「星々を喰らう蛇」 - 21
戦艦が地球を離れる 第一章のラストのシーンです。
ブリーフィングルームには巨大なテーブルがあり、やはり髑髏のヘルメットをかぶったクルーが8人ほど座っていた。
一番奥の席に座っていた男性が立ち上がり、僕らに声をかけた。
「マサル、良くやった。そして後ろの三人とも、良く来てくれた。」
「僕らは連れてこられただけです。」
「真田ユキヒト君、すまないな。橘イオリさんも。」
「真田って何ですか?僕の名前にはそんなものありませんよ。ねぇ、イオリちゃん。」
「ええ。私も橘なんて名前じゃありません。人違いじゃないですか?」
「ユキ、イーちゃん。たぶん何かをキーにして思い出してくれるだろう。完全に記憶が消されてないのなら。小林艦長、一旦地球を離れるのですか?」
「ああ、そうなる。もう先ほど統一政府と開戦したからな。本当なら、直接統一政府本部をすぐにでも狙いたいのだが、やつらも強力な兵器で武装している。一筋縄ではいかない。一旦スペースコロニーに戻る。こうして切り札も手に入ったからな。」
「艦長、ユキヒトもパイロットとして使うのですか?」
「ユキヒト君のことはお前にも教えただろう。アレに適合する可能性がある。もし適合した上で味方になってくれたらこの戦争をすぐ終わらせられるんだ。」
「ですが・・・・」
髑髏ヘルメットの女性クルーが小林艦長という男性に話しかける。
「艦長!開戦宣言の映像データが届きました。地球全土にジャックして放映したものです。」
ピーッという音がして、立体映像が表示される。
映像には、黒いコンバットスーツを身に着けた初老の男性が映っていた。
その男性は髑髏ヘルメットをかぶっていなかった。
「おお、大統領だ。」
ブリーフィングルーム内のほかのクルーたちが声を漏らす。
「我々は、人類。お前たち新人類を名乗る傲岸不遜な存在によって、母なる惑星『地球』を追い出された存在だ。」
僕は目を白黒していた。
(え?どういうことだ?さっきマサルもオールドジェネレーションって呼ばれてたけど、僕らと同じネクストジェネレーションじゃないのか?)
映像は続く。
「お前たち『ネクストジェネ#%@!”ン』によって散布され#%@!”#%@!”#%@!” よって、我々の同報#%@!”#%@!”」
途中で映像と音声がおかしくなった。
「くそっ、いいとこで統一政府がジャミングを入れやがったな。」
小林艦長が声を荒げる。
「93億#%@!”命を奪い、残った人類をマタノ#%@!”#%@!”#%@!”#%@!”、お前たちの行いを我々は許すことはない!
我々は神話にある黒い蛇を旗印に掲げ、地球をお前たちの手から我々#%@!”取り戻す。ここに我々人類は開戦を宣言する!]
初老の男性の後ろに「黒い蛇」をシンボルとした巨大な旗が表示された。
「お前たちが降伏し、地球を我々が取り戻す日まで#%@!”戦いが終わらないことを知れ!星々を#%@!”黒い蛇とともに、世界に終焉と再生を!」
初老の男性が右手の拳を胸の中央に当てる。
その瞬間、クルーとマサルも右手の拳を胸の中央に当てた。
そこで映像が終了する。
「そんな、戦争だなんて!」
「野蛮だわ!話し合って解決できるでしょうに!」
僕らが声を上げる。
「君たち二人も、我々人類であることを忘れているだけだ。」
ピーッという音がして再び女性クルーが小林艦長に声をかける。
「戦場の映像が出ます。」
地上で放映されているのか、立体映像のニュースが表示され、僕とイオリちゃんは息を呑んだ。
A-15地区の統一政府軍の演習場は瓦礫の山と化していた。
ところどころ人型ロボット兵器の残骸や一部だけ原型をとどめているVTOLや装甲車両が映っている。
黒こげの遺体や、血でできた川、瓦礫の下から生える手や頭も写されていた。
竜二が「やった!」と声を上げてガッツポーズをした。
「ひどい・・・・。どうしてこんな・・・。」
イオリちゃんが口を押さえる。
僕はなんて言ったらいいか、わからない。
呆然と下を向いて立ち尽くす。
「真田君、橘君、君らも我々もオールドジェネレーションと呼ばれる存在。かつて三千年前地上にいた人類なのだ。
ネクストジェネレーションと呼ばれる新世代の連中が、我々の同胞を殺し宇宙へ追いやった。
いや、マタノゴリアには宇宙へ逃れられる前に捕らえられた我々の仲間の子孫たちがいる。
君らも前はそうだったように。」
「艦長、二人にはまだ話が早すぎます。一旦居住区の一部に隔離して少しずつ歴史の真実を教えていきましょう。俺もあのときは話が飲み込めませんでしたから。」
「そうだったな。」
「いこう、ユキ、イーちゃん。竜二も来い。」
イオリちゃんが取り乱す。
「パパは!?ママは!?二人に連絡を取らせて!」
「それはできない!」
「そんな・・・」
「イオリちゃん、ここは従おう。イオリちゃんのパパとママも絶対無事だよ。
僕らの街にも災害用の大きなシェルターがあるでしょ?軍も警察も他のたくさんのエリアに存在するから。」
そういって、僕は自然とイオリちゃんの肩を抱きながらマサルたちについて行った。
イオリちゃんがポツリとつぶやく。
「生きてるわよね・・・絶対・・・」
「ああ、大丈夫さ。」
竜二もついてくる。
「イーちゃん。統一政府が降伏すればすぐに戦争も終わるさ。戦争終結のための切り札はここにいるからな。例え敵でも、俺たちは非戦闘員の一般人を理由無く狙ったりしない。約束するよ。」
フォローのためか、マサルがそうイオリちゃんに声をかけた。
そしてそのまま、居住区のある一角の部屋に僕とイオリちゃんは閉じ込められた。
ほこりっぽい部屋だ。
二つのベッド、テーブルとイス、シート、モニター・・・それだけしかない。
自分の家の部屋が懐かしく感じる。
館内アナウンスが流れた。
小林艦長の声だ。
「『デミウルゴス』の乗員全員に告ぐ。我々はこれから一旦スペースコロニーに向かう。補給が済み、戦力が整い次第再度地球へ戻り、作戦を開始する。
作業中のハンガー内のクルーは作業を中止して一旦ハンガーから退避。他のエリアのクルーも同様だ。宇宙空間に出ると同時に人工重力発生装置が作動するが、作動まで少しの間無重力状態になる。全員シートに身体を固定しろ。」
戦艦全体がゆっくり上昇し始めた。
僕がイオリちゃんをベルトでシートに固定してやる。
イオリちゃんがポツリと漏らした。
「パパもママも生きてるわよね。」
「ああ、次に地球に来るときに隙を見て逃げよう。そして僕らの家に向かおう。今はタイミングが悪い。」
「うん・・・・・。ありがとう、ユキヒト君。」
イオリちゃんが少し笑顔になってくれた。
本当なら照れるところだろうけど、そんな気分じゃなかった。
自分の身体もシートに固定する。
部屋についていたモニターに地上が映し出されているが、どんどん小さくなっていく。
「父さん、母さん、ハルナ、どうか無事でいてくれ・・・」
地球を離れていく戦艦の中で、いつも何気なく接していた父、母、妹の姿が思い浮かび、涙をぐっと堪えた。
絶対に家に戻るとイオリちゃんと自分に固く誓いを立てて。
第一章 完
第二章「西暦2334年」はプロットを一旦練り直して、第一章よりもしっかりやっていきます。
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