空白の一年
白・黒・灰の3色の世界。
視界はぼやけていてはっきりしない。
身体は動くがどうにも重い。
声をあげてみると、眼前に人影がぬっと現れた。
影は私を覗き込むように抱き上げて、私に語りかけてきた。
しかし、何を言っているのか分からない。
私の身体の3倍はあるであろう巨人は、私をあやす様に身体を揺らす。
気に入らない、なんとも気に入らない。
喋る言葉は聞き取れず、玩具のようにもて遊ばれて、視界すら不明瞭だ。
私は意識を落とし、チャンネルを変えた。
*
どうやら今度は色彩があるようだ。
世界には色が付き、不明瞭な視界も先程とは違い立体的に見える。
しかし、近くのものは鮮明に見えるのだが、遠くのものはぼやけている。
近くを見渡して判断してみた所、私は檻に囲われているようだ。
分厚い木造の巨大な檻は、私を逃がさないように四方を囲んでいる。
天井は閉ざされていないようだが、私の身体ではどうしようもない高さで囲われている。
というか、身体が未だに思うように動かない…
これもはずれか。
私は再びチャンネルを変えた。
*
むっ、今度はなんだ?
やけにお腹が空いている。
これはやばいっ、何かを口にしなければ危険だと脳が警告している。
しかし周りには食べ物などはない。
「誰か、誰か居ないか?食べ物を恵んでくれ」
私は力の限りで叫んだ。すると、現れたのは巨人。
私を軽々と持ち上げて、巨人は何かを語りかけてくる。
が、やはり言葉は通じない。
「なにか食べ物を!食べ物をくれ!」
私の必死の訴えに気付いたのか、巨人はなにやら丸い物体を私の目の前に差し出した。
その物体には、なにやら先端に小さな突起のようなものが付いている。
私はそれに齧り付いた。力の限りで吸い上げると口には液体が流れ込んでくる。
液体は少し粘り気があって少々苦い。
が、文句などは言ってられない。私はありがたくそれを頂戴して腹を満たした。
満腹にもなり口を離すと、巨人は私の背中を叩いてくる。
突然の不意打ちに"ゲフッ"と咳き込んでしまったが、食べ物を恵んでくれたことに免じて許してやることにする。
ふむ、この巨人は良い巨人なのかもしれないな。
候補の一つとして覚えておこう。
そしてまた私はチャンネルを変える。
*
何度もチャンネルを変えては起き、変えては起きを繰り返してみたが、どのチャンネルも似たようなものであった。
チャンネル放浪には流石の私もくたびれてしまったので、三番目の肉体に入ることを役員に告げる。
「かしこまりました。貴方の記憶はここで全てなくなります。それでは良い人生を!」
アナウンスが流れて、私の意識は落ちていく。
これから始まる私の人生。地球人の子供として生まれるために自我のない幼体に体験潜入してからの親選び。
記憶はなくなるが、宇宙では楽しいと噂される人間生活を送るため私はここに来たのだから━
さあ、初めての"人生"を始めよう。




