「星々を喰らう蛇」 - 17
戦闘シーンです。
僕とイオリちゃんは体をワイヤーで固定されてコックピットの後ろに座らされた。
イオリちゃんが、やっと目覚めた。
僕の身体もやっと動かすことができ始めた。
「ユキヒト君、みんなは?」
「ヤスタカさんと、ケンイチさん、ヨシノブ先生はあいつが殺してしまった。」
「どうして・・・マサル君、どうしてよ!」
「マサル、もう取り返しがつかない。君は人を殺してしまった。」
「じゃあ、マキは!?ジュン君は!?」
俯くイオリちゃんをそばで気遣いながらイオリちゃん、そしてマサルに話かける。
「イオリちゃん、マキちゃんとジュンは逃げたから多分無事だよ。それにもうすぐ特別警察隊の援軍も来る。軍隊だって。マサル、投降した方がいい。軍隊が動き出したら、君たち二人の命は補償できないぞ。」
マサルと竜二が僕らの声を無視して、コックピットで操作を始めている。
「コネクト!戦闘用プログラム、制御用プログラム、通信プログラム、アップデート開始!」
「了解、兄ちゃん」
竜二が何かをトランクから取り出した。
(あれは・・・ナノマシンメディアだ。でも、見たこと無い形だ。
ゲームとかのナノマシンメディアだと、球体のようなナノマシンの結合体を本体にインストールするんだっけ。
メディアの結合がほどけて、データを搭載したナノマシンが中に浸透するんだよな。
液体が染みこんでいくような感じだけど、もっと速く。)
「マサル兄ちゃん、操縦はまかせていいの?」
「こいつを実戦で使うのは初めてだが問題ない。シミュレーターのスコアは僕が3位だ。」
「任せたよ!」
「ユキ、イーちゃん。これから戦闘になる。黙って座っていてくれ。文句は後で聞く。」
「マサル兄ちゃん、インストールOK!」
急にカンカンカンという何かが跳ね返るような音がし、周囲から爆発音が聞こえてきた。
まずモニタに映ったのは、何機もの軍用VTOLだ。
下部モニタには、特別警察隊の隊員も20人くらい列を作ってこちらに向けて発砲している。
軍の装甲車両もあった。
「あれは・・・N弾とW弾搭載の銃座がある装甲車両に、中型レールガンまであるのか。軍用VTOLは12機いて、敵の援軍も近づいて来ている・・ちょっと厄介だな。軍用VTOLもN弾とW弾のガトリングガンにミサイル装備の戦闘仕様・・・」
「脱出できる?」
「心配ない。・・・三号機、『バジリスク』・・・イグニッション!」
すぐに機体が大きく動き出し、「ドン」という音や「ヴーーーー」という音が何回も響いた。
それとは別に爆発音が次々に聞こえる。
かと思えば、急に浮遊感を身体に感じ、僕らの乗る巨大ロボット兵器が軍用VTOLと同じ高さまで上昇して軍用VTOLを撃墜していく。
(何てことだ・・・こんな恐ろしい兵器だなんて・・・)
何度も爆発音がして機体が揺れた。
僕とイオリちゃんが固唾を呑んで戦闘の行く末を見守る。
ドォォォンという音がして、大きく機体が揺れた。
「うわっ!」
「キャッ!」
「右下腿部被弾!損傷大、パージ!」
被弾したようだ。
「くっ、やはりコックピットの衝撃を気遣いながらだと思うように動けない。」
「マサル兄ちゃん、本部に交信可能!」
「本部、本部、聞こえますか。こちら三号機、マサルです。目標は確保しました、このまま突っ切ってランデブーポイントに向かいます。」
「こちら本部。了解。マサル、バーニアの燃料は大丈夫か。」
「もたせます。俺はNコネクトが使えるので機体反応速度はシミュレーターより最大1.5倍までアップできます。でも、急がないと燃料消費が危ないし、ユキヒトとイオリちゃんがいるコックピットの衝撃も考えて高速回避行動ができません。ここ一番の戦線離脱用に燃料温存しながら飛んでます。バックアップは?」
「今、クルーゼと良子のミヅチがそっちに向かっている。中型の浮遊コンテナも一緒だ。二人にガードさせて空中で燃料をチャージしろ。マサル、生きて帰って来いよ!良子!お前がジャミング担当。クルーゼは援護射撃で弾幕を張れ。敵の殲滅よりも撤退を優先。やつらのVTOLも速度に限界はある、逃げ切れ!」
「了解!マサル~、苦戦してんじゃん!」
「マサル、貸し1な!」
「わかってるよ、良子、クルーゼ。」
「兄ちゃん、やつらのN弾がシールドを貫通してる!左前腕部も結構もらってるよ。もう左前腕部の攻性ナノマシン侵食率が50だ!」
「わかった!竜二、そのままステータスチェックを頼む!」
それから15分くらいたっただろうか、僕らの乗る『バジリスク』という機体は戦闘しながら飛行を続け、軍用VTOLや軍の装甲車が続々と数を増やして僕らを追っている。
爆発音や機体の振動は止まることが無い。
すると、僕らの向かっている方向のモニタに二機の人型ロボット兵器が飛行してきているのが分かった。
続きます。