「星々を喰らう蛇」 - 12
再びあの場所が近づいていくシーンです。
朝になって、イオリちゃん、ジュン、マキから情報端末の文字チャットアプリで
メッセージが来た。
昨日の爆発事件の現場が僕の帰り道にあったことで、みんな心配してくれていた。
みんなの無事も確認できたし、僕も無事だと返した。
ほっとした。
マサルの件が気がかりだったが、学校にいかない限り何もわからない。
自宅のダイニングで家族と食事を済ませたあと、登校した。
登校途中でジュンと出会った。
「おい、マジで大丈夫なんだよな?」
「うん、心配してくれてありがとう。本当に物騒だよね。」
「統一政府の政策に反対するテロリストが、近くに潜伏してるらしいぜ。ほら、見ろよ。」
ジュンの指差す方を見ると、特別警察隊員たちが数名銃を持ったまま周囲を警戒している。
登校中の他の生徒たちも彼らが気になるようだ。
通りを特別警察隊員たちの車両が横切った。
「特別警察隊員の人たちがいるし、大丈夫だよ。」
「そうだよなぁ。」
ジュンと話ながら、いつも通りに登校した。
教室に着くと、みんなの話題は爆発事件のことで持ちきりだ。
「テロリストってほんと迷惑だよなぁ。」
「ああ、全員逮捕した方がいいぜ。」
「昨日のテロリストは射殺されたし、いい気味だぜ。」
「このあたりにもテロリスト潜伏してるんじゃねーか?」」
昨日、特別警察を名乗る黒服の男たちにマサルがテロリストだと聞かされた。
マサルの席の方を見たが、転校して来て以来皆勤のマサルがまだ来てない。
あの話は本当なのだろうか?
結局、マサルは欠席理由も連絡しないまま登校して来なかった。
今日の「歴史」の授業が終わった直後、ヨシノブ先生の方から
明日の計画を立てるため、オールドジェネレーションの居住区見学に行く他の三人を連れて図書室に来るよう言われていた。
4人で図書室に着き、ヨシノブ先生が10分ほどして来た。
「すいませんね、遅れて。」
「いいんですよ、先生。明日の計画を立てましょう。」
「明日見学にいくところは、オールドジェネレーションの居住区の一部で、私も以前行った事があります。
先生は特別警察隊員の方に知り合いがいるので、特別に連絡をして立ち入り許可をもらっています。
でも好き勝手に行動しないようにしてくださいね。後皆さんのご家族には決して言わないように。
他の先生方もうるさいですし。」
「はい、ヨシノブ先生。」
「先生、ありがとう。」
「じゃぁ、早速計画を立てましょう。」
「イオリさんとマキさんは娯楽施設の調査ということなので、最後に遊園地のエリアにいきますか。」
「遊園地にいけるんですね?ありがとうございます。」
「楽しそう!」
「決して、遊具やアトラクションには乗らないようにしてください。」
「はーい」
「わかりました」
「ジュンくんは乗り物の調査なので、住宅街の彼らの家にある乗り物を見ていきながら、遊園地にいきましょうか。ユキヒトくんの食べ物調査も、最後の遊園地でできるし。」
「はーい。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、後は交通手段と昼食ですが・・・」
そして一時間ほどヨシノブ先生と計画を立てて、
僕ら4人は途中まで一緒に下校した。
この日は午後から雨が降っていた。
雨音、電気自動車が水溜りをはねる音が聞こえるなか、四人で話ながら歩く。
「ユキヒト君、どこか元気なさそうだけど・・」
と、イオリちゃんが話しかけてきた。
「いや、そんなことないよ。」
「何かあったの?」
「いや、本当に大丈夫だから。」
このとき、マサルがテロリストだという疑いが強くなっていたし、昨日マサルが妙なことを言ってたことが気になっていたので、聞いてみた。
「ねぇ、イオリちゃん、今日マサルって登校してないよね?」
「今日来てないわよね。」
「マサルと話したことある?」
「あぁ、下校中に一回だけだけど二人きりになって、彼から話しかけてきたの。
『イオリちゃん、俺のこと覚えてる?』って。」
「何て答えたの?」
「ごめんなさい、あなたとは初対面よって。」
「うーん、マサルって変わってるよね?」
「いっちゃ悪いけど、そう思っちゃうわ。」
ジュンとマキは二人で話していたが、こちらに気づき、
「おい、転校生の話は止めようぜ。」
「そうよ、あいつ変わりものって有名じゃん。」
と話かけてきた。
そして、いつも通り、僕と三人は分かれて、僕は一人であの道を通った。
続きます。