表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/34

1.電車消失

 朝7時20分。

 騰波ノ江とばのえゆきは、パンを咥えながら、駅に向かって、走っていた。

 もうすでに、電車は駅のホームに入っている。

 雪は自慢の大根のように太い足をフル回転させ、スカートがめくれるのも気にせず、全力で走った。

「その汽車まったぁー。」

 ブォー

 ガッタン


 間一髪。

 雪は7時23分発の重油で走る汽車に間に合った。

 ドアに寄りかかりながら、荒い息を整え、腕時計を見る。

 この分なら、終着駅で乗り換える、次の電車に間に合いそうだ。

 雪は、ホッと胸を撫で下ろすと、今まで口に咥えていたパンを右手に持って、ムシャパクと食べ始めた。

 もちろん他の乗客の非難の目を避けるために、外の景色を見ることは忘れない。

 そうこうしているうちに、程なくパンが全て口の中に収まると、次の駅に着く。

 時間にして3分。

 雪がパンを食べ終わるのには、ちょうどよい。

 満腹になった雪の目に、親友であり、その可愛らしさで有名な守谷南もりやみなみが、我がクラス一頭脳明晰な委員長飛来隼人ひらいはやとと、後ろのドアから乗り込んで来るのが、見えた。

 その他に、同じ高校の制服を来た、高校生が数人乗ってくる。

 隼人は、その中の一人に気がつくと、

「おい、しん。少しは俺のことを考えて、死ぬような病気以外は、部活をサボるな。」

「悪い。わるい。」

 結構背がスラリと高く、引き締まった筋肉質を持つ慎も、少しは悪いと思っているのか、頭を掻きながら、手すりにつかまった。

「おい、慎。一人でさきに行きやがって。」

 かなり大きな体格のごうと高校生にしては、けっこう小柄なまもるが、少し遅れて、揺れる車内を、二人の方にやって来た。

「わりぃ、郷。」

「僕には謝って、くれないんですか?」

 守が慎の首に左腕を巻き付けながら、右手で頭をこずく。

「本当に悪かったって。」

 慎は頭の上で手を合わせて、哀願する。

「まあ、いいでしょう。僕は寛大ですから、許してあげましょう。」

 四人の間で、爆笑が起こった。

 ちょうど、その時である、電車の窓から何かの光が差し込んだ。

 その瞬間、突然車内は白い光に包まれた。

 そして、電車は終着駅直前の右カーブで忽然と消えたのだった。

 その事件は、日本の主要大手新聞・テレビ・ラジオ・それこそ世界中で報道され、調査されたが、その行方は、まったくわからなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ