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今度は僕が  作者: 益次郎
3/8

 それから僕たちは週に三日はあの公園で会うようになった。

 僕は毎日通っても構わないのだけれど、守は校区外でもあるし、家庭の事情もあるというので週三日ということに落ち着いた。一週間で学校に通う日は五日。そのうちの三日だからほとんどといってもいい。

 会うと行っても、三十分ほど他愛のない話をするだけだった。

 昨日見たテレビのことや昔観た映画の話。クラスメイトのことや学校の先生のこと――。

 なんてことない会話ではあるのだけれど、僕の生活は守のおかげで変わることができた。放課後に友達と会話する――傍から見れば当たり前のことなのだろうけれど、僕にとっては特別な時間となっていた。

 植山はあのあと、三日間学校を休んで登校してきた。頬に湿布を貼って登校してきた植山は、僕になにか言いたげな表情を見せたけれど、それ以上近づいてくることは無かった。

 当然、以前のようにあの公園に僕を引っ張って行くようなことも無くなった。

 守にそのことを話すと、

「解放されてよかったね」

 と、一緒に喜んでくれた。すべては守のおかげだ。僕は改めて礼を言うと、守は恥ずかしそうに役に立てたならよかった、と微笑んだ。

 守と出会って二週間が過ぎたある日。

 約束の日にも関わらず、守は姿を現さなかった。

 公園での約束の日は月・水・金。

 その日は水曜日だったから、僕の勘違いでもない。

 公園にやってきて十分、二十分――これまでこんなに待たされたことはない。大抵、五分も待たずに守はやって来たし、僕も待たせることはなかった。

三十分経って現れなかったら帰る。そんな約束をしていたのだけれど、これまでそんなことはなかった。学校行事で遅れるならば、前もって会ったときに教えてくれるはずだ。体調を崩して学校を休んだのだろうか。こんなことなら自宅の電話番号でも聞いておけばよかったかな――そんなことを考えているうちに、約束の三十分が過ぎた。

 守は現れない。

 僕は立ち上がって辺りを見回したけれど、守がやってくる様子はなかった。

 改めて考えてみると、僕は守のことをほとんど知らない。自宅も家族構成もなぜ県外から転校してきたのかも、なぜ校区外の公園へ来ることになったのかも知らない。

 ここで会っても、学校での出来事などの近況を話すだけで、お互いの詳しい境遇を話したことはなかった。

 僕は守のことをほとんど知らないのだ。

 向こうも僕の境遇を聞いてこないから、こちらかも聞きにくい。いや、会って会話しているものの、どこかそういった類の話を避けているようにも思えてくる。

 あの口元にあった痣もそうだ。

 痣の原因を聞きたくても、聞きにくい。思い過ごしかもしれないが、僕はそう感じた。

 聞かない方がいい――と。

いつか話をしてくれるのだろうか。

 そんなことを考えていると、四十分が過ぎた。

 陽も傾き始め、辺りを橙色に染めようとしている。

 結局その日、僕は守に会うことなく帰路についた。


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