24.守護者再び!
朝方、慎はソファーでうたた寝していて、空腹で目を覚ました。
『雪!』
慌てて起きようとして、目の前にいた郷に、ぶつかりそうになる。
「なんで、俺の目の前にいるんだ、郷。」
「おい、そりゃあないだろ。腹減ったんじゃないかと、食事を持ってきたんだ。ちなみに、慎が心配してる人物には、トリアさんがさっき、朝食を届けに行ったよ。だから、心配無用だ。」
「そうか。」
慎は郷の話に、少しホッとすると、目の前に置かれた食事を食べ始めた。
一通り食べ終えた後、雪のところに行こうとして、なぜかイーリス姫に捕まった。
「慎様、こちらに、いらっしゃったんですね。」
「げっ、なんで、ここに?」
「決まっていますわ。私の運命の相手ですもの、居場所など、すぐにわかります。」
「運命の相手って、イヤ、それは姫の勘違いだから。」
「まっ、何をおっしゃいますの。一夜を・・。」
「うわー、うわー、ちょっと、待った。」
慎は郷に聞かれない様に、慌ててイーリスの手を引くと、人がいない部屋に連れ込んだ。
「頼むよ、姫。お願いだから、人前で、それ言わないでくれ。」
慎は懇願した。
慎がイーリス姫を引きずって、どこかに消えた後、郷のちょうど目の前を、トリアが通りかかった。
「トリアさん。どうでした?」
郷は気にかかって、トリアに話しかける。
「大丈夫ですよ。心配ありません。」
トリアの断言に、郷が本当にと念をおす。
「もちろんです。だって、アレスさんを元気づけるために、さきほど、私の兄と”試しの洞窟”に出かけていきましたもの。」
「へっ、二人で”試しの洞窟”に向かったんですか?でも、あそこって確か、黒騎士が・・・。」
「まっ、それなら心配ありませんわ。もう、あそこには、黒騎士がいないと、夫が言っていましたもの。」
「はぁ、そうですか。」
トリアの断言に、郷が頷いた時、慎が戻ってきた。
慎もトリアを見つけて、慌ててこっちにやってきたようだ。
「トリアさん、雪は?」
トリアは心配そうに聞く慎を、ほほえましく思いながら、先ほど郷に説明した話と、同じ内容を告げた。
「アレスを元気づけに、”試しの洞窟”に向かったんですか。くそっ。あいつ何を考えているんだ。」
慎は郷を振り向いた。
「郷、頼む。白虎になって、俺を”試しの洞窟”まで送ってくれ。」
「そりゃできれば送りたいけど、昨日、魔力を使いすぎて、今は、まだ無理だよ。」
「くそっ。」
『おい、アレス、アレス・・・。』
何度も心の中で、呼びかけるが、アレスから答えはなかった。
「全く。仕方ない。城の兵士に送ってもらう。」
慎は、宰相室に向かった。
「あん、待って、慎さまぁ。」
イーリスが慎の後を追っていく。
慎は後ろから来るイーリスを無視すると、宰相室に飛び込んだ。
宰相が目を丸くして、押し入って来た慎を見た。
「悪いんだけど、俺を”試しの洞窟”まで、送ってくれる兵士を貸してくれ。」
慎は宰相に一気にまくし立てた。
「はっ、それならちょうど、今、中庭から出る者たち・・。」
途中まで聞くと、慎は飛び出して行った。
城の階段を駆け下り、中庭に飛び出す。
今まさに、城を出ようとしていた兵士を捕まえると、自分もそれに同乗させてもらう。
それはちょうど、雪が”挑戦の館”に入った直後だった。
それから、慎が馬の背で、尻が痛いのを我慢しながら、兵士を急かして、雪の後を追う。
やっと”挑戦の館”近くに着いた時には、イト公爵が諦めて、”試しの洞窟”の出口に向かう所だった。
「イト公爵!」
イト公爵が後ろを振り向くと、慎が城の兵士に同乗して、一緒の馬で駆けて来るところだった。
「これは慎殿。」
「雪は?」
慎がイト公爵に迫る。
イト公爵は”挑戦の館”を指差した。
「あなたがついていながら、何やってるんですか。」
慎はそう言うと、馬を飛び下りて、”挑戦の館”に走って行くと、お約束のように、透明な壁に激突した。
ドーン ベチャ
「イッ痛ぅーー。なんで、ここに、壁があるんだ。」
鼻を抑えて立ち上がる慎に、イト公爵は呆れながらも、声をかけた。
「守護者を持つものは、魔力があっても中に入れません。試しの洞窟の出口で、待つしかありませんよ。」
慎は、もう一度、透明な壁を拳で叩いてから、乗せてきてくれた兵士のもとに向かった。
「私が乗せましょうか?」
イト公爵の声に、慎は冷たく答えた。
「結構です。」
慎は、兵士にまた同乗させてもらいながら、心の中で誓った。
『今度、城にもどったら、絶対、乗馬の練習をしよう。』
三人が試しの洞窟の前に着いた、ちょうどその時、雪がアテナを守護者として、上空から飛び出してきた所だった。
『アテナ!!!』
雪はフクロウの背中に乗りながら、アテナに会えた事を、心の中から喜んだ。
『雪!!!』
嬉しそうな雪の声に、アテナも返事を返す。
雪はそのまま、ふと眼下を見た。
「イーリス姫、何でここに。」
慎がびっくりしているところに、イーリスが横に馬を着けると、慎に抱き付く。
「ちょっ、なに考えてるんですか。ここ馬上・・・。」
見ると、ちょうどそこには、慎に抱き付くイーリス姫の姿があった。
慎はふと頭上を見上げて、雪の視線に気がついた。
気がついた途端に、やばいと感じた。
雪は弓に矢をつがえると、慎を狙い撃つ。
慎の心臓がドキリと鳴った。
アレスが慎の危機に、我に返って、慌てて駆けつけると、防御シールドを張る。
張りながら敵を見上げて、唖然とする。
そのため、力を逃しきれず、四人とも馬ごと、後ろの地面にひっくり返る。
雪は我に返ると、慌てて下に降りてきた。
フクロウから元の姿に戻ると、アテナもアレスたちの元に駆けつける。
「大丈夫か、アレス。何をやっているんだ、お前は。」
アレスは、呆然とアテナを見つめる。
「アテナなのか?」
「はっ、何を言っているんだ。どこか頭をうったのか?」
心配するアテナを無視すると、アレスはアテナをその場に押し倒した。
「ちょっ、人目があるのに、お前は何を考えて・・・。」
アレスは、そのまま、何度もアテナにキスをする。
「アテナ。」
「離せアレス、何を血迷って・・。」
アテナは、たまらずフクロウに戻る。
アレスは、フクロウになったアテナを、そのまま強く抱きしめた。
『苦しい。死ぬ。離せアレス。』




