第7章 幸せな時間
「もしもし・・・。」
「今、帰ってきたよ。ただいま。」克彦からのただいまコールだ。
「お疲れ様。今日も遅かったねぇ。疲れたでしょ。」
「もう、クタクタだよ。」
時間は深夜0時をとっくに過ぎていた。
克彦は、都心からかなり離れたところから毎日電車で通っていて、
仕事を終えて、電車で帰宅すると、いつもこのぐらいの時間になってしまっていたのだ。
なので「行き帰りの通勤だけで疲れちゃうよ。」というのが、彼の口癖になっていた。
仕事も忙しいらしく、終電に間に合うか間に合わないかのギリギリまで仕事をしては、
電車に飛び乗るということも多かったようだ。
それでも毎日家に着くと、亜美に電話をくれていた。
「疲れてるなら、無理に電話くれなくても良いんだよ〜。私は嬉しいけど・・・。」
「いいの。いいの。家に帰ってきて亜美の声聞くのが楽しみなんだから。」
「でも・・・明日も朝早いんじゃないの?」
「俺の楽しみを奪うの?」
「じゃ、今日は短めにしよっか・・・。」
そうは言っても、気が付くといつも一時間ぐらいは、あっという間に時間が経ってしまっていた。
「ね〜また今日も何時間も寝られないよ〜。」
「大丈夫、慣れてるし。電車の中で寝ていくから・・・それより、今週末は一緒に居られそう?」
「うん。大丈夫だよ。今週末は一緒にいようと思って、予定入れてないから。」
「じゃ、いつものようにホテルの予約お願いして良い?」
「うん、良いよ。いつからいつにする?」
「そうだなぁ。少しでも長く一緒にいたいから、金曜から泊まって月曜そのまま会社行こうかな。亜美はそれでも大丈夫?」
「良いよ。じゃホテル予約しておくね。」
もともと克彦は、飲み会がある時などは、タクシーで帰るより泊まったほうが、楽だし安いといって、ホテルを使う事が多かったようだ。
そして二人とも実家暮らしだったこともあり、月に何度かは予定を合わせてホテルを予約し、一緒に過ごしていたのだ。