「星々を喰らう蛇」 - 16
やっとロボット兵器登場シーンです。
マサルが驚いて発砲しかねないので、少しずつ用心しながらイオリちゃんと一緒にマサルと少年の方へ歩いていく。
マサルと一緒にいたレインコートの少年が腰からナイフを取り出してこちらに構えている。
「マサル・・・、君はやはりテロリストなのか・・・・」
「マサル君・・・」
銃を向けたままマサルが返す。
「二人とも・・やはり覚えてないんだな・・・マタノゴリアから脱出したあの時にお前たち二人を置いて逃げるしか無かったからな。あいつらに記憶を改ざんされているんだろう。」
「何のことかわからないな。マサル・・、そしてレインコートの君も・・・特別警察隊からテロリストとして追われているんだろう。バカなことしちゃいけないよ。自首すればきっと皆もわかってくれるさ。」
「武器を置いて・・ 私たちはあなたたちの敵じゃないわ。」
「昔から変わってないあまちゃんだな。ユキもイーちゃんも・・・。今は説明する時間が無い。もうすぐこのエリアを回っている特別警察隊員たちが俺達の仕掛けを破ってここに来る。戦闘になるだろう。ユキ、イーちゃん・・一緒に来てくれ。」
「それは無理だよ。僕らの家族だって賛成はしないさ。」
「マサル君、争う気は無いわ。武器を捨てて。」
「ユキ」という名前を聞いたとき、ふと何かが頭の片隅にひっかかった。
「イーちゃん」というのはイオリちゃんのことだろうか。
それもどこかで聞き覚えがあるが・・
レインコートの少年がナイフを構えたまま距離を縮めてくる。
「マサル兄ちゃんの知り合いなら手荒なことはしたく無いけど、騒がれても困る。」
「竜二、怪我はさせるな。麻痺させるだけでいい。二人は俺が担いで三号機に乗せる。」
とっさにイオリちゃんをかばって前に出る。
竜二が走ってきてナイフを振り回す。
揉みあいになり竜二の腕を押さえようとしたが、相手のナイフの刃の無い部分が体に触れた。
「バチッ」という音がして、体に痛みが走りそのまま倒れてうずくまった。
「キャッッ・・・・」
後ろでイオリちゃんが倒れた。彼女も同じ目にあわせてしまった。
イオリちゃんは失神しているようだ。
僕はなんて無力なんだ。
体が痺れて動けない。
「マサル・・・お前・・・」
「スタンナイフ・・痺れているだけだ。心配はいらない。今はこうするしかない。」
マサルが携帯端末を操作して何かしている。
「武器を捨てろ!」
特別警察隊員のヤスタカさん、ケンイチさんが銃を構えて近づいてきた。
(良かった!ヨシノブ先生、ジュンとマキちゃんもいっしょだ。)
「やっぱり来たな。お前がユキヒトを奪取しようとしている件は気づいていたぜ。」
「マサル、あなたの通信は途中から傍受できていたのよ。」
「チッ!」
「ユキヒト・・・ 無事か?」
「イオリ・・何てひどい・・」
無言でゆっくり頷く。
ヤスタカさん、ケンイチさんが銃をマサルたちに向けたまま携帯端末で通信している。
「こちら、オールドジェネレーションの元居住区、エリア内北20、東30です。テロリスト発見!近くに仲間がいるかもしれません。応援求む。」
「了解、こちらも急行する!軍にはこちらから連絡を入れる。」
「了解」
特別警察隊の援軍が来るようだ。
「マサル兄ちゃん!」
「竜二・・・わかっているな・・・1分だ。」
マサルがすばやく携帯端末で何かのアプリを起動して端末を放り投げた。
そしてマサルと竜二が武器を捨て、二人に組み伏せられる。
「テロリスト二名の身柄を確保する!」
「ヤスタカ、手錠を出せ!」
「残念だが、お前らには捕まえることができない。」
「何ッ!」
マサルと竜二が組み伏せられ、手錠をかけられようとしていた時のことだった。
「ゴゴゴゴゴゴゴ」という音がして地面が揺れ、一部がゆっくり隆起し出した。
竜二がとっさに隆起した大地の裂目にかけ上げっていき、中に飛び込んだ。
裂目から露出したそれは、巨大な人型のロボットだった。
竜二が胸部のコックピットと思われる部分に乗り込み、ハッチを閉じた。
そしてマサルがすばやく落ちていたナイフを使ってヤスタカさんの首を切り裂き、拾った銃でケンイチさんの頭を撃ちぬいた。
血が飛び散り、二人の体が地面に倒れる。
「逃げろ!マキ!」
ジュンとマキが建物の陰に走って逃げ込む。
(危ない!マサルがジュンとマキの方へ銃を向けた!)
「ヤスタカさん!、ケンイチさん!・・・ くそぅ、テロリストめ!」
ヨシノブ先生がヤスタカさんの銃を拾い上げ、震えながらマサルに向けた。
マサルが銃口の向き先をヨシノブ先生に変更した。
「先生、あなたの授業は面白かったですよ。嫌いではない。
だが、あなたも所詮ネクストジェネレーション。
あなたの語る史実は、全て間違いだ。
真実を知れば、我々オールドジェネレーションとネクストジェネレーションが分かりあうことはできないことも理解できるでしょう。
統一政府が裏で何をしているのかを。」
「貴様、オールドジェネレーションか!」
「ええ、だが俺の体はあなたたちと何も変わらない・・・。」
「マサル兄ちゃん!敵の援軍が来るよ!」
人型のロボット兵器から、竜二の声が聞こえた。
「目的を達成するために、邪魔が入っては困る。さようなら、ヨシノブ先生。」
「パァン!」
マサルがアサルトライフルでヨシノブ先生の胸部を撃ちぬいた。
そして、ヨシノブ先生が倒れた。
「くそっ・・・イオリちゃん・・・君だけでも、俺が守る・・・」
イオリちゃんの元に這っていこうとするが、うまく動けない。
まだ麻痺が解けない。
「ユキ、イーちゃん。ごめんな。」
「マサル兄ちゃん、早く!奴らが来る!」
「ああ!」
竜二が人型ロボットを膝まずかせ、コックピットのハッチを空け、中に入るよう促す。
マサルがすごい力で僕とイオリちゃん二人を担ぎ上げて、ジャンプした。
体が浮遊する感じを受け、数秒後に着地の衝撃を感じた。
僕らは人型ロボットの手の部分に乗っていた。
手がゆっくりとコックピットに近づいていき、僕とイオリちゃんは担がれたまま
コックピットの中へ押し込まれた。
ハッチが閉じる。
コックピットの中は、まるで戦争ゲームのコックピットそのもの。
さまざまなモニタ、レバーやボタンが並んでいるのが見えた。
続きます。