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21.試しの洞窟

 試しの洞窟から黒い靄が広がっていた。

 黒い靄は、洞窟からどんどん濃さを増しながら、人が住む街に進んでいった。

 街では、忍び寄った黒い靄に触れた人間が、次々に倒れていく。

 最初に気がついたのは、宮廷魔導士たちだった。

 人々のエネルギーがひどく眩く輝いたかと思うと、その途端、真っ黒になって消えていくのだ。

 メリクリンも異様なエネルギーの塊に、慌てて魔術学園を飛び出すと、街に向かった。

 そこでは、どこからか伸びてきた黒い靄が街全体に広がり、その靄に触れた人間がバタバタと倒れていく姿だった。

 慌てて、自分が使役する鳥を使って、遮蔽するシールドを展開するが、黒い靄はそれをものともせずに、ふわりとすり抜けて広がっていく。

 たまらず、王宮に行ったガイアの元に、助力を頼むために向かった。

 王城に着くと、宰相が街の異変を聞きつけ、メリクリンを捜そうとしている所に、鉢合わせした。

 宰相はメリクリンに、”原因は何だ”と、詰め寄るが、メリクリンにも、まったく見当がつかなかった。

 逆に宰相に、ガイアたちの居場所を問いただす。

 そして、王宮の書庫にいると、聞き出すと慌てて書庫に駆けつけた。

 駆けつけるなり、ガイアに助力してもらえるように、懇願した。

 かなり慌てていたようで、ガイアにもっと落ち着いて、状況をくわしく話すように言われる始末だ。

 メリクリンは、荒い息を吐きながら、今までの経過を説明した。

 魔術学園でガイアに魔法特訓を受けさせる生徒を選抜中。

 急に異変を感じて、慌てて街にむかったところ、どこからか黒い靄が広がってきて、魔法で作った遮蔽シールドを展開するも、その黒い靄には、全く効果がなかった。

 それどころか、その靄に触れた人間がなぜか、次々に倒れていったと説明した。

 ガイアはそのメリクリンの話を聞き終えると、しばらく熟考する。

 再度、顔を上げた時には、何かを決心したようだった。

「黒い靄は、まだ広がっているのね。」

 ガイアはメリクリンに、もう一度確認する。

 メリクリンは、力強く頷いた。

「アポロン兄さん、アレス、アテナ、それに雪と慎も、私と一緒に来て頂戴。」

 五人は頷く。

「隼人と南は、王宮で待機よ。」

 二人は、不服そうに頷いた。

「私もお手伝いします。」

「いいえ、あなたにはここにいて、黒い靄が王宮に到達しない様に、守護シールドを強化しなさい。」

 メリクリンは、仰天したような顔で、ガイアを見ている。

「なぜ、知っているんだという顔ね。そりゃ、その守護シールドを作ったのが、私だからよ。それと魔術学園は大丈夫なのかという問いなら、心配無用よ。あそこは大丈夫。私が保障してあげるわ。」

 ガイアはそう言うと、ホッとしているメリクリンを後に残して、五人を従えると、書庫を出て行った。

 中庭に出ると、アポロンを振り返る。

 アポロンは頷くと、白虎になって、ガイアを乗せると、空にあがった。

 アテナもフクロウになると、雪を乗せて舞い上がる。

 アレスも同じように竜になると、慎を乗せて飛び立った。

 六人は、黒い靄が湧き出ている元凶に向かった。

『ガイア、何を考えている。』

 アポロンが気づかわしげに、ガイアに問いかけた。

『自分の考えが当たらない様に、と願っているところよ。』

『なんだ、それは?』

『いえ、なんでもないわ。』

 ガイアはそれっきり口を噤むと、街の上空を飛び越え、森と草原を抜け、ひたすら黒い靄の元を目指した。

 元は試しの洞窟に繋がっていた。

 六人がそこにつくと、そこは真っ黒い靄に包まれて、一寸先も見えないような状態だった。

 なぜか六人がそう感じた途端、黒い靄はどんどん収縮していくと、何か黒い物体に変わっていく。

「何になるつもりなんだ。」

 慎が思わず呟く。

 六人が見守る中、その黒い靄は、大きな竜に姿を変えた。

 黒い竜は赤い目をギロリとさせて、六人を睨むと、黒いブレスを吐く。

 慌てて、六人がバラバラになって、避けると、ブレスが当たった岩肌が溶けてなくなった。

「なにあれ。うそでしょ。」

 雪が悲鳴をあげた。

 ガイアが手に光を集めて、黒い竜にむけ、それを放つが、ちょっと靄が霧散しただけで、全く効果はなかった。

 白虎も口から、同じように光を放つが、これも先程のガイアが放ったものと同じように、ちょっと靄が霧散しただけで、全く効果はない。

 雪が弓矢を手にして、炎の塊を纏わせてから、打ち込むがやはり、無駄だった。

 慎は氷で出来た短剣を黒い竜に向かって投げてみるが、これもダメだ。

 六人は打つ手がない状態で、黒い竜から吐かれるブレスを避けながら、同じような攻撃を繰り返す。

 だんだんと魔力が削られていく。

 焦りで、額に汗がにじんでくる。

 そんな中、アテナは、黒い竜の奇妙な動きに気がついた。

『雪、気がついているか?』

 アテナが雪に話しかける。

『うん、なんとなく。あの黒い竜、私たちの動きに反応してる。』

『やはり、そう思うか。』

 アテナは、雪が頷くのを感じた。

『私の考えがわかるか、雪。』

 アテナは雪に同意を求める。

『うん、アテナの考えに賛成だよ。』

『『等価交換。』』

 二人は一致した考えに、黒い竜に向かって、一直線に降下していった。

『やめろ、アテナ!!!』

 アレスが慌てて、アテナの後を追う。

「雪、何をする気だ。」

 慎もアレスを駆って、止めに入るが、雪たちの速度の方が早い。

 二人が黒い竜に飲み込まれる瞬間、アテナはフクロウから戻ると、雪を突き飛ばした。

『アテナ!!!』

 雪の目が、驚愕で見開かれる。

『アレスを頼んだぞ、雪。』

 アテナは、そのまま黒い竜に飲み込まれる。

 突き飛ばされた雪は、後ろから来た慎に、抱きかかえられる。

 アレスは、竜の姿のまま叫んだ。

『アテナ、止めろぉーーーーーーー。』

 黒い竜はアテナを飲み込んで、一瞬動きを止めると、何故か、アレスがかつて見たことのある金髪の王妃の顔になってから、霧散した。

 辺りは急に静まり返ると、そこには何も残らなかった。

 竜は下に降りて、慎と雪を降ろすと、人の姿になったアレスが地面にくずおれる。

「なぜだ、アテナ。なんで一人で・・・。」

 雪も慎に抱きかかえられながら、呆然としている。

 ガイアと白虎も空から降りてきた。

 二人ともかける言葉が見つからず、無言でその場に佇んでいた。

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