「星々を喰らう蛇」 - 15
遊園地のシーンです。
イオリちゃんと話ながら歩いた。
もう普通のクラスメートの関係じゃない。
(この関係は何と呼べばいいのだろう。友人・・・かな。
イオリちゃんが僕をどう思っているのか知りたい。
でも、何とも思われてなかったら・・・)
話ながら、脳の中の僕はそんなことを考えていた。
そして開けた場所についた。
「あ、ついたわ」
20分くらい歩いたが、遊園地についた。
UFOの発見現場にいきたいのはやまやまだが、隣にいるイオリちゃんはちゃんと調査もしようと言ってくれた。
彼女を裏切っちゃいけない。
これもチャンスなんだから。
電子ブックレットを取り出したイオリちゃんが、小型の立体映像を出して
説明してくれる。
「あのゴンドラのようなものが観覧車、あっちがコースターって言うらしいわ。」
「へぇ~。どれももう何千年も経ってるからボロボロだね。」
「あれが・・・メリーゴーランドかしら・・・」
「あの傾いている建物って、ロケットってやつかな?」
「ちょっと待って。」
イオリちゃんが携帯端末を取り出して建物に向け、スキャンした。
数秒後、携帯端末の立体映像に詳細なロケットの情報が表示される。
「うーん。オールドジェネレーションは宇宙にも行ってたんだね。」
「人口爆発とかの問題で、他の惑星に移住する計画を立てていたみたいね。」
「うんうん」
歩いていって、メリーゴーランドの近くにいったとき、僕の頭の中に何かの映像が見えた。
まわるメリーゴーランド。
二人の少年と少女が馬車に向かい合って乗っている。
少女が「面白いね、レオ」と声をかけると
少年が「そうだね、マリア」と返事した。
二人ともいい笑顔だ。
何歳かな?
そしてそのまわりに彼らを見守る優しげな感じの初老の男性と、彼らよりも年上と見える黒髪の少女の姿もあった。
「パパー、お姉ちゃーん。」
二人が男性と少女に向かって手を振った。
ふいに映像が途絶えた。
何だろう・・・
このメリーゴーランド、見覚えがあるような。
メリーゴーランドに近づいていき、周りを歩いてみる。
欠けてはいるが、映像の中に出てきたロゴも、今見ているメリーゴーランドのロゴも似ている。
うーん・・・僕の脳の中のナノマシンメモリーにノイズが入ったのかもしれない。
まれにあるらしいからなぁ。そういうの。
僕の脳も一部はナノマシンになってるんだし。
イオリちゃんが近づいてきた。
「どうかした?」
「いや、多分脳のナノマシンメモリーにノイズがね・・・」
「大丈夫かしら?」
「うん、大丈夫だよ。」
「もし具合が悪くなったら病院にいってね。」
「ありがとう。大丈夫だから。」
そう答えたとき、また映像が見えた。
さきほどの少年と少女が男性と黒髪の少女に手をつなぎ、ロケットの方に歩いていったのだ。
実際の風景と重なり、僕はその映像を追って歩いてみる。
イオリちゃんが不思議そうに後を着いて来る。
ある乗り物のところでまた映像が消えた。
辺りを見回す。
すると、今度は映像じゃなかった。
工事現場で見かけたレインコートを着た少年と誰かが離れたところで話をしている。
目をこらして見ると、相手は黒いコンバットスーツを着た僕らと同じくらいの少年・・・
手にはアサルトライフルを持っていた。
レインコートの少年が話していたのは、「マサル」だった・・・
もう隣まで来ていたイオリちゃんが、僕と同じものを見てマサルに声をかけようとしたので手で口を塞いだ。
「シッ!ちょっとゆっくり近づいてみよう・・・」
イオリちゃんもマサルがテロリストではないかという話を聞いたのだろうか。
静かに首を縦に振った。
ゆっくり、ゆっくり近づいていく。
「竜一の件は、残念だった。」
「竜一は戦士だったよ。あいつらを一人でも多く倒せたんだもん。」
「地球に留まってスパイ活動で協力してもらうように頼んだのはウチの連中だからな。すまない。危ない目にあわせるようなことはさせない約束だったのに。」
「いいんだ。僕らが勝てれば、全部元通りだもの。」
「そろそろ開戦が近い。お前も俺たちの戦艦に来るだろ?」
「うん。」
「ん?通信が入った。ちょっと待ってくれ・・・ 『こちらマサルです。はい、ええ、ターゲットは記憶を消されています。昔のことも覚えていませんでした。何とかあいつを確保してもう一人の幼馴染の女の子も仲間に引き入れたいんですが・・・ ええ、承知してます。こっちには三号機も隠してあります。
最悪の場合でも強襲をかけて二人を奪取して地球を脱出します・・・ はい、2時間後に・・・ はい、黒き蛇と共に世界に終焉と再生を!』」
途中から何を言っているかわからないが、もう少し近づこうとしたとき足元のコンクリートブロックを蹴ってしまった。
「ガッ」という音がして、マサルがこちらに向けて銃を構える。
続きます。