「星々を喰らう蛇」 - 19
戦闘シーン終了です。
「やつの機体は兄弟機・・・・なるほど、だからか・・・
敵もバカじゃない、だからこの一機で来たんだな・・"EYES"の通用しない機体で・・厄介な敵だ」
マサルが冷や汗を流している。
「EYES」とは何を指すのだろうか。
イオリちゃんとしゃがんで衝撃に耐えながら、そう思った。
急にコカトリスは進行方向を変えて良子とクルーゼの方に向かった。
「良子、クルーゼ、まずい!一旦距離をとるんだ!奴に『EYES』を使われる!」
「もう遅い!!ウイルスは周囲に散布済みだ!『EYES』展開!!」
モニタ内の良子とクルーゼが同時に声を上げた
「え、ちょっと!?何よ、これぇ」
「くそっ、操縦不能だ!機体が落下しちまう・・・」
「いやぁぁぁぁぁ、何とかしなさいよ!マサル~!!」
「まずいっ!死ぬっ!」
良子とクルーゼのミヅチは突如空中で動きを止め、そのまま自然落下していく。
地表がどんどん近づいていく。
「イオリちゃん、ユキヒト、竜二、ちょっと衝撃がきついかもしれないが、耐えてくれ!くそっ、間に合えーー!!」
コックピット内に機械的な声が響いた。
「エヌコネクトヲカイシシマス、パイロットハコウソクイドウノジーニソナエテクダサイ」
その声がした次の瞬間、僕の身体中にすごい力がかかり、後ろの壁に押し付けられる。
隣のイオリちゃんもすごく苦しそうだ。
竜二もシートに押さえつけられている。
僕らの乗る機体が細かく振動する。
バジリスクと二人のミヅチ、そしてコカトリスまで、どれくらい距離があっただろうか。
バジリスクは急加速を開始して、コカトリスに近づいていく。
(すごい加速だ、身体がきつい・・・・痛い・・・)
モニタに映るコカトリスの姿がじょじょに大きくなっていく。
突如、バジリスクの機体の下の方から何かナイフのようなものが数本飛び出し、コカトリスに向かって放たれた。
コカトリスが数本防いだが、内一本が機体の後ろから出ていた何かに刺さり、小規模な爆発をする。
そこでバジリスクの加速が一旦解除されてGから解放され、僕とイオリちゃんは肩で息をする。
落下して地表に向かっていた良子とクルーゼのミヅチは途中で持ち直したが、上昇しきれず、ズンという轟音とともに最大落下速度には程遠いが山の斜面に衝突した。
「いったぁーーーー、何よ、もう!マサルの役立たず!」
「いってーーーー、つーーーーーっ、ショックアブソーバーがなけりゃ死んでるぜ、これ・・」
二人ともうめき声を上げたが、良子とクルーゼは助かったようだ。
「竜二、高周波クナイはもう一本あるな!?」
「うん、最後の一本だよ!」
モニタのジュウベェが驚いた顔をして声を上げた。
「おお、クナイ。ニンジャ仕様とは!そして『EYES』の発信装置を一撃で正確に破壊するとはな!」
ジュウベェが嬉々とした声を上げる。
強い相手を前にして気分がいいというやつじゃないだろうか。
ジュウベェが機体を高速移動させ、こちらに向かってきて剣を振り回す。
バジリスクは「クナイ」というナイフで防御しているが、防戦一方だ。
一瞬でコカトリスが連続の突きを放ち、回避できずに一度僕らの機体を貫通する。
バジリスクの機体が破壊され、後ろの方が爆発した。
機体が揺れる。
「こちらの『EYES』も破壊された!くそっ!」
マサルが声を上げた。
そして剣が今度は僕らの乗るコックピットに向かってくる!
「もらった!そりゃぁぁぁぁぁ!」
「くそっ、間に合わない!」
「ダメだ!やられる・・・イオリちゃん、伏せて!」
僕が声を上げた次の瞬間のことだった。
剣がピタリと動きを止めた。そしてコカトリスが小さく距離をあける。
「何ッ!?軍事基地が攻撃を受けている?くそっ、いいところで・・・。おい、パイロット!お主の名は?」
「マサル!近藤マサルだ!」
「フッ、オールドジェネレーションは姓があるのだったな。骨のある奴よ。覚えておくぞ、マサル!この勝負はひとまずあずける!だが、次こそは必ず!ジュウベェの名、忘れるなよ!」
そのままコカトリスは僕らの横を通ってどこか別の方向へ高速で飛び去っていった。
マサルが安堵のため息をつく。
「やばい相手だった。機体能力は互角でも、完全な状態であいつに勝てていたかどうか・・・・」
「さっさと引き上げよう、兄ちゃん」
「ああ」
僕らはみんな憔悴しきった顔をしていた。
モニタに良子とクルーゼの姿が映った。
二人とも怒っているようだ。
「ちょっと!マサル!さっきのあれは何よ!?」
「この野郎、先に教えとけよな!」
「二人ともすまない。『EYES』はこの機体と奴の機体だけの装備なんだ。お互いに兄弟機だけが影響を受けない。
ウイルスを散布して周囲の敵機体を制御不能にする。俺の判断ミスだ。」
「死んだらどーする気よぉ~生きてるからいいけどさ~」
「貸し2だからな!」
良子とクルーゼが不満の声を上げた。
「わかってる!さっさと燃料チャージしてランデブーポイントに向かおう。」
「あいつらの軍事基地に、うちらの別部隊が攻撃しかけてるみたいね。」
「ひとまず空中で燃料チャージする。コンテナの燃料チャージユニットは予備のやつが無傷で近くに落下しているはずだ。
拾い上げて俺の機体に空中で接続してくれ。俺の機体じゃ、地上に立てない。」
「ったく・・・。俺がやるよ。VTOLも、装甲車両も急いで引き返したみたいだな。」
「俺たちも急ごう」
そして、バジリスクは空中で燃料チャージユニットを接続し、良子、クルーゼのミヅチがバジリスクを支えて護衛しながら、僕とイオリちゃんは彼らの目的地まで連れて行かれた。
いつの間にか、追跡して来ていた装甲車両や、VTOLも一旦軍事基地の護りに向かったのだろう。
見えなくなっていた。
続きます。