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27.アレスの異母妹

 アテナがアレスに、抱き付いて、一しきり泣いて落ち着いた頃、宰相からアレスと慎に呼び出しがかかった。

 首を傾げながら、アレスと慎は宰相室に赴いた。

 そこには、アレスによく似た、壮年の男が立っていた。

 男はアレスを見ると、本当に目を丸くして、マジマジと全身を見る。

「どうだね?」

 宰相の問いかけに、その男は頷くと、

「間違いありません。この方が、公爵家の正当な継承人です。」

「うむ。ではこちらの書類にサインを。」

 宰相に促され、その壮年の男は、綺麗な流れるような文字で、書面にサインをした。

 宰相はその書類を確認すると、アレスと慎に目を向けた。

「では、こことここの二か所に君たちのサインをしてくれ。」

「「はっ、なんでまた。」」

「ああ、申し訳ない。アレス殿は初めてだったな。こちらに居られる方が、四百年前、アレス殿が亡くなった後、公爵家を継いだ異母妹のアン様のご子孫になります。」

「はっ、異母妹って、あのアンが子供を産んだのか?」

「はい。おおばあ様と、そしてかつて、アテナ様がかの戦いで救って下さいました、若い騎士が私のおおじい様です。」

 アレスを大分年を取らせたような容姿の男がそう言った。

「ちょっと、待て。その話とこの書類がどう結びつく?」

「さきほど王より、公爵家の正当な継承人が見つかった旨の伝言が届きましたので、今の当主である私が正当な公爵家の継承人でありますアレス様とそのアレス様が守護されます慎様に公爵家の所領と爵位を譲る旨の書類です。」

 壮年の男は、爽やかな笑顔とともにそう告げた。

「ちょっと、待て。そうすると、君の爵位がなくなるじゃないか。アンの子孫に、そんなことは出来ない。今すぐその書類を破棄してくれ。」

 壮年の男は、大きな溜息を付くと、

「アンおおばあ様からの伝言です。」

 そう言うと、胸元より巻物を取り出すと、巻物に巻かれていた封印が施された紐を切る。

 すると自然に巻物が広がって、そこから懐かしい異母妹の怒鳴り声が聞こえてきた。

 ”よく聞け、アホ異母兄!お前のお蔭で、私は自由な生活を捨てることになったんだ。今度、生き返った時は、私の子孫に甘えるんじゃなく、しっかり、爵位の責任をとりやがれ、大馬鹿もの!!!”

 男は巻物が叫び終わると、紐をまた巻いて、それをアレスに渡した。

 アレスは唖然としながら、その巻物を受け取る。

「だが、それはあくまでアンの意見であって・・・。」

 アレスは異母妹の子孫を見た。

「ご心配には及びません。アンおおばあ様の子孫は全員、冒険者志望ですので、私も父が死んでこの地位を引き継ぐまでは、結構巷でも有名な冒険者でした。なので、爵位をとっとと譲って、弟や妹たちと同じく、すぐにでも冒険者に戻る予定ですので、それはお気遣いなく。さっ、さ。お早く、そこの書類に署名をお願いします。さあ。」

 壮年の男に急かされアレスは、書類にサインをした。

 慎も同じようにサインをする。

 宰相はサインをされた書類を確認すると、それに宰相印を押す。

 隣にいた紋章管が、継承書類の名簿を書き換えると、黙って、宰相室から出て行った。

「さあ、これで私も晴れて自由の身、アレス様、慎様ありがとうざいます。」

 壮年のアンの子孫はそう言うと、颯爽と宰相室から出て行こうとして、ハッと立ち止まった。

 そしてアレス達を振り返ると、

「一言大事なことを忘れておりました。執事のセバスチャンが後日、公爵家の引継ぎに伺いますので、その時は宜しくお願いします。アレス様。」

 そう言うと、にこにこ顔で、宰相室を去って行った。

「さすが、アンの子孫だ。なんて、アンにそっくりなんだ。」

 アレスはぼそりと慎の隣でそう呟いていた。

『アレスの異母妹のアンって、もっとこう違う印象だったんだけど。』

 慎は唖然と、二人のやり取りを見ていた。

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