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この手に平和をもう一度 ~英雄再生譚~  作者: 小夏雅彦
信仰と悪徳の街
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銀星対黒星

 漆黒の甲冑ダークマターを纏った黒星が、飛び出してくるのが見えた。

あの高さからダークマターの力を食らえば、さすがのシルバスタと言えど

やられてしまう。真一郎は床をゴロゴロと転がり、それを避けた。

 黒星は遅れて着地、地面が炸裂した。細かい破片が飛んで行き、辺りの

壁に突き刺さった。


「ダークマターはあの時破壊されたはずだ!

 なぜ貴様がその力を使える!」

「ギリギリのところで保っていたんですよ!

 破壊されたところを、あなたは見たわけではないでしょう?

 この力をもってこの世界に来られたのは僥倖だった……!」


 立ち上がった真一郎に向かって、黒星はジャブを繰り出す。真一郎は

それを受け流す。まともに受け止めたのではダメだ。ダークマターの

システムはシルバスタのそれよりも後期に作られたものだ。出力は

シルバスタの約二倍、まともな格闘戦で勝ち目はない。


 距離を取っての射撃戦が出来るのならば、それが一番いい。

 ダークマターにはほとんど射撃武器が存在しない、精々がエネルギーを

戦輪のように射出するダークネスカッターくらいのものだ。だが、そう

易々と距離を取らせてくれる相手ではないだろう


 黒星は拳を振り上げた。すると、その手にダークマターの装甲よりも暗い、

暗黒のエネルギーが収束していった。簡易フルブラストシステム。出力を

増強したパンチを、まともに食らうのはマズい。真一郎はスウェーで黒星の

拳を回避、その腕を抱えるように掴んだ。シルバスタはスピードにおいては

ダークマターに勝る。


 腕を抱え、黒星の動きを制限したうえで、真一郎は黒星の膝を狙った。

だが黒星はそれを避け、逆に真一郎の足を絡め、転倒させようとする。


(冗談じゃあない!)


 パワーにおいて劣る真一郎が上を取られれば、勝負は決する。真一郎は

腕を掴んだまま跳んだ。そして、両足を黒星の体に絡める。腕ひしぎだ。

そのまま力を込め、へし折ろうとする。人体の構造上、逆の腕では真一郎を

攻撃することが出来ない!


 だが黒星も負けてはいない。真一郎に捕まれた腕を、思い切り振った。

真一郎を背中から壁に叩きつけ、引き離そうというのだ! 真一郎の全身に

凄まじい衝撃が走り、思わず腕を放してしまう。

 真一郎が離れたのを見計らって、黒星は落ちる真一郎に向けて膝を

打ち込んだ。真一郎の体が、ゴムボールのように吹き飛んいき、

バウンドして止まった。


「このッ……! やられっぱなしだと思うなよ!」


 真一郎は転がりながらも手を突き体勢を立て直し、シルバーウルフを

放った。銃弾はダークマターの装甲に全弾着弾するが、しかしダークマターの

装甲を貫けない!

 だが牽制の役目を果たすには十分だ。真一郎はウルブズパックを取り出し、

接続。モードグリップを一回ポンプし、黒星に向けて何度もトリガーを引いた。

 通常のシルバーウルフをはるかに上回る出力を誇るライフル射撃が、黒星に

炸裂する!

 強烈な射撃を嫌い、黒星は跳んだ。市街地での戦闘に移る構えだ。


「逃がしはしない!」


 真一郎はシルバーキーを引き抜き、シルバーウルフに挿し、グリップを

一回ポンプ。


『FULL BLAST!

 ONLY ONE ALPHA!』


 ウルズブパックの必殺シーケンスが発動。銃身に大気を歪ませるほど

凄まじい熱量を伴ったエネルギーが収束する。同時に、真一郎の視界には

ターゲットサイトが表示された。中心線とウルブズパックの照準システム

とが完全にリンク。真一郎はトリガーを引いた。


 放たれた光線は、オメガモードのそれよりも細いものだった。

 だが、それはどこまでも黒星を追跡していく。身をかわし、路地に

逃げ込み、また跳んでも、どこまでも。

 そして、ついにウルブズパックの弾丸が黒星を射抜いた。轟音を立てて、

黒星の体は吹き飛び、大通りまで落ちていく! 辺りに設置された壺や瓶を

破壊しながら着地! ダークマターの姿を見た通行人が、哀れな叫び声を

上げた。


「っふっふっふ。さすが、やりますねえ、園崎くん」


 壮絶な一撃を受けてなお、黒星は笑っていた。追いついた真一郎は、

その前に立つ。ウルブズパックのグリップを二回引き、油断なく黒星を

見据えている。


「これで終わりだ、黒星。

 向こうの世界での因縁も、ここで終わらせてやる!」

「おいおい、それはないだろう、園崎くん?

 まだこんなところでは終われないさ」

「いいや、終わるね。この距離で食らって生きて帰れるとでも?」


 いかに高性能、高出力の後期システムとはいえ、ベータモードの近距離

射撃を食らって生きていられるほど万能ではない。

 ダークマターのスピードでは、これを避けられない。その程度のことは、

この男も分かっているはずだ。それなのに。


(こいつはなぜ、これほどまでの余裕を保っていられる……?)


 真一郎は訝しんだが、しかしそれを気にしている余裕はなかった。

 その時だ、彼らが飛び出して来た尖塔が、凄まじい音を立てて崩れ始めた! 

真一郎は思わずそちらを見た、あの中にはまだリナもいるはずだ。


 何が起こっている。

 見て、再び真一郎は驚愕した。そこには、黒い影があった。人型の影が。


「どうなっている……!? あれは、いったいなんだ!」


 真一郎は狼狽えた。

 そして、その隙は黒星にとっては十分過ぎるものだった。黒星は音もなく

立ち上がると、横合いから真一郎を殴りつけた。予想外の攻撃を受けて

転がる真一郎、だが黒星は追撃をしない。黒星は住民と重なるように

位置取りをした。


「これも貴様の仕業か、黒星!」

「さあ?

 ここにいる私が、あそこにどうこうできるわけがないじゃないか?」


 黒星はそう言っているが、その顔は悪意にまみれたものだった。

少なくとも、この男があの事態に関わっているのは間違いないだろう。

真一郎は銃を向ける。


「いいのかい、ここにいて?

 あの神官ちゃん、死んじゃわないかなぁ?」

「……ええいっ!」


 真一郎は叩きつけるようにして照準を外し、跳んだ。

 黒星は変身を解除した。


「ありがとうコンラッドくん。

 キミがいなければ本気にならなきゃいけなかったよ」


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