「星々を喰らう蛇」 - 8
帰り道と少年の自爆シーンがあります。
今日はカフェでそれぞれが何をテーマにして調査するのかを決めた後、用心してすぐに帰宅することにした。
ジュン、マキ、イオリちゃんとは帰る方向が逆だったけど、彼らの通る道は広いし人通りも多い。
問題は僕の方だ。人気の無い道を通らないといけない。
午後7時。
暗い夜道を用心しながら、歩を進める。
(身の危険を感じたらすぐに逃げよう。)
そう思って歩いていると、道の向こうからボロボロの汚れた服を来た少年が走って来た。
すごく必死の形相で。
そして、僕の10m前くらいで足をもつらせて転倒した。
助け起こして上げようと近づこうとすると、その少年はすぐに立ち上がり、
僕を一瞬チラリと見たが、後ろを振り返りつつ僕の横を急いで駆け抜けていった。
(どこの子供だろう。
この地域にはあんな格好をした子供は見かけたことが無いなぁ。)
不思議に思いつつも歩いていく。
すると、しばらくして前から特別警察隊が数名銃を抱えたまま走ってきた。
そして僕の前で立ち止まり、話かけてきた。
「今、この道を少年が走ってきただろう。どっちへ行った?」
「あっちです。」
そう言って、僕は反射的に少年の走っていった方を指さした。
すぐに特別警察隊員達が少年の去った方へ走って行き、あっという間に
見えなくなった。
その後、ちょっとしてサイレンの音と数発の銃声が聞こえた。
元来た道の方から聞こえているようだった。
気になったので元来た道を走って戻り、広い道のところまで出て
離れた所から様子を伺った。
すると、さっきの少年が特別警察隊に取り囲まれていた。
近くには野次馬が集まっているが、特別警察隊員が
道を塞いている。
「大人しく投降しろ!」
特別警察隊が銃を構えつつ、どんどん距離を詰めていく。
(何だ、何だ?あの少年は何をしたんだろう?)
辺りが緊迫した空気に包まれている。
野次馬達は携帯端末を向けて少年と特別警察隊員の様子を記録している。
少年は最初は怯えた表情をしていたけど、急に何かを覚悟したような顔に
変わり、目付きが険しくなった。
その刹那―
少年が服の中から何かを取り出そうとした。
すぐに特別警察隊がマシンガンを発砲し、少年は身体中から血を流して
倒れた。
何が起きたのか一瞬理解できなかったが、激しい連続した発砲音と、血を見たことで胸の鼓動がいつもの何倍も速くなっているのを自覚した。
そして少年が手に持っていた塊が転がった。
特別警察隊員の一人が叫んだ。
「爆弾だーーーーー!!」
一斉に野次馬が逃げ出し始め、特別警察隊員も急いでその場を立ち去ろうとしたが、それを待たずに塊が爆発した。
ドォォォォォン!
(うわーーーーーー!!)
少し離れたところにいたのに、僕は爆風で後ろに飛ばされ身体が宙に浮いた。
一瞬、野次馬数名と少年の近くから逃げようとした特別警察隊員数名の身体がちぎれ飛ぶところが見えたが、そのすぐ後に僕は受身を取れずに地面に叩きつけられ、背中を強打した。
うずくまっていると、何かの破片が飛んできて身体に当たったのがわかった。
そして周囲の建物の一部が崩れ落ちる音が聞こえた。
・・・
ちょっとして、当たりに立ち込めた煙が消え去っていく。
運が良かったのか、僕のいたところには崩れ落ちた建物の破片が上に落ちては来なかった。
耳がキーンとして何も聞こえなくなっていたが、ゆっくりと立ち上がった。
身体には熱風での火傷や背中を打ったときの傷ができていたが、このときはそんなことにも気づけずにいた。
呆然として立ち尽くす。
ガレキの山ができ、ガレキの下から手、足、頭が見えている。
あちこちに負傷者が倒れ、血の水たまりが出来ている。
救急隊の電気自動車がやって来て、救急隊員が負傷者を電気自動車に乗せ始めた。
身体がちぎれ飛んだ野次馬と特別警察隊員は廃棄処分用のボックスに集められていく。
救助用ロボットがガレキを取り除いて、ガレキの下敷きになった人たちを
助けだしている。
(人が死んだんだ・・・)
塊を取り出した少年の姿は、跡形も無く消えていた。
そこには大きな穴ができ、そのまわりの建物の壁や地面には亀裂が入っていた。
特別警察隊の電気自動車も爆風で液晶ガラスが粉々に割れて、車体が変形していた。
(僕のせいなのか・・・ 僕の・・・・)
救急隊員が立ち尽くしていた僕に気づき、何か話しかけてきたが僕の耳が爆発でまだ聞こえない状態になっていたことに気づき、電気自動車に乗るようにジェスチャーで促す。
僕はひどくショックを受けながらも促されるままに救急隊の電気自動車に乗った。
続きます。