともな写真が撮れない。

どうしたものか……。

「きrrrrrraaaaaaaa!!!!」

超音波のような奇声が発したグリフォンとの距離はもう10メートルを切っていた。

あ、そーだ。あのグリフォンに一回止まってもらえばいいんだ。

名案。さすが俺。


「止まれ―!!鳥―ー!!」

大声でグリフォンに声をかけるが一向に止まる気配はない。

「止まらないとーーー」俺は大きく腕を振りかぶる。「焼き鳥にしちまうぞーー!!!」

振りかぶった拳はグリフォンの大きなクチバシのちょうど真上、鼻のような場所にヒットした。

「gげっあxaaaaaaaaaaa!!」

拳が当たった瞬間、グリフォンは地面に落ち、草原の上を何回転もしながら数十メートル先で停止した。


俺がグリフォンに駆け寄っていくと、緑色の液体をクチバシから出しながらピクピクと震えていた。


やばい……これはもしかして、もしかすると倒してしまったのか……?

こんな伸びてしまったグリフォンを撮っても全く意味がないじゃないか……。


はっ!!そうだ!!


「マリナさ―――ん!!」俺は遠くで何故か呆然とこちらを見ているマリナさんたちを呼んだ。


「ユウキさま、これは……」言葉を失ったようにグリフォンと俺を交互に見つめるマリナさんに俺は頭を下げた。

「このグリフォンとやら、回復してください。お願いします!!」


「……」「……」「……」3人とも言葉をなくしたように同じような表情をしてきた。


「回復して、写真撮って、また倒すんで」


パシャ。

#1・旅立ちとグリフォンとインスタ映え


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