「星々を喰らう蛇」 - 13
あの場所で少年に似た姿を見かけるシーンです。
歩いていると、あの場所が近づいてきた。
事件現場の周辺は修復工事中でブラインドがかかっていたり、工事用ロボットがせわしなく動いたりしている。
監視員が野次馬たちの立ち入りを禁止して、追い払っていた。
爆発でできた巨大な穴は結構修復が進んでいる。
立体映像の放送局のクルーとレポーターのナミエさんまで来ていた。
ナミエさんの近くにも野次馬が集まっており、クルーが抑えている。
「ここが事件現場です。テロリストの一味と思われる少年は、特別警察隊員の呼びかけに従わず、抵抗。止む無く隊員が発砲しましたが、少年の所持していた爆発物が爆発し、隊員3名が犠牲となりました。
我々はテロリストの卑劣な破壊活動に対して毅然とした態度で闘わなければいけません。
テロリストの一味が周辺に潜伏しているという情報も流れており、特別警察隊員と軍が協力して、周囲の警戒にあたっています。」
ナミエさんがレポートしていると、また数台の警察の電気自動車が広い道を通っていった。
広い道からナミエさんとナミエさんが差していた赤い傘に目をやり、そこから周囲に視線を戻したとき、クルーや野次馬たちから少し離れたところに、レインコートを着た少年の姿を見かけた。
少年は事件現場を離れたところからずっと見ていた。
そして、立ち去ろうとした。
一瞬、その少年の顔が、昨日自爆したあの少年の顔に見えて僕はすごく驚いた。
近づこうとしたとき、広い道をサイレンを鳴らしながら警察の電気自動車が通り過ぎていった。
僕がそちらに目をやった隙に、その少年は路地裏の方へ逃げ込むように進んでいった。
(あの顔、やっぱりあの少年だ。
どういうわけかわからないけど、生きていたんだ!)
小走りで、少年の後を追った。
そして、僕が路地裏に着いたとき、その少年の姿は跡形もなく消えていた。
「幻・・・ か?いや、これは。」
路地裏に小さな白い花が落ちていた。
そういえば、さっきの事件現場の端にこれと同じような花が2,3本置いてあったような気がする。
あたりを見回しても、もう人の気配がない。
白い花を拾い上げ、僕は元の道に戻って帰宅した。
生きているのだとしよう。
そう考えた方が、僕の心の枷のようなものが外れて楽になれるから。
・・・
家族で夕食を取っているとき、家族に明日友達三人とハイキングにいくことを家族に告げた。
勿論、本当はUFO見学のために禁止区域に入るとか言えない。
父と母は、遅くなるなら必ず連絡を入れるようにと何度も言った。
妹はまたいつも通りで、会話が無くなった。
白い花は、こっそりと自分の部屋に持って行き、花瓶に挿した。
白い花について、端末でスキャンしたけど、自然に植物が生えているエリアで採取されたもので、特に珍しくは無かった。
僕は、いつもより早めにシャワーを浴び、自分のサイトにUFOの情報をまとめるのも早めに切り上げて、就寝した。
続きます。